ＹＯＵ　ＧＯＴ　ＭＥ！
　
07年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ
監督：カティー・ガルシア・モリナ
主演：トニ・ゴンサガ
　　　 サム・ミルビー
　　　 サンジョー・マルード
　　　 ジョニー・デルガド
　トニ・ゴンサガとサム・ミルビーのコンビに新人のサンジョー・マルードを加えたロマンスもので、とくにどうってことない内容。
　男まさりの婦人警官のアモール（トニ）に対し、内気な警官のケヴィン（サム）が恋心を抱くも、告白できないでいる。海賊版ＤＶＤを売るカロイ（サンジョー）をアモールが摘発し、どういうわけかカロイがアモールにほれ、ストーカーのごとくつきまとうようになる。うざいと嫌っていたアモールながら、凶悪犯の逮捕で絶対のピンチのとき、とっさに駆けつけたカロイに救われ、交際を始める。ケヴィンが失恋でショックを受けるが、しょせんカロイは犯罪者。ニセ・ブランド品の密輸事件をアモールが追いつめてみれば…
　との話は、さほど新味に乏しい。
　アモールのじゃじゃ馬ぶりは黒シャツに黒パンツでバイクにまたがり、ショッピング・モールでアクロバティックなアクションをくり広げるのに表わし、サムの内向性はメガネに象徴させる。ヴェテラン警官だったアモールの父（ジョニー・デルガド）が亡くなっての警察葬や、アモールがケヴィンのメガネをはずし、防弾チョッキを着せてあげてのサヴァイヴァル・ゲームによるジャングルでのスワット訓練といった警察がらみの光景に、女気のない父をアモールが心配するクリスマス・パーティーや、花火で祝う新年などの時節的な様子、ケヴィンがカロイの住所を訪ね、あわててケヴィンの母（ピア・モラン）が売りものの海賊版ＤＶＤを隠す貧民街の家といった生活描写は、さして興味を引きつけない。母（ピンキー・アマドール）とケヴィンが仲たがいし、父（トビー・アレハル）が仲裁の家族崩壊状態や、少年時代に近所で戦闘が起こり、友人が撃たれるのを目撃でケヴィンが臆病になった設定は、さっぱり納得を呼ばず、鳩をいっぱい飛ばしてケヴィンのアモールへの愛の告白はロマンティックをはずれ、どこかカティー・ガルシア・モリナの演出が空回りをくり返す。皮肉屋の警官のグレン（ディック・イズラエル）やコメディー・リリーフをになうべきケヴィンの相棒のレネ（ジェーソン・ガインサ）の存在がさえないうえ、マイクロフォンがうつる撮影ミスもあり、相当にイマイチ。
　ありきたりなキャラクターづけながら、カロイの母と弟（クインティン・アリアンサ）がちょっとおかしいのと、ケヴィンがカロイの家にスパイ・カメラを隠すのにオイオイとあきれさせるのと、魚の中からロレックスがでてくる密輸の捜査がうなずけるのと、アモールの父が亡くなる原因が椰子の木の下で立ちション中に落ちてきた椰の実に頭をぶつけたからで、何度も父の霊がアモールを見守るのを椰子の実の落下で暗示し、ラストのアモールとケヴィンの和解にも椰子の実を使う小道具の活用がまあまあなくらい。
　トニが意外にかわいくない点は個人的にマイナス要素を増やし、自宅の着がえで下着の短パンになったり、スカートをまくってスパッツの太腿からピストルをだしたり、掃除しているのをカロイがのぞくショットで短パンのお尻をドアップにしたりが誘惑的じゃなく、セクシーさ不足。赤いボディコン・ワンピースで女装のフランシス（ＡＪ・ディー）が潜入捜査に失敗で、アモールが交代に乗りだし、衣装をチェンジで黒いブラに脱ぎ、赤いボディコン・ワンピースと黒いブーツを着てからは一応の見せ場をつくる。相手のジーンズをはいた女性の悪党（ヴェロニカ・ドミンゴ）と格闘において、ミニスカで蹴りを入れる。ただし動きの激しいショットは顔がうつらず、スタントのふきかえに違いなく、やっぱりトニの魅力に結びつかない。
　はたしてファンは納得なのだろうか。
　かつてのセクシー女優のピア・モランは、勝手にアモールの車を洗うシーンで濡れたスカートを下半身に貼りつかせる。
　なお、少女時代のアモール（マリエル・パミントゥアン）が母の死に直面の冒頭において、ジャヌアリー・イサアクが母親役で顔をだし、ケヴィンをふった過去の女たちの回想の中で、ジョイス・ソーが断わりを入れる一人を演じている。ジョイスは雑誌で大胆な水着姿を披露していて、色っぽいシチュエーションがほしかった。