ＷＥＤＤＩＮＧ　ＴＡＹＯ，　ＷＥＤＤＩＮＧ　ＨＩＮＤＩ！
（結婚あり、結婚なし！）
　
11年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／オクトアーツ・フィルムズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
主演：トニ・ゴンサガ
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 サンジョー・マルード
　　　 ウェンデル・ラモス
　　　 ニッキ・ヴァルデス
　　　 ミリアム・キアンバオ
　　　 ドミニク・オチョア
　トニ・ゴンサガとユージン・ドミンゴの顔合わせによるコメディーで、脇を含めて登場人物の全員近くがアクの強い演技をみせる、いかにもフィリピンっぽい軽さのドラマといえる。ホセ・ハヴィール・レイエスがテンポのよい語り口で快調に描く。
　ユージン・ドミンゴ演じるプレシーはブスに不釣り合いなイケメンの夫がいるも、この夫のベン（ウェンデル・ラモス）が苦労して貯めたカネを使いこみ、キレて家をでる。友人のドンナ（セイ・アロンソ）に弁護士の紹介をうけ、離婚訴訟をおこす。
　かつてプレシーが結婚を断った相手がいずれも金持ちに出世をプレシーの両親（ルー・ヴェロソ、ヴァンジー・ラバラン）がなじるが、その相手のフランキー（マノリト・アンボン）とウィルソン（ジェー・クストディオ）がチョーぶ男で見栄えを優先。女性弁護士のヴァルデス（ミリアム・キアンバオ）などと離婚理由のでっちあげを考案に、男性弁護士（ロリ・イノセンショ）が浮気やインポを却下のあと、ホモに決定がムチャクチャさをあおる。いざ裁判でベンが友人のボジョク（マヌエル・チュア）とふざけてキスの写真を証拠に提出で、ベンの母のウルスラ（オデット・カーン）までが「オカマか」と驚く。
　一方でトニ・ゴンサガ演じるベライはプレシーの従姉妹になり、三年間のじゃぱゆきを終えて帰る。しとやかな娘だったプレシーがハデで下品な女に変わり、幼なじみでフィアンセのオカ（サンジョー・マルード）が翻ろうされる。
　教師を目ざしたベライだが、兄のエルマー（テディー・コルプス）がコカイン中毒で倒れ、家族を支えるために日本へ行く。少し頭のおかしくなったエルマーが常に場の空気を乱すあたりがおかしい。オカの母（イルマ・アドラワン）が信仰にうるさく、ベライの父のデルフィン（ラモン・クリストファー）と母のヨリー（シルヴィア・サンチェス）を悪魔崇拝だと嫌う宗教ギャグが、これもフィリピンにおなじみ。ベライの依頼でオカマのヘルメス（ヴィンセント・デ・ヘスス）がデザインのウェディング・ドレスも色のパープルが信仰に反するとなじる。ベライとプレシーの親族がヴィサヤ出身に設定の民族をひにくる要素が同様にフィリピンの定番に思える。
　プレシーの話とベライの話を同時に進めながら、プレシーにベンが「これでもホモか」とベッドでつめより、ハイスクールにかよう娘のカレン（マイルス・オカンポ）と息子のジェー・Ｒ（パウル・サレス）が両親の情事を目撃。ややマザコン気味のベンがウルスラの過保護をふりきって二人がよりを戻す。ベライに教員養成の学校時代からの友人のミラ（ニッキ・ヴァルデス）がいて、同僚のオカをミラがひそかに好きらしい。変貌のベライを「まだ愛しているの」とミラがオカに迫ったのを目撃で、ベライの自分勝手な性格がおさまる。ふたたびじゃぱゆきを決心で出発の朝、オカがプロポーズで引きとめる。
　ともにハッピー・エンドにおさまる過程をユーモラスに展開し、なかなか楽しい内容と評価できる。ベライにミラが謝るときなど、共通の友人のテッシー（アントネット・ガルシア）とアーミーローズ（ラニ・タピア）まで抱き合い、どこか愉快。ベンの弁護士のカヒブリンをゲスト出演のドミニク・オチョアが演じ、なまりのきつい台詞が笑いを誘う。
　もっとも不自然さの指摘を許す点が弱く、ベライが一度の帰国もなく日本に三年も滞在がヘンなら、もう日本政府がエンターテイナーのヴィサの発給をやめたあとなのに、再度じゃぱゆきが可能なあたりに非現実性が浮かぶ。ベライが土産にキティーのぬいぐるみをもってくるのはよいも、日本名と呼ぶ名前は中国と勘違い。
　演出面では夫をホモに仕立てる写真を探すため、プレシーがベライと一緒にメイドのハスミン（エプリル・アン・ドロット）の協力で部屋にしのびこむシーンで、突然のウルスラの帰宅にハラハラのサスペンスが少ない。プレシーが家出をながめる近所のおばさんたち（ジジ・ロクシン、テッシー・ヴィリアラマ）の誇張や、ホモの申し立てに女性裁判長（ルイ・マナンサラ）の反応もイマイチかな。
　女優だとユージン・ドミンゴはとにかく、多少ともトニ・ゴンサガにセクシーさがほしかった。じゃぱゆき仲間のラクエル（ウェンディー・ヴァルデス）とジョセリン（レジーン・アンヘレス）とベライが原色のコスチュームを披露も、結局はジーンズの短パンにときめく。結婚式の会場の予定がボラカイ、ラ・ウニオン、ラグーナ、カヴィテとどんどん安いほうへ変更で、ベライがビーチにこだわるだけに水着を欠いて残念。
　親族や友人のキャストではベライの妹のウェンディー（アンナ・ルナ）に活躍の場を含まない。
　あとエンド・クレジットのバックに流れる結婚式のシーンにジョージ・リムがいる。