ＷＷＷ．ＸＸＸ．ＣＯＭ
　
03年：マヴェリック・フィルムズ
監督：ティコイ・アギルス
主演：ジュリアナ・パレルモ
　　　 ガーリー・エストラダ
　　　 アンジェルー・デ・レオン
　　　 カルロ・マセダ
　　　 レイ・ＰＪ・アベリアーナ
　　　 ギルリー・セヴィーリア
　アイ・ラヴ・ユー・ウィルスというのが猛威を振るったとき、犯人をつきとめてみればフィリピン人だった真相に驚愕の声があがったのは、記憶に新しいところ。インターネットにおけるライヴのポルノ中継を題材に、オン・ライン社会がもたらした新たな犯罪を扱う作品である。もちろんアイ・ラヴ・ユー・ウィルスのことについては、台詞の中に登場する。
　ジュリアナ・パレルモ演じるアメリカ人とのハーフが主人公で、彼女がカメラの前でハダカになる本筋への決心をするまでが、やや軽い印象。といっても、導入をねちこく描かれれば、オイオイ早く先へ進めよ、みたいにイライラするだろうから、難しい点だが…
　ジュリアナは十八歳のアメリカ帰りという設定で、人間の蓮っ葉さを表現するためと推測するも、タバコをやたらスパスパ吸うのはどんなものか。アメリカ合衆国じゃ、容易に未成年者へタバコを売ってくれないぞ。
　ある超大手広告代理店を退社した元大物プロデューサーが水商売の女性と再婚しているのだが、その娘がアメリカ留学中で、毎月、日本の食品などと一緒にタバコを送ってもらっている。十九歳で、地元だと入手が困難なので…　まったく、この手のバカ娘が平気で留学するから、日本人のイメージがいっそう悪くなる。しかも帰国後は、しょせん付属英語学校にいただけで大学本校の科目を履修してないにもかかわらず「アメリカの○○大学へ留学しました」って自分の経歴を説明するに決まっているんだから…　とあきれるも、タバコを送るほうだって送るほう。こりゃ、どうしょうもない親子だぞ。
　なんて話は関係なく、無理やりジュリアナを部屋へ同居させるように頼まれたギルリー・セヴィーリア演じる従姉妹が「禁煙だから」とムカついているのには、すごく共感。というわけで個人的にはこんなアホ女がどうなろうと知ったこっちゃないので、勝手にせい、と感情移入をはばみ、いきなり乗れないのが偽らざる感想なのだが、ティコイ・アギルス監督の狙いは、ポルノでカネを稼ぐハイ・ティーンの実態を映すのにリアルなキャラクターを想定したいに違いなく、そのポイントでは納得する。マニラのゴミゴミした雑踏や工事現場、クリスチャンの儀式風集会の風景にジュリアナを置きながら歩く姿をとらえたり、タクシーから下車した際に子どもの引ったくりに合って「いったい、なんて国だ」といわせたり、いかにもアメリカかぶれっぽさをさり気なく表わす。
　アメリカにいるボーイ・フレンドへメールで連絡をとるも、あっさり捨てられた事実がわかり、インターネットのポルノ中継への出演を承諾する流れが単細胞すぎないかと首をひねる反面、意外と動機なんて単純なのよ、とのうなずきも覚えるところ。ガーリー・エストラダ演じるインターネット・カフェのオーナーが勧誘するのだが、坊主頭にしたガーリーのクセモノ演技ぶりもあって、短時間できっかけをつくる語り口としては、ティコイのうまさを認めたい。
