ＷＡＬＡＮＧ　ＫＡＷＡＬＡ
（欠員なし）
　
08年：ＤＭＶエンターテインメント
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：ジーン・ガルシア
　　 　エミリオ・ガルシア
　　 　ポロ・ラヴァレス
　　 　ジョセフ・ピタンコル
　　　 パオロ・リヴェロ
　　　 アルクリス・ガルーラ
　　　 アルテア・ヴェガ
　　　 マルコ・モラレス
　フィリピンの裏社会を描く犯罪ドラマで、同性愛を下敷きにおくのがジョエル・Ｃ・ラマンガンらしい。オールスター・キャストの軽いコメディーの合い間に深刻な人間劇の小品を撮るあたりが多作家の監督の器用さながら、主演のポロ・ラヴァレスとともにプロデューサーを兼任にやる気のほどがうかがえる。
　バタアンのモロン市でロケの漁村にはじまり、漁師のホアキン（ポロ）は隣人の学生のワルド（ジョセフ・ピタンコル）とホモ関係をはぐくんでいたが、ドバイへ海外就労の妻のシンシア（アルテア・ヴェガ）が帰国で状況が変わる。欲求不満のシンシアがセックスを求め、すぐに妊娠。それに嫉妬のワルドがマニラへでる。ホモが発覚でシンシアが荒れて、ホアキンもマニラへ向かう。ここからが人探しのミステリー・タッチで進み、ジョエル・ラマンガン、マニー・Ａ・ヴァレラ、エンリケ・ラモスのストーリーにもとづくエンリケ・ラモスの脚本が堅実な構成で語る。ホアキンが頼った同郷のトリツ（マルコ・モラレス）を訪ねれば、トリツのつとめるゲイ・バーで女装のマネージャー（アントニー・テーラー）にワルドが面接にきたと教えられる。ゲイ・バーの客のジェラルド（パオロ・リヴェロ）が経営のレストランに雇われ、一時期、ジェラルドがワルドを家に住ませたのもわかる。すぐにレストランで仕事中に警官のルフォ（エミリオ・ガルシア）に声をかけられ、ジェラルドがとめるのも聞かずに「オカマ」とののしり合い、ルフォの元へと去っていった。
　中国系のあやしい人物が歴然のソー氏（ウィルソン・ゴー）とルフォが人身売買の商談に、大金を受けとってルフォがソー氏の要求人数に欠員なく若い男女をわたし、バンカーでミンダナオからマレーシアのサバへ密航のようすで内容を転じる。トリツのバーで男のダンサーたちをみつめるのにホモなうえ、妻のベン（ジーン・ガルシア）に暴行をふるい、ルフォが両刀のサディスティックな変態と示す。真相は簡単に明らかになり、バーの前でバルットを売る男（アルクリス・ガルーラ）にホアキンがルフォの存在を聞き、ホアキンが立ちションでルフォに無理やり逮捕で自宅へ連行される。ホアキンの話でベンがルフォのワルドへの強制アナル・セックスを思いだし、ホアキンへルフォの捜査を約束のふりでルフォがホアキンとワルドの同性愛を知ると、まずホアキンを同性愛レイプにおよび、大人数の若い男女を幽閉の中からワルドをだしてホアキンに会わせ、今度は全裸で二人にホモ・セックスを強制。
　部下のシソ（マイク・マガット）とエンテン（ジョン・ロマノ）をまいてベンがホアキンとルフォを逃がし、自らが人身売買の共犯で通報のクライマックスが、さすがに盛りあがる。ルフォがホアキンとワルドを追いつめ、はたしてどうなるかは意外性の狙いでなく、予想の範囲内におけるエピローグまでつけたまとめかたがなかなかうまい。とにかくサスペンス演出にジョエル・ラマンガンの実力を感じる。
　ルフォがホアキンにピストルを突きつけ、口につっこむと銃身をチンポのごとくなめさせてフェラチオのピストンふうに動かす行為に、倒錯した異常心理がきわまる。
　細部の表現もいきていて、田舎のホアキンの家がブロックの壁なのが生活臭をにじませれば、シンシアの土産をもらいに母（イヴリン・タガログ）と弟（ダニロ・レガラ）と妹（レア・レガラ）がやってきて、ワルドの祖母であるトリニン（ヘルミー・コンセプション）にチョコレートをあげれば大喜びがフィリピン人そのもの。小雨の降る中、女たちや子どもたちがうろつくのも平気でトリツがパンツ一丁になって外で水浴びが貧民街なら、トリツの部屋でホアキンを無視でガールフレンドのアンドレア（メロー・ジョンソン）が水浴びからハダカででてきて、バーづとめで遅刻すれば「マネージャーに怒られる」と大急ぎで着がえがいかにも。なんといっても男のダンサーがストリップのゲイ・バーがフィリピンの同性愛風俗を再現する。ルフォがプライヴェート・ジプニーに乗るのが警官の典型で、マレーシアへの人身売買は、おそらく実際にあるのだろう。
　ベンが“刺身”と書かれたＴシャツを着るのは、ちょっと笑えるかな。
　題材が題材だけに、男のヌードが全編に満載は、いささか気持ち悪いところ。田舎でホアキンとワルドのホモ・セックスでポロ・ラヴァレスのアヌスがみえそうなら、ルフォの部屋でのパンツはきかえでマルコ・モラレスのチンポが丸だし。Ｔバック・パンツの男たちが踊るゲイ・バーのステージは三度ほど紹介され、トリツがパンツまで脱ぐと、マルコ・モラレスのチンポがプラプラと揺れる。ルフォの脅迫でホアキンとワルドが素っ裸にむかれ、これでもかとお尻をモロにさらす。とくにアナル・セックスの暗示にゲーッ。
　大・大・大・大ファンのジーン・ガルシアに色気を欠く点が最大の不満ながら、アルテア・ヴェガが興奮をくれる。容貌的にはジーンと比べれば相当に落ちるも、ホアキンと立ったままの昼のセックスで乳首をポロリのうえ、夜の大声をあげるセックスで正常位のオッパイを全開に形のよさがうかがえ、ホアキンがうんざりの騎乗位のセックスで魅力的な美乳と確認できる。
　メロー・ジョンソンはトップレスのＴバック・パンティー一枚がおいしそうなのに、アップに寄らず、出番も少しが残念だった。