ＷＡＬＡＮＧ　ＫＡＲＵＧＴＯＮＧ　ＡＮＧ　ＮＡＫＡＲＡＡＮ
（過去は二度ない）
　
87年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：レロイ・サルヴァドル
主演：クリストファー・デ・レオン
　　　 シャーロン・コネータ
　　　 カルミ・マルティン
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 トミー・アブエル
　　　 アリ・ソット
　　　 カトリン・ゴンザレス
　　　 マリタ・ソベル
　クリストファー・デ・レオンとシャーロン・コネータの顔合わせによるメロ・ドラマで、ヒルダ・オルヴィダッドのＴＳＳコミクスによる原作をレネ・Ｏ・ヴィリアヌエヴァとラクエル・ヴィリアヴィセンシオが脚色し、レロイ・サルヴァドルが無難に演出している。
　クリストファー演じるのは医者で、妻を治療できず、亡くした後悔を引きずる日々。自宅に妻の肖像画をかかげ、あきらめきれない心理状態が続く。シャーロン演じるのは貧しい家庭の娘で、マリタ・ソベル演じる母が重病でカネがいるも、スケベ客のあしらいがヘタで不満を買い、ベリア・フロレス演じるマネージャーからクラブ勤めをクビになる。マリタが死んだあと、タイピングを習って小さな会社のＯＬに採用され、トミー・アブエル演じる社長にプライヴェートでも気に入られる。ある日、クリストファーがシャーロンをみかけ、妻そっくりなのに驚く。強引にアプローチでカトリン・ゴンザレス演じる幼い娘の家庭教師を頼み、トミーに事情を話してシャーロンが引きうける。やさしいシャーロンにカトリンがなつき、自分そっくりの肖像画の存在に、ヴァンジー・ラバラン演じる家政婦がシャーロンへクリストファーの妻のことを教える。やがてクリストファーがシャーロンを求めるも、シャーロンが「私は代用品じゃない」と拒む。チャンダ・ロメロ演じるホステス仲間だった友人に「ラッキーなのに」といわれ、プロポーズを承諾するや、カトリンが「ママ」と喜ぶ。クリストファーにはカルミ・マルティン演じるセックス・フレンドがいたのだが、当然おもしろくない。たまたまベリアが伯母との関係でシャーロンの過去をつかみ、クリストファーに「売春婦だ」となじる。クリストファーが荒れて、ロナルド・ヴァルデス演じる先輩の医者がなだめる。シャーロンがウェディング・ドレスを焼き、でていくのをカトリンが泣いて嫌がり、シャーロンへのすがりつきをクリストファーがさえぎると、カトリンが倒れる。病気だったカトリンが手術の前にシャーロンに会いたがり、クリストファーが困ったとき、シャーロンとトミーが仲のよい事実をカルミが知って、クリストファーとトミーにウソの電話をかけ、シャーロンとトミーが密会する場にクリストファーがやってくる状況をしたてる。クリストファーとトミーが殴り合ってシャーロンがクリストファーを追いだし、冷静になったトミーがクリストファーをさとすや、カルミの悪意に気がついたクリストファーがカルミと絶縁する。シャーロンのはげましでカトリンが手術に耐えて回復をとげ、クリストファーがシャーロンに謝る。肖像画をはずすのをシャーロンがとめ、先妻は先妻、私たちは私たちで新生活をやり直そうと決める。
　結婚式の前に長髪だったシャーロンの髪を肖像画のように短く切るあたりの改造シーンがヒッチコックの『めまい』に通じる変態ぶりながら、サスペンスを伴わないぶんだけ緊張感不足なのは、ストーリーの流れとしてしょうがないか。マニー・カスタニェーダ演じるスタイリストがオカマの点がいかにも。クリストファーとロナルドがゴルフするなど、カネもちの趣味をうかがわせ、ジョニー・ウィルソンとナティー・サンチャンゴ演じるクリストファーの両親が上流の雰囲気を漂わせる。また結婚式の奥でトミーが寂しそうな表情をつくり、秘めたる愛情の暗示がけっこううまい。
　でも酔ったクリストファーがシャーロンに手をあげ、安易な暴力の使いかたがイマイチで、しょせんは内容の浅い、フィクションの枠をでないとの評価に落ちつく。
　本来はカルミにセクシーさを期待したのだが、クリストファーとのベッドでお尻の上にだけシーツをかけ、うつ伏せで寝ているボディーがそそる。立ちあがったクリストファーのお尻が丸だしなので、カルミもみせてほしかったなあ、との不満を残すのが惜しいところ。チャンダはシャツの肩ひもを落としてオッパイがのぞきそうだったり、短パンから伸びる脚で視線を奪う。あとクリストファーとシャーロンの初夜のセックスがあって、当然、肝心の部分は隠れていた。