ＷＡＬＡ　ＫＡ　ＮＡＮＧ　ＰＵＷＡＮＧ　ＳＡ　ＭＵＮＤＯ
（もう世間とのへだたりはなくなった）
　
97年：スター・シネマ／ＲＳプロダクション
監督：ロン・リック
主演：ロニー・リケッツ
　　　 チャック・ペレス
　　　 ジゼル・トエンギ
　　　 マーク・アンヘロ・ウィルソン
　　　 ジャニン・バレド
　　　 トニー・カレオン
　　　 エドガー・マンデ
　　　 デンショ・パディーリア
　　　 ロルダン・アキノ
　　　 ディンド・アロヨ
　　　 エドウィン・レイエス
　ロン・リック監督は主演のロニー・リケッツの変名で、なかなか手堅いアクション演出をみせてくれる。
　前科者の悲哀を題材にとる作品だが、甘いといえば、甘い部分も目立つ。ロニー演じる主人公が七年ぶりに出所してみると、ジャニン・バレド演じる妻が誰か白人と再婚ずみで、息子には自分のことを父だとの認識がない。仕事はみつからず、近寄ってくる者といったら、チャック・ペレス演じるかつての犯罪仲間のみ。それでもＧ・トエンギ演じる女友だちと偶然に再会し、いざロニーが誘拐犯で指名手配されたら怪しむこともなくＧが助けてくれるのだから、ロニーの孤独を強調のようでいて、世間の非情に徹しきれない構成が惜しい。
　まあ美人のＧがからんでこないと映画の魅力は半減なので、きっかけとしてはよしにおさめよう。
　チャックたちがマーク・アンヘロ・ウィルソン演じる金持ちの子どもを誘拐し、ロニーは運転手に雇われる。でも自分の息子と同じくらいのマークをみていて助けようと決め、仲間たちから寝返る。マークはトニー・カレオン演じるおじいちゃん子になり、外国へ行っているエドウィン・レイエス演じる父親のことをほとんど知らない設定。自閉症のように自分の世界へ閉じこもる性格で、ホントかわいくない。ロニーは何度も怒りそうになるが、Ｇの元へ逃げこみ、Ｇがやさしく接するうちにマークが心を開き始め、ロニーとも交流の展開は核をなす部分だけに、さすがに共感を呼ぶように描けている。
　ラストの別れでロニーとマークがかわす寂しがりや同士のふれ合いの視線からは、納得のいくドラマだったなあ、との満足感をくれる。
　トニーが殺され、あわててエドウィンが帰国において、ロニーがエドウィンに連絡でマークを返そうとするシーンがなかなかのサスペンス。前科者だから新聞でも犯人だの報道があふれて凶悪な男と信じるロニーをＳＷＡＴが密かに取り囲む中、マークをエドウィンのほうへと歩かせる。ロニーが自分の身体に当たるライフルの照準を定める赤いレーザー光にハッと気がつくと、エドウィンを父とわからないマークが恐怖から駆け戻ってくる。いかん、逃げる、とＳＷＡＴの射撃開始に、防戦のロニーがあたりに置かれるドラム缶に発砲で次々と爆発が起こり、火の海の中を「私の息子が死んでしまう」とエドウィンが叫びながらうろつく。
　画面から息をのむような緊迫感が持続し、このシーンだけでＢ級アクションの水準をクリアしているといえる。
　二度目の引き渡しの連絡のあとはエドウィンが単独で指定現場へと向かい、当然ながら警察が尾行していて、エドウィンはこれをうまくまく。そして無事にマークを返されるものの、すんなりハッピー・エンドになるわけがない。チャックたちがタイミングよく現われ、銃撃戦へ突入。残念ながらこのクライマックスは、ロニーの弾ばかりが当たるありがちなご都合主義で、イマイチなのは否めない。横を向くチャックのあとに抱き合うエドウィンとマークがきたのに、チャックが二人に気がついたわけじゃなかったという混乱を招くごときショットつなぎもあり（編集はジョイス・ベルナルだが…）、ヘタだなあと感じる。すべてが終わった直後に警察がやってくるのも型どおり。
　それでもＧとシルヴィア・マリー・ストーンの対決がそこそこみせてくれる。チャックにはロルダン・アキノ演じるボスがいて、ロルダンがボディー・ビルダーのような筋肉女からマッサージをうけるのが好き。そのマッチョ・ウーマンを演じるのがシルヴィアで、ムキムキのボディーが色っぽくないものの、露出の多い衣装になっている。ロルダンをもむときに黒いビキニのお尻のアップがあるのは嬉しいが、これって女性なのと疑ってしまうほど。Ｇがバケモノのようなシルヴィアをいかに倒すかは、マジでハラハラさせる。
　とりあえずはあきさせない展開だった。
　欲をいえばＧに水着姿くらいほしかったところだが、シーツを巻いてベッドで寝ている光景があり「うーん、抱きつきたい」とうっとり。
　Ｇはかわいいなあ。
　ジャニンも大ファンだが特別主演だから出番が少なく、もっとみたかった印象。