ＺＳＡ ＺＳＡ ＺＡＴＵＲＮＮＡＨ ＺＥ ＭＯＶＥＥＨ
06年：リーガル・エンターテインメント／リーガル・マルティメディア
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：シャシャ・パディーリア
ポップス・フェルナンデス
ルストム・パディーリア
アルフレッド・ヴァルガス
ポーリン・ルナ
クリスチャン・ヴァスケス
チョコレイト
セイ・アロンソ
カルロ・ヴェルガラのコミックの映画化で、題名からしてシャシャ・パディーリアをモデルにしたように思われる。どんな内容かは不勉強で読んでいないのだが、絵のタッチは本作のメイキングなどからうかがうことができる。マルス・ラヴェロの影響をうけたのは隕石を飲みこむ設定が『ＤＡＲＮＡ』と同じである点で明らかだし、アメリカン・コミックのタッチなのはマルスをまねたからだと推測される。
もっとも映画では『ＤＡＲＮＡ』以上にフィリピンっぽいバカバカしさが爆発しているといえる。主人公がオカマであり、周辺の住民を含めてうるさくはしゃぎまくり、この騒がしさがなんとも国民性の発露のように感じられる。いまや巨匠と評価できるジョエル・Ｃ・ラマンガンの監督作ながら、とくに気どった表現や高尚さがなく、ナンセンスに徹底している姿勢が爽快で小気味よい。ジョエルが監督初期に『ＤＡＲＮＡ』を手がけたことを考えれば適任だし、あのときよりもはるかに演出が洗練され、エンターテインメントのツボをよく心得ている。予算の関係だろうがＣＧはセコいが、これでもかと誇示するがごとく使うのではなく、たくみに笑いへ結びつく効果的な使用方法になっている。またシャシャ・パディーリアとポップス・フェルナンデスの人気歌手の共演であり、歌と踊りを満載したミュージカル構成が愉快で、くだらない映画を乱発するフィリピン映画においてもちょっとした快作。低俗が大好きなものにすれば十分に楽しめる。
冒頭、雨の中を傘をもって群集が歌いながら踊る出だしに、いきなりやってるなあと嬉しくなる。オカマのアダ（ルストム・パディーリア）が携帯などを買ってあげても、ボーイ・フレンドにふられっぱなしで、絶望の状況にいると歌で示される。いかついオカマのディディ（チョコレイト）と普通の美女のアルバ（ポーリン・ルナ）と美容院を営んでいて、アルバには恋人のポルド（アルウィン・ウイティンコ）がいる。近所で屋台をだす二枚目のドドン（アルフレッド・ヴァルガス）にアダを含め、オカマたちがあこがれの視線を送っている。との庶民の暮らしぶりをカリカチュアした街の描写が違和感を与えずにユーモラスさをくわえている。アダがシャワー中に隕石が落ちてきて、これを飲みこむとスーパー・ウーマンのシャシャ・サトゥルナー（シャシャ・パディーリア）に変身が理由の説明もなくスピーディーなテンポで語られ、一気にファンタジーへ引きこまれていく。『ＤＡＲＮＡ』では手のひらで握れる小さなものだったのに、隕石が顔ぐらいあるケーキみたいな形になっているのが人を食っている。シャシャのパワーを調べるべく大木を抜いて投げたり、池を跳び越したり、ドドンを襲った強盗を退治したりでシャシャ、アダ、ディディ、アルバが騒がしく歌って踊るのにエネルギッシュなパワーがみなぎる。
超能力ウーマンっぽいシャシャのコスチュームを選んでからが、いよいよお待ちかねのセクシーさをプラスする。巨大なカエルのお化けを退治やゾンビをやっつけるエピソードに、どことなく『ＤＡＲＮＡ』やアメリカ合衆国のＢ級映画のパロディーが読みとれる。カエルの胃袋に入るのは、胃液ですぐに溶かされるはずでヘンだぞと思わせ、セットがちゃっちいのがご愛嬌。ゾンビの数が多いために教会へ集まった住民たちへ一緒に戦うことを要請するあたり、西部劇のいくつかを連想させる。シャシャのギャグっぽさをまじえて語りかける歌が自然と流れに融合している。少年時代に自分がオカマなのを嫌いまくった父（トム・オリヴァル）のゾンビに出会うなんて妙なドラマとともにシャシャが歌って、ゾンビたちがコーラスを担当で踊るおかしさが『リトルショップ・オブ・ホラーズ』の花の合唱に匹敵する。ドドンがゾンビたちに裸にされてパンツ一丁になり、ターザンみたいな服をまとうのは、監督のジョエルがホモだからの趣味か。フィエスタでドドンにアタックをかけたクリステル（ジョイ・ヴィアド）とアダがドドンをとり合い、シャシャとアダが同時に登場でドドンに接近しての三重奏に、ドドンも歌声を聞かせるアダの夢のシーンはミュージカル・コメディーとしての構成をよく踏まえている。