　同じポルノ・サイトでハダカになる女たちとオリエンテーションを受け、中継カメラを試してみたりのあと、Ｇ＝スポット・ジョーとのネット名を考案してウェブ・サイトに乗ってからのメイン・ストーリーは、カルロ・マセダ演じる何度もアクセスしてくる男とのやりとりが中心。チャットでの会話を画面に文字で読ませるのは、森田芳光の『（ハル）』にあった表現方法。とくに参考にしたわけじゃないだろうが、先に『（ハル）』をみたものにすれば、マネっぽく感じてしまう。マイクを使って直接話すようになると、カルロの要請に応じてジュリアナがポーズをとるなど、相当にエロティックさを増すも、あっという間に人気モデルとのわりには、アクセスしてくる人物をカルロしか描かず、不自然さをもたげるのがもっとも大きな短所といえる。カルロがジュリアナへ夢中になっていく過程は、カルロがジュリアナと話しながらのオナニーでテレフォン・セックスならぬインターネット・セックスをする行為などで伝え、ジュリアナのスタジオとカルロの部屋が一体化したイメージ・シーンが秀逸。ベッドでもだえるセックスを幻想ショットではさみこむカメラの動きも巧みで、めずらしくシネマスコープだが、空間の合体をスマートな構図に収めたいがために横長のサイズを選んだのかな、なんて考えたくなる。
　一方、レイ・ＰＪ・アベリアーナがチーフを演じる警察の特捜班がネット犯罪を捜査するサブのエピソードが同時進行し、実はカルロがハッカー。証拠つかんでレイがカルロに迫り、逮捕を見逃す代わりに協力を約束させることで、メインの流れと落ちあう。ガーリーが「新しいアイディアが浮かんだ」とピストル持ってジュリアナのスタジオへくると、銃口を口の中へつきつけるのは、飛躍がすぎるというもの。カルロからの連絡でレイたちの踏みこみがはたして間に合うかのサスペンスを生むためとはわかるも、もう一つ説得力を伴わなかったといわざるをえない。それでもガーリーがインターネット・カフェの女子トイレをのぞき見してスカウトする相手を判断していたり、ジュリアナの生中継が知らぬ間に海賊版ＶＣＤとなって売られているなど、さもありなん、と訴えてくる要素もあって、一応の社会派ドラマとして成立したようだ。
　カルロがジュリアナを留置場から受けだし、お互いが名のり合うエンディングは、やはり『（ハル）』のラスト・シーンを思いだす。顔をみたことのない男女の純愛ロマンスで、現代のおとぎ話っぽい『（ハル）』よりも、同じラヴ・ストーリーでもネット・フリークのドロドロした醜態をバックに、女性の容貌のみならず、ハダカまでみちゃった男が実際に会っても失望しないのは当然だろうし、こちらのほうがはるかにあり得るシチュエーションなのは確か。でも個人的には、おとぎ話であるがゆえに『（ハル）』のほうへ魅力を感じる。
　まあ、いろいろ注文はあるにしても、さすがティコイだと拍手を惜しまないのは、アンジェルー・デ・レオン演じる先輩のネット・スターであるディーヴァをからめたこと。ハビビというネット名でアラブっぽい曲をバックに踊り、イスラム教徒が喜んでいるシーンをチラっと加えるのが愉快。スレ切ってごう慢っぽいも、ヴェテランの余裕を持つ女性の雰囲気を醸し、ジュリアナと打ちとけるや、クリスマスに田舎の実家へ一緒に連れていくエピソードがみごと。五、六歳の子の母親で、アンジェルーの両親が預かり、育てているのだが、この子やアンジェルーの一家とジュリアナのふれ合いが、どれほど全体の構成に深みを与えたことか。
　インターネット社会という素材に振りまわされず、その本質をえぐろうとするも、しっかり人間を描く姿勢を忘れなかったティコイはタダモノじゃない。
