ＷＨＯ’Ｓ　ＴＨＡＴ　ＧＩＲＬ？
　
11年：ＶＩＶＡフィルムズ／ＳＭＤＣ
監督：ウェン・Ｖ・デラマス
主演：アン・カーティス
　　　 ルイス・マンザノ
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 デニス・パディーリア
　　　 ジョン・ラプス
　　　 キャディー・パンギリナン
　　　 ＤＪ・ドゥラノ
　　　 ディーナ・ボネヴィー
　オーヴァー・アクトの誇張でみせるコメディーで、フィリピン人はこんな笑いが好きねとあきれる。
　カレッジ時代にダサい女子大生のエリザベト（アン・カーティス）は大富豪のお坊ちゃまで、ハンサムなジョン・エドゥケ・ジュニア（ルイス・マンザノ）にお熱をあげる。ストーカーのごとくジョンの身のまわりの品を集め、本人のいるところでは緊張で話ができない。数年をへて建設会社につとめ、若き管理職になったエリザベトは経済的な成功でコンドミニアムを買い、容貌も垢ぬける。あるとき新聞でジョン・エドゥケの死亡記事をみつけ、ショックで喪服を着こんで葬式にいく。それが父親のジョン・エドゥケ・シニア（ミゲル・ファウストマン）の間違いだったため、あわてて会場から逃げる。突然の見知らぬ女性の来訪にジョン・エドゥケ・シニアの妻のベリンダ（ユージン・ドミンゴ）が「愛人がいたのね」と葬式をぶち壊し、以後の生活が荒れる。あまりの母の狼狽ぶりにジョン・エドゥケ・ジュニアが助手のバート（ジョン・ラプス）に命じてエリザベトを探しだす。ベリンダのほうも探偵のボンド（ボビー・ヤン）を雇い、エリザベトの周辺を調査させる。まったく同級生だとおぼえっていなかったジョンだが、事情が判明で現在のチャーミングなエリザベトに引かれ、やがて愛情が芽ばえる。でも探偵の「あなたの夫の愛人から、今度は息子に乗りかえた」の報告をうけ、法外な財力を使ってベリンダがエリザベトの一家にいやがらせを始める。
　とにかくユージン・ドミンゴの過剰な演技によるベリンダの常軌を逸した行動がギャグながら、いささか空まわりなばかりか、後半のかたくなさに退屈な展開をまねく。エリザベトの友人のモニクを演じるキャンディー・パンギリナンとオカマのジョン・ラプスのアクの強さが、さほどユーモラスでないなど、ウェン・Ｖ・デラマスの語りのセンスがズレる。
　ベリンダの看護婦のジェーン（ジョイ・ヴィアド）と運転手のフロスティー（リッキー・リヴェロ）のあつかいが、脇の活用でちょうどよいと感じるも、全体が極端なだけに、ジョンをみたエリザベトが正解をいえなくなる大学の授業での教師（ダン・クルース）や、ベリンダの差し金でエリザベトにコンドミニアムの売却をやめ、撤去を頼むオーナー（デブラリス）、同じくベリンダの差し金でベリンダの幼い妹（アビー・バウティスタ）と弟（マッキー・ビリオネス）にフィッシュ・ボールを売らないゲスト出演のマーヴィン・アグスティンが演じる屋台の販売人、エリザベトの同僚（テス・アントニオ）と上司（ジョジット・ロレンソ）にもウィットがほしかったところ。
　エリザベトにほれるコンドミニアムの管理人のジョニー（ＤＪ・ドゥラノ）がジョンとライヴァル関係をつくらない構成にくわえ、エリザベトの弟のエードリアン（ディーノ・インペリアル）がエリザベトの秘書のマキシン（ナディーン・ルストレ）を口説く設定は続きがなく、軽いイメージを狙ったにしろ、どうもドラマが弱い。一方でベリンダがエリザベトを誘拐でジョンとエリザベトの仲がいったん崩れ、今度はベリンダがエリザベト宅へ向かったと聞いたジョンがスワットの出動を依頼は、さっぱり『ブルース・ブラザース』のごときナンセンスにほど遠い。
　ジョンの写真をコラージュのボードを飾り、ジョンが飲んだグラスや、実はハゲのおっさんが着用のをジョンがはいたと思いこむ海パンを隠しもつエリザベトがジョンにすべてをみせるといい、これをセックスと勘違いのジョンがパンツまで脱いでエリザベトの部屋へ入るや、エリザベトの家族五名とジョニーとモニクがいて、全員の前で素っ裸がちょっとおかしいかな。
　個人的にはアン・カーティスの魅力不足がポイントをさげる。コンドミニアムのプールでエリザベスの家族が遊ぶシーンが二度あり、一回目で背景にビキニの女性が二名ほど立つが、アンは水着にならず、二回目はスケスケのスラックスをはくビキニをお申し訳程度に披露のみ。ＤＪ・ドゥラノの海パンやルイス・マンザノの半ケツと男の大胆さのプラスはウェン・Ｖ・デラマスがオカマのせいだろう。
　いや、マジでアンにセクシーさを奪うなよって感じ。
　また、エリザベトの同級生役にニュー・ＶＩＶＡ・ホット・ベーブスのアレクシス・ナヴァロとヤム・コンセプションが配役され、ほとんど確認できないエキストラあつかいが残念。カレッジのプールでジョンが泳ぐシーンで水着のサーヴィス要員にあててほしかった。エリザベトの友人役でクレジットの読めるニッキ・バコロドは、メイキング映像でジョンが話しかけるシーンがあるも、本編でカットのようだ。ポップ・ガールズのナディーン・ルストレはエードリアンと交際の進展でプールに呼ぶくらいのアイディアを盛りこむべき。
　エリザベトの父のジャックをデニス・パディーリア、母のジルをディーナ・ボネヴィーのヴェテランが演じ、特別出演のディーナは肥満ぎみのおばさんに驚きがおきる。かつての美貌の大ファンだけに、年をとるのはこわい。
　葬式の歌手でリコ・Ｊ・プーノ、マルコ・シソン、ノノイ・スニガ、本当のジョン・エドゥケ・シニアの愛人役でアイアイ・デラス・アラスのゲストが顔をだす。