11年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／ＶＩＶＡフィルムズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ラス・デラ・トーレ
出演：サラー・ヘロニモ
ジェラルド・アンダーソン
ジョーイ・デ・レオン
ジョン・ラプス
フィリピン人がどこまでラディオ好きか知らないが、タクシーなどに乗っていると、ちょくちょく放送を耳にする。おそらく人気のＤＪが活躍だろうと推測をうむ。
なんてことはさておき、前作の『Catch Me I'm In Love』がけっこううけたのか、ふたたびサラー・ヘロニモとジェラルド・アンダーソンのコンビで描くスター企画のロマンスもの。サラーがラディオのパーソナリティーを演じる。
メトロ・マニラのＦＭ局で“ハートブレーク・ホットライン”という恋愛アドヴァイスの番組を担当のジョージ（サラー）はＤＪハイディの芸名でファンをつかむ。ボーイフレンドのアンドルー（ジェラルド）の浮気がとまらないのに業を煮やしたメリッサ（メーガン・ヤング）が相談の電話をいれ、別れるのが得策と諭す。オン・エアー中に自分のことだとわかったアンドルーが局にかけつけ、特定の個人攻撃は放送倫理に違反すると上司のボン（ルイ・ヴィリアルス）に抗議。しぶしぶ形だけに謝罪のジョージが、いやいやアンドルーのメリッサへ復縁の活動に協力のはめになる。ラチのあかない状況のため、アンドルーが番組のゲストに登場でリスナーに判断を問う討論となって、口の達者なアンドルーがジョージをうち負かす。ショックのジョージが落ちこみ、今度はアンドルーが謝罪。直接にジョージがメリッサへ会いにいき、交際復活の条件にアンドルーの改善ポイントを聞いてくる。それを実践の助言でジョージがアンドルーと一緒に時間をすごすうち、ふたりに恋愛感情が芽ばえる。
ジョージがロック・アーティストの父親のパブロ（ジョーイ・デ・レオン）が女たらしの影響で母親が不在。姉のパルス（ニーニャ・ドリーノ）もロック・ミュージシャンで幼い息子がいるも未婚の母、との家庭環境でも幸福そうながら、恋人のオスカー（ロビ・ドミンゴ）と親友のローレン（ヘルガ・クラプ）がくっつき、失恋の過去を引きずる。男性の名前なのは正式なジョージ・ハリスン・アポストルの略で、パルスの息子がエルヴィス（ＪＢ・アグスティン）。妹のユミ（チェスカ・オルテガ）がコンテストの最終候補に選ばれる芸能一家なうえ、アンドルーがパブロのファン。なんて図式をしき、オカマのＤＪラム（ジョン・ラプス）が後輩で弟子のジョージをたくみにフォローの職場の人間関係をおく。番組の進行のみならず、自宅をアンドルーに教えるなど、ラムがプライヴェートでもジョージを助ける。
メリッサ・メエ・チュアのストーリーによるメリッサ・メエ・チュアとラス・デラ・トーレとカルミ・Ｇ・レームンドの脚本は、一度、お互いに気がつかないままにジョージとアンドルーがバーで遭遇し、さっそくジョージがアンドルーに嫌悪感をいだく、いわゆる初対面がマイナスなもの同士の典型的なラヴ・ドラマをつくる。前半のアンドルーのごう慢さが平板でラス・デラ・トーレの演出が単調につまらないばかりか、ジョージとアンドルーがデパートの寝具売り場で枕を壊しあう、ほほえましいより、むしろムシャムシャ腹のたつ描写を含み、途中まで駄作の予感がもたげるも、友人たちにジョージがメリッサかジョージかに迷っていると告白後の後半にレヴェルがあがる。アンドルーへの思いを自覚のジョージがふたたびメリッサを訪ね、ジョージとデートをアレンジで仲直りをしむけ、陰でこっそり泣く。でもアンドルーの気持ちが完全にジョージへ移ったとさとったメリッサが変名で番組に電話をかけて、ジョージを恋人泥棒と放送でののしる。耐えきれずに局を飛びだしたジョージをアンドルーが追ってバス・ターミナルにくるや、ついに愛をうち明ける。略奪が原因の失恋がトラウマのジョージが承諾にとまどう。
全体の構成の適所に女の子の寄宿舎で、簡易食堂で、屋台の焼き鳥屋で、雑貨店で、車の修理屋で、深夜に残業のオフィスで、安ホテルのレセプションで、警察の留置場で番組を聴くようすがはさまれたが、このリスナーたちにラムがジョージへの励ましのコールを呼びかけ、次々とメッセージが流れる。警官が拘留犯に代理で電話がおかしく、オスカーまでがジョージを勇気づけるし、パブロはアンドルーに浮気で失敗の自分をくり返すなといい、周囲がかたずをのむ中、ジョージがうなずく。応援の言葉を送ったもの全員が歓喜の声をあげる。
なかなかさわやかで共感がよく伝わり、ちょっと感動的なラストになる。ラス・デラ・トーレはハッピー・エンドのシメにクライマックスを配置の緩急で、まずまず佳作の印象を残す。
サラーの歌う主題歌がポール・ウィリアムズとロジャー・ニコラスの“I Wan't Last A Day Without You”なのでメロディーになじみがあり、親しめる点も肯定にはたらく。
ただしパブロに録音のシーンをプラスも、ハード・ロックはあまりでてこない。
当然のごとくサラーは庶民ふうのイメージなせいか、色っぽい要素と無縁ながら、熊のぬいぐるみを着るところでシャツからバストをのぞくアンドルーの主観のエッチなショットをもりこむ。ほかに女優陣はメーガン・ヤングがエクササイズの背筋運動でシャツに胸の谷間をみせ、ストレッチ・パンツに豊満なお尻を浮かばせる。タイトなジーンズも下半身の発達がくっきりなうえ、短パンにうかがう脚が魅力的。でも美人は認めるも、顔のフォームが個人的にタイプをはずれる。ニーニャ・ドリーノがやはりストレッチ・パンツのお尻のつきだしポーズをおがませるが、容貌の濃さにくわえ、背中に刺青がチラついて落胆。チェスカ・オルテガは丸い輪郭のフェースがややかわいい程度かな。アンドルーの友人たちのうち、マーティン・デル・ロサリオが演じるボーイフレンドとカップルのカロル役のマーラン・フロレスがけっこうチャーミングで、ヤング・ＪＶが演じるボーイフレンドとカップルの女性役のヤム・コンセプションにもときめきがおきる。ユミのファイナル進出を祝うパーティーでパブロが年甲斐もなくギターで口説くのにジョージがあきれるユミの友だち役のアレクシス・ナヴァロは、妊娠に設定のヘルガ・クラプともども、お願いしたい感じ。メリッサが激怒のきっかけになるガソリン・スタンドでアンドルーがちょっかいをだす挑発的なレディー役のジェフ・ギタンはミニスカのワンピースで現われる。ラディオ局にはアンナ・ルナが演じるＤＪがもうひとりいる。
お約束でジェラルド・アンダーソンが上半身のハダカを披露は女性ファンへのサーヴィスだろう。