　もちろん内容が内容だけに、ジュリアナの脱ぎっぱなしに関しては、もう、すごいのなんの。スタジオにおける中継はモニターに映っているショットを含め、冒頭のオッパイ丸だしから始まって、白、赤、スケスケの青、黒の下着とヴァリエーションをいくつもつけながら、ブラ紐を落とし、ブラをはぎとり、パンティーをズリおろしで、ほとんど後半はオッパイ堂々プラプラのＴバック一枚ばかり。オッパイをいじったり、オモチャのペニスをもてあそんだり、ガーリーがほめたたえ、オカマの相棒が「天才ね」というだけの小悪魔ぶりを発揮する。でもお尻の割れ始めあたりに刺青があって、ほかのヌード写真にはみられず、役づくりのフェイクなのだろうが、マイナス部分なうえ、チェーン・スモーカーのごとくタバコを吸いまくるから口が臭そうとの想像も手伝って、イマイチそそらないのが残念。刺青やタバコは劇中の性格づけにしても、スペイン風の目鼻だちでデビューとともに大反響を巻き起こし、一気に男たちのセクシー・アイドルの座を確立したジュリアナだが、よくみれば横顔など平板で、個人的には本人もタイプ外。確かに一般的な評価だと美人に違いないし、ガーリーがのぞく下からの視線でトイレに入り、パンティーをおろして便座へ腰をおろす、オマンコがみえそうなかっこうにはドキドキを抑えられないし、車の中でガーリーにフェラチオをする際、黒いドレスがめくれてオッパイがポロリとこぼれる誘惑には生つばゴクリだし、カルロの幻想でセックスするとき、騎乗位でもだえるのが挑発的だから、興奮できる女優だとは感じる。アンジェルーの子とプールで戯れるシーンでの花柄水着が濡れてボディーにピタッと貼りつき、キュートさにときめくのは、イマジネーションの触発が好きな自分の趣味によるもの。
　アンジェルーは以前からのファンだし、この作品への出演が決まった直後「準主役なのに、よくヌードのある仕事を受けましたね」なんてインタビューに答えていて、正直なことをいうとアンジェルーがマジで脱ぐのかと期待し、公開が待ちきれなかったのが本音。宣伝用に撮影されたスティール写真にはＴバック・パンティーでうつ伏せになっているものがあって、うーん、アンジェルー、ほとんどお尻が丸みえも同然じゃん、とカッカ燃えまくったのだが、アンジェルーのハダカへの予感は相当に芸能記事をにぎわせたから、みんなを驚かせたのは確実なようだ。いざ、完成品の中ではやっぱり乳首を露出せず、あまり『ＢＵＬＡＫＬＡＫ　ＮＧ　ＭＡＹＮＩＬＡ』のときとかわらない程度なうえ、役のための娼婦っぽい厚化粧にげっそり。太ってプロポーションを崩したぶん『ＢＵＬＡＫＬＡＫ　ＮＧ　ＭＡＹＮＩＬＡ』より減点よと指摘したくなるも、開始近くにある黒い下着でのダンスだけでカチンカチン状態を招くから、アンジェルーのパワー恐るべし。後輩たちの前で示す見本ダンスにおける黒い下着や、ネット中継での赤いスリップとハイレグ・パンティーにも我慢できない。さすがに黒い光沢のホット・パンツをはいているファッションでは、もっとピッチリとフィットしてほしかったし、プールにおける赤い水着は全身に貼りつくショットを欠くのが不満かな。
　あと、なぜかトイレでシャツを脱いでオッパイをだしたあとにズボンをおろし、ガーリーにオシッコをのぞかれる女性のほか、ネットで生中継を演じるモデルたち数名がいずれもレズを含めて大胆にボディーを披露するも、ジュリアナとアンジェルーの中でオマケ程度にしかみえないのはしょうがないか。
　客観的に考えれば、ジュリアナはタイプだという男は多いだろうし、セクシー面では特級と判断しても、ほとんど反論がでないはず。モダンな社会派とセミ・ポルノをあわせ持つ問題作と位置づけたい。
　ところでアンジェルーが今回の役を引き受けた理由は「監督がティコイだったから」だそうで、また一緒に仕事する機会を望んでいるとの記事を読んだので、いずれティコイはもっと脱ぐ必要性のある企画を提案し、アンジェルーをモロ素っ裸にひんむいてくれないだろうか、なんて願ってやまない。