ＷＡＬＡＮＧ　ＫＡＰＡＬＩＴ
（代わるものなし）
　
03年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：シャーロン・コネータ
　　 　リチャード・ゴメス
　　 　ミリアム・キアンバオ
　　　 パオロ・ベジョネス
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 ボビー・アンドルーズ
　　　 ピンキー・アマドール
　　　 ナネット・インヴェントル
　　　 マルク・ネルソン
　シャーロン・コネータとリチャード・ゴメスの共演で描く、夫婦の危機のドラマ。
　別居中のジョアン（シャーロン）とデニス（リチャード）には、それぞれジョアンにビジネスマンのテディー（パオロ・ベジョネス）、デニスにカネ持ちのお嬢さまのセリーヌ（ミリアム・キアンバオ）と新しいお相手がいる。ジョアンがノリ（マルク・ネルソン）という二枚目と関係をもったのが亀裂の原因らしく、まだデニスのほうには未練が残る感じ。でもデニスはセリーヌとアメリカ合衆国に住む予定で、その出発まで長くない。娘のララ（チャリーナ・スコット）をデニスが連れていったのをジョアンが恨み、自宅へデニスが現われると「誘拐犯よ」と騒いで隣人（ジョシー・タグレ）に通報を頼む。弁護士（ラクエル・ヴィリアヴィセンシオ）に相談も、法的にララをとり戻せそうにない。一方、デニスに知らせずにジョアンは男の子のスティーヴン（キング・アルカラ）をもうけていて、これに気がついたデニスがアメリカ合衆国へ移るまでの間、息子と一緒に過ごしたいと望む。期間限定でララをジョアンが、スティーヴンをデニスが引きとる交換に合意も、ララがジョアンを母親と認めず、スティーヴンもデニスに愛情をもたずで交流に苦労する。たまたまジョアンの父のパパン（ダンテ・リヴェロ）が倒れて痴呆が進み、プライヴェートで雇う看護婦（カレン・オハラ）に亡き妻と勘違いで抱きつき、さすがにたびたびで看護婦がやめる。病院への入院を拒むパパンにジョアンが困ったとき、パパンとウマが合って仲のよいデニスが、アメリカ合衆国へいくまでだからと世話を申しでる。しょうがなくてジョアンもうけて同居が始まり、すぐにララとスティーヴンが両親の復縁を願うようになる。
　ジョアンとデニスが同じ精神科医（ジム・ペバンコ）の患者なのがユニークな設定で、相手にいえない気持ちを医者に話し、第三者に告白で自分を納得させつつ、観客にも心理を提示の手法に、すれ違う二人の対応を描く語り口がアメリカ合衆国の恋愛劇を思わせる。フィリピンにも精神科医の需要がでてきたともとれるが、脚本のラクエル・ヴィリアヴィセンシオと監督のジョエル・ラマンガンによる、作劇上のフィクションだろう。
　ジョアンがペーパー・ケアーのセールス員で、優秀さを上司（チャーリー・ダヴァオ）に評価されるパーティーにデニスがきて、ジョアンがデニスをビンタにララが汚い言葉でジョアンをののしり、デニスがたしなめるのにはじまり、前半のララのジョアンに対する嫌いかたがやや極端で、単細胞な構成と感じる。パパンが幸福だったころのジョアンとデニスのアルバムをララにみせ、ララがデニスに「ママはいないといったでしょ」とウソを怒り、ジョアンに謝るも、子どもの純粋さはこんなものかもしれない。パパンが亡くなって葬式が終わり、デニスが逗留の理由がなくなったとジョアンの家を去ろうとすると、スティーヴンが泣き、ララが「もっと一緒にいたい」と訴えて、子どもに家族がいかに重要かを示す。
　ジョエル・ラマンガンが大人の愚かさや勝手さもよくあらわし、パパンの葬式には旧知の女性のアイミー（ジレット・サンディコ）がデニスに「私のこと、おぼえてる」と聞くのに、アイミーがデニスを好きだった暗示や、ノリがジョアンをなぐさめるのをデニスがながめ、過去をうかがわせる。テディーがジョアンにプロポーズでデニスの誕生日に二組のカップルが食事のとき、テディーがジョアンにイチャつき、セリーヌがデニスにベッタリで、よりどちらがどちらにホレているかの度合いがわかる。意地を張り合ったジョアンとデニスが反省で同時に「ごめん」と口にだす息疎通や、デニスとテディーがケンカをジョアンがとめ、デニスの気持ちをジョアンがさとり、ついベッドをともにするも、翌朝に目ざめてみれば横にデニスが寝ていて「しまった」、なんて状況が自然に伝わる。
