（そこじゃない、そこじゃないって… 私の心はそこにある！）
05年：ウォーター・プラス・プロダクションズ
監督：アルマンド・Ａ・レイエス
主演：カト・デ・サントス
ジェフ・アレオス
ジョン・ラプス
イーアン・ヴァルデス
エミリオ・ガルシア
Ｄ’ボディーズというセクシー・グループを売りだすための企画で、ミュージカルふうコメディーになっている。男たちのグループであるＤ’ポイント・ガイズ、オカマたちのグループであるＤ’ポイント・オラ・チカも一緒に売りだしているのが、いかにもフィリピンっぽい。それにしてもＤ’ボディーズの歌を聞くかぎり、もうあきれるほどセックスボン・ガールズの猿マネで、こうもコピーするかとあきれることしきり。でもヴィヴィアン・ロングやジョイス・マヌエルなど、いくつかの映画でヌードを披露している女優に加え、ティンティン・バウティスタ、チャネル・ゲヴァラ、ジョナリン・リリーオネス、マリセル・メショナ、アニー・ドゥンピット、ダイアナ・コンプラがメンバーをなすＤ’ボディーズのリーダー格が大ファンのカト・デ・サントスだけに期待が高まる。
物語は実にシンプルであり、正直いってくだらない。田舎からカト演じる年ごろの娘と、ジェフ・アレオス演じる青年が同じバスのとなり同士の席に居合わせ、マニラへとでてくる。カトがイーアン・ヴァルデス演じる叔父を頼ってみれば、ニューハーフに性転換していてびっくり。一方のジェフもジョン・ラプス演じる親戚を訪ねるや、ジョンがオカマなのに驚く。しかもイーアンとジョンが隣人で、猛烈な犬猿の仲。恋が芽ばえたカトとジェフはさしずめロミオとジュリエット、みたいな設定になっている。イーアンにはオカマの部下が三人にて、ジョンにもオカマの部下が三人。イーアンが営む寄宿舎には八人のギャルが住み、ジョンが営む寄宿舎には十人の野郎どもが暮らすとなれば、おのずとストーリーは予測がつくもの。男女の人数が合っていないのがご愛嬌。カトはショービズを目指し、メイクアップ・アーティストであるイーアンの助手として映画の撮影現場へいくと、ジョンがエキストラのプロダクションのマネージャーであり、ジェフをバーテン役に連れてきて、仕事でまではち合わせ。カトがジェフのメイクをするのにイーアンがジャマを入れ、ジョンがイーアンの食事に下剤をもってトイレからブーブー音が聞こえ、便器に下痢弁があふれだす下ネタが展開する。家が向かい合っているというのに直接会えないカトとジェフはメールでやりとりし、ティンティン演じるギャルの一人とボン・トロノ演じる野郎の一人も内心相愛なのに、それぞれが違う相手とデートしている現場に遭遇で反目し合う。ちなみに映画撮影シーンでの主演女優を演じるジョナリン・ファロンとボンのデートの相手を演じるフランソワ・ゴンザレスがちょっとかわいい。ついには大ゲンカにダニー・デ・ラブラ演じるバランガイの長が乗りだし、二つの家の境界線にテープを張り、お互いの立ち入りを禁止する。まあ、この手の話はイーアンとジョンが和解でハッピー・エンドに相場が決まっているもので、かつてイーアンとジョンは好意を抱いていたのだが、エミリオ・ガルシア演じる親友をとり合ったことで愛情が憎しみに変わった回想が入り、悪態の原因が明らかになる。今は有名な俳優のエミリオが主催するマニラ・スター・タレント・コンテストが開催されると知り、百万ぺソの賞金のため、Ｄ’ボディーズ、Ｄ’ポイント・ガイズ、Ｄ’ポイント・オラ・チカが出場を決めてクライマックスへ。子どもたち、女の子たち、男女のグループなどが歌と踊りを披露したあと、彼ら、彼女らの出番がやってくる。『フレンチ・カンカン』と比べるのは酷にしても、前座をおく構成でワクワク感が高揚しないムードづくりの弱さは、アルマンド・Ａ・レイエスの演出のいたらない点。結局はＤ’ポイント・オラ・チカのオカマ六人が優勝するのが笑わせるなら、エミリオがイーアンとジョンをステージへ呼び、仲をとりもって終わり。バカバカしい内容、このうえない。
もっとも不満の最大の原因は、カトの露出不足につきる。最後までまったく脱がずしまいだけに、そんなのってありー、とただただ唖然。せめてもの救いはベスト・コスチュームを受賞するＤ’ボディーズのステージにおける衣装で、横に穴のあいたラメの赤い光沢ピタパンにラメのブラというかっこう。ピタッと下半身にフィットする素材がつくるラインに視線が釘づけ。ただしカトがヘソピーをしていてガックリ。カトったら、愛してるのに、そんなものつけちゃダメよ、と声をだしたくなる。いずれにしてもジョンがジェフのシャワーをのぞくシーンが二度もあるのだから、カトのシャワーもほしかったわけで、相当なる駄作と評価して間違いない。
カト・ファンの本音として…
