ＷＡＲＡＴ
（破壊された）
　
99年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：ジョマリ・イリアーナ
　　　 ジョイス・ヒメネス
　　　 ジョコ・ディアス
　　　 アリシア・アロンソ
　　　 チャニング・カルロス
　　　 アリシア・レーン
　　　 リチャード・クアン
　　　 トニー・マベサ
　　　 ロメオ・リヴェラ
　　　 ロミー・ロムロ
　　　 ジャッキー・ディアス
　　　 ロメオ・エンリケ
　　　 ジム・ペバンコ
　犯罪者に追いこまれた男女の逃走劇というのは不変のパターンとして存在するが、青春映画の一つの形として生き急ぐ若者たちを描きやすいからではないか。ジョエル・Ｃ・ラマンガンのこの作品では、同じアメリカ人の父を持つ男女の破れかぶれの無軌道ぶりが展開。
　アメリカ軍基地はフィリピンから全面撤退したが、そこに残された現地妻との間の子どもたち、つまりＧ．Ｉ．チャイルドの問題は、じゃぴーのの問題とともに社会に解決されない歪みを生んだようだ。あたらめてこの国のアメリカ合衆国への依存関係がうかがえるともいえる。
　異父兄妹の男女の恋愛というシチュエーションである以上、本来なら愛し合う二人がいつ兄妹であると気がつくかという点に興味を持って物語は進行のはずだが、 ジョエル監督からはあまりそこへサスペンスを置こうとの演出意図が感じられない。ジョマリ・イリアーナ扮する青年とジョイス・ヒメネス扮する乙女は開巻と同時に出会っていて、なぜという理屈など無視し、さっそくお互いが引かれ合っている。次に会うときには車の中で早くもジョイスがジョマリにフェラチオで、あっさりと一線を越えていて、いささか呆れるばかり。
　ジョマリはジョイスと出会った直後にもアリシア・レーン扮する女友だちとセックスを始め、ジョイスとの血のつながりを知らされていったん別れたあとにも、ジャッキー・ディアス扮する子連れ女の家へ転がりこんでセックスなので、かなりの浮気者との印象を与える。あの浮気を鬼のように嫌うフィリピン女性にとってみれば、彼のキャラクターはどのようなイメージに映るのだろうか。それにジョイスがいなくなったと勘違いし、半狂乱で空に発砲のシーンなど、愛とか情熱といったレヴェルでなく、単純に頭が悪いのではとも感じさせる。このあたりのフィリピン人の反応を知りたいところ。いずれにしても、ジョマリ扮する主人公の青年に同情できるかどうかが、この作品を受け入れる鍵ではないか。
　養父殺しという無実の罪を着せられたジョマリは、偽証のアリシアのところで誤って本当に殺人を犯し、ここから逃走劇が始まる。毎日､奴隷のように自分を扱ってきたアリシア・アロンソ扮する叔母の家を飛びだしたジョイスが同行で、二人は車を盗まれたのをきっかけに、自らも犯罪に手を染めていく。最初はカネ目当てで仕方なくであったが、次第に犯罪を楽しむようになっていく過程が、この作品のテーマというか、分別をわきまえない若者の恐ろしさを扱っているということなのだろう。ジョマリだけでなくジョイスまでもが、カネ持ち宅に入ったとき、男の服を奪おうと裸にむくのだが、パンツまで脱がせると男の手を自分の乳房に押しつけ、彼のチンポをつかむという余計なことをして、相当な悪になってゆく。
　でも二人に銃を向けてきた夫婦に対してジョイスが発砲で、弾が間違って夫婦の子どもに当たってしまい、精神的に破綻を招く。子どもを殺害の罪悪感でジョイスは錯乱状態に陥り、二人は教会へ駆けこんで神父に助けを求める。そこへ警官隊が包囲し、いったんは神父を人質にとるものの、説得によって解放で自らは死への道を選ぶ。結局はキリスト教的な救いが帰着点にくるのはお国柄ながら、はたしてみている者が二人に対してどこまで共感を得られたかは、最後まで疑問として残る。それは多くのアメリカ映画が描くのと同様に、自分たちの主張のためには周囲の迷惑などどうでもよいという自己中心的な正当さが、この作品からもムンムンと漂ってくるからに違いない。
　物語を離れたところでは、やはり何といってもジョイスのセクシーさが見どころだろう。むしろジョイス意外はどうでもいいとさえ思えるほど。
　階段でのセックス、タクシーの中でのセックス、屋上でのセックスはもとより、廃墟で水浴びのシーンでのパンティーが濡れてピタッとお尻に貼りついた色っぽさは生唾ものといえる。ここでは引き締まったジョマリのお尻もみえて、女性ファンへのサーヴィスを忘れていない。また二人だけで結婚式をあげるシーンでは、ジョイスが田園風景のあぜ道を全裸で走りまくり、ジョマリが投げた白い布を受けとってウェディング・ドレスのようにまとう中、陰毛までくっきりとみえる。ひょっとするとジョエル監督は、この全裸での結婚式のシーンを撮りたいがために、他のすべてを構成したのではないかと思えるほど魅力的。
　またジョイスがいったんかつて叔母の家にいた男のところでやっかいになるシーンでは、部屋の中で着がえるジョイスを鍵穴から男が盗み見するシーンがでてくる。穴を想定して丸く画面を切った奥にスルスルと衣服を脱いでいくジョイスが映って、何とも隠微。全裸になると思わず手を伸ばしたくなるような豊満なオッパイに、陰毛もチラチラ。のぞきながらオナニーを始める男の気持ちが十分すぎるほど理解できる。
　ジョイス・ファンには必見の作品だといえよう。
　なおジョコ・ディアス扮する警官の妻役で、サンドラ・ソベルが顔をだす。