宇宙からクィーン・フェミナ（ポップス・フェルナンデス）を首領とするアマゾネス軍団が飛来によって、さらにアホらしさがヒート・アップする。宇宙船が古くはバイロン・ハスキンの『宇宙戦争』か『スター・トレック２ カーンの逆襲』あたりでみたものにそっくりだったり、船内に『スター・ウォーズ エピソード１ ファントム・メナス』にいたようなごときひょうきんなデザインの宇宙人がうろついていたり、パロディーではなくオリジナリティーの欠如を感じさせるも、フェミナの放つ光線でドドンをはじめ、全員がオカマに変えられるオバカさ加減はなんともいえない。どうせなら『００８６笑いの番号』のようなオール・ヌードになってしまう光線だったらよかったのになんて想像をもたげるが、男を嫌う理由は何かの過去をフェミナがラップっぽく歌ってアマゾネスたちが踊るミュージカル・シーンに音楽センスの確かさをうかがう。ちなみにアマゾネスのメンバーがノラ・Ａ（キットカット）、ヴィルマ・Ｓ（セイ・アロンソ）、シャロン・Ｃ（ジゼル・サンチェス）、ディーナ・Ｂ（グライサ・デ・カストロ）との名前で、いずれもフィリピン女優の大物だけに、フィリピン人が誰を大スターと考えているかを反映しているよう。シャシャとフェミナの対決は真にクライマックスといえて、ワイヤー・アクションなんてどうでもよく、とにかくフェノミナとアマゾネスたちの踊りにシャシャが歌い返し、フェノミナとシャシャの歌唱応戦になる点につきる。言葉のリズムが快調にノリノリなうえ、アマゾネスたちの機械的なステップの動きが視覚と聴覚の両面から笑いを誘ってくる。向かい合ったアップでシャシャとフェノミナが歌をぶつけ合う描写など、シャシャ・パディーリアとポップス・フェルナンデスという実力派美人歌手の勝負であり、心からの拍手を惜しまない。またフェノミナがシャシャを宇宙空間まで連れだしてけりを入れる大げささを忘れていないし、シャシャが隕石を吐きだしてアダに戻り、ドドンが正体を知ったあと、投げた隕石がフェミナの口にすっぽりで豚男に変わったので、大あわてで逃げいくツメの軽さがくどくなる前のあっさり感で買える。アダとドドンが結ばれてのデュエットに、そんな同性愛のカップルが誕生するかとあきれるも、街中のみんなが祝福で踊って、いやはや驚くべきノーテンキさ。
この意味なし娯楽性を愛してやまない。
しかもコスチュームの挑発がさらに満足度をアップさせる。最初にシャシャの衣装をアダが着たときは男のレオタードなんて気持ち悪いし、二枚目のルストム・パディーリアがよくやるよ、もっといえば女装でとおす役なんてよく引きうけたものよと思ったのだが、シャシャ・パディーリアに変わってからはぞくぞくと興奮を呼ぶ。シャシャは四十歳を過ぎているにもかかわらずスタイルがバツグンだし、とにかくローズ・ピンクに輝く光沢レオタードのお尻が鼻息を荒くする。アクションの動きの中で何度かお尻がアップになり、カエル相手、夢の中、ゾンビ相手、フェノミナとアマゾネス相手でたびたび勃起すら招く。一方のポップス・フェルナンデスもプロポーションがまったく崩れてなくて『ＳＨＩＮＤＩＣ ＬＩＶＥ』でみせた全身にピタピタのボディー・スーツや『ＦＲＥＥＳＴＹＬＥ ＴＨＩＳ ＴＩＭＥ ＬＩＶＥ』で披露した下半身のカーヴがくっきりの黒いエナメルのパンツの体型を維持し、クロース・アップにおけるつやのよい顔の肌に驚嘆の声をあげそう。フェノミナのシルヴァーのセクシー衣装がバストは挑発的なものの、お尻のラインがイマイチなのが惜しい。もちろんアマゾネスの四人も色っぽく、グライサ・デ・カストロはかわいいし、セイ・アロンソはキュートだが、宇宙人のメイクで素顔が消されているのが残念とはいえ、ボディーに貼りつくコスチュームがたまらない。とくにひょうきんなキャラのジゼル・サンチェスがもっとも視線を集め、宇宙船の中や地上に降りての下半身にフィットしたゴールドのパンツにくわえ、対決シーンでのゴールドの短パンがブラボーと叫びたくなる。お尻にキュッと食いこみ、ほとんど半ケツになっている。グライザも宇宙船内や地上での下半身にピッタり型の光沢パンツでおいしそうと思わせ、キットカットとセイ・アロンソは対決のときにお尻へ貼りつく短パンを披露する。それも光沢オレンジのセイのほうはジゼルほどでないにせよ、けっこうギュっと食いこんでいる。
ヘタなヌードよりもビンビンの作品だった。
※ この作品は『シャシャ・ザトゥーナ』の題名で“東京国際シネシティフェスティバル2007”にて上映された。