　パパンの死が眠ったまま起きない静かな描写なら、直前の夜にデニスへ記念の結婚指環をあげている。デニスがセリーヌに婚約解消をわびると、あっさりセリーヌが承諾がプライドの高さ。ジョアンがテディーとよりを戻してジョアンとデニスが財務調査でもめ、係官（ナンディン・ヨセフ）があきれて、自分たちのバカさ加減に気がつく。パパンの指環をデニスがジョアンにわたして結婚の復活で、ちゃんと式をあげていなかったデニスの父（トニー・マベサ）と母（ルイ・マナンサラ）の結婚式に出席のラストへ続く。
　中流のライフ・スタイルを反映の要素が盛りこまれ、ジョアンがテディーとジムでウォーキング・マシーンのエクササイズをすれば、テディーがスティーヴンをプールで泳がせる。デニスとパパンがチェスで対戦なら、パパンがゴルフのチャンピオンだったとのキャラになる。デニスがスティーヴンにスカッシュを教えるも、うまくいかず、パソコンで交流が効果をはたす。ちなみにデルのコンピューターを使っている。セリーヌがアメリカ合衆国に移住を自慢げにいいまくるのは、アメリカ志向の高いフィリピンっぽい。ジョアンがメイド（セシル・ヴィラル）と料理は、アドボなどの庶民のメニューと異なって興味がわく。ララがピアノで“チョップスティックス”を弾いてスティーヴンが加わり、連弾でのふれいあいはシチュエーションが違うものの、どこかジョージ・シドニーの『愛情物語』を思いだす。
　シャーロン・コネータは肥満がはじまるながら、デニスとのベッドで朝に起きたり、シャワーのシーンがあって、肩を露出も、さすがに色気を感じさせない。でも演技はいつものとおりに無難でうまい。ミス・フィリピンで、準ミス・ユニヴァースのミリアム・キアンバオはこれが映画におけるデビュー作にあたり、好みの問題かもしれないが、さほど美人に感じない。ジョアンの同僚のテレ役にピンキー・アマドール、秘書役にオーブリー・クエトが出演で、ペーハー・ケアーのパーティーでピンキーが黒いドレスを着て、バストの胸元が揺れるのは、ちょっとぞくぞくする。ただし髪の毛を上にあげたピンキーは、いささかブスっぽい。仲よしの同僚のマベル（ナネット・インヴェントル）とジョアンとフライデーで食事で、男の同僚のシド（ボビー・アンドルーズ）を待つとき、横にいた男性のジェーク（ディーノ・ゲヴァラ）にわざと間違えて声をかけ、すぐに現われたシドとジェークが妙に意気投合はユーモアの導入だが、テレがうしろを紐で結ぶ赤いエナメルの服で、ピンキーの背中がやはり刺激をくれる。
　マベル役のナネット・インヴェントルや、ジョアンの叔母役のマリッサ・デルガドのデブ中年女性の存在感が強く、まさにおばさんパワー。
　スーパー・フェリーの上で開催の水着ファッション・ショーがでてくるのは嬉しいが、どのモデルもおとなしめのデザインによる生地の面積の多い水着で残念。
　意外とひきつけたのは子役出身のチャリーナ・スコットといえ、94年のシャーロン、リチャード、ジョエルのトリオの『ＫＡＰＡＮＴＡＹ　ＡＹ　ＬＡＮＧＩＴ』でシャーロンの幼い娘を演じたときは、成長すればブスだろうなあと思ったものの、確かに美少女じゃなくて納得でも、ヘンに色気がただよう。十三歳の設定でムチムチのボディーに育ち、もみごたえありそうにオッパイがふくらんでいる。ジーンズ、白パン、黒パンが下半身の魅力も放ち、モーターボートで遊ぶ家族で湖畔へハイキングのシーンに水着の披露が欲しかったところ、なんて告白はロリコン気味か。もっともジョアンが浴室のドアを開くとデニスがシャワー中で、しばらくジョアンがこっそりみているのを偶然にララがながめ、ジョアンに「パパのシャワーをのぞいたでしょ」と笑顔でいい、ジョアンの「いや、のぞいてないわよ」に「えー、のぞいてたよー」と楽しそうに返し、ジョアンが「パパにいわないと約束してね」の直後にパパに「ママがのぞいてたよ」というときの歓喜に満ちた目つきが、演技をこえて思春期の娘の素顔をにじませる。
　ララと同年代くらいのデニスの妹役で台詞がないも、ヴァンナ・ガルシアが顔をだし、こちらは清楚な美少女。ハッと容貌が視線を奪う。
　なお、デニスが弁護士（マヌエル・アキノ）に会うシーンに、マイクの映りこむミスがある。