ＶＯＬＴＡ
　
04年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ
監督：ウェン・Ｖ・デラマス
主演：アイアイ・デラス・アラス
　　　 ジーン・ガルシア
　　　 ディーテル・オカンポ
　　　 オネミグ・ボンドク
　　　 ボビー・アンドルーズ
　　　 ボーイ・アブンダ
　　　 ジュスティン・クユガン
　　　 ユージン・ドミンゴ
　またも『ＤＡＲＮＡ』もどきか、と企画からイヤになる。途中でシーンの転換にコミックの誌面をつかったり、対決をアニメーションでみせたりするアイディアが盛りこまれ、レーモンド・ジャムゾンとフランシス・パションのキャラクター・クリエーションがコミックなのかどうかは、不勉強で不明。
　それにしてもオリジナリティーが不足なことよ。
　冒頭の『スター・ウォーズ』ふう流しタイトルによるナレーション原稿や、雷にうたれて電流人間となったモレン・ギセ演じる少女がハイ・スクールのダンス・パーティーを火災にする『キャリー』のいただきは、あくまでパロディーだから笑えるところ。少女が成長でアイアイ・デラス・アラスが演じ、再び雷によるいったん死亡後の復活で近所の連中が予言者とあがめると、電流をビリビリっと発して会場をだいなしは、いかにもカトリック国らしいギャグ。
　でもボーイ・アブンダ演じる父の霊から正義の力をさずけられ、アイアイがヴォルタに変身のあとが相変わらずの『スーパーマン』まねっこごっこで冴えない。しかも対決の相手がジーン・ガルシア演じる携帯電話のビジネス展開案を嘲笑され、怒りで携帯の通信機能によって悪の制覇をもくろむ女性で、ＣＧ合成の巨大携帯マンが登場。電話機からガチャッ、ガチャッと手や脚がでてきての変身は、明らかに日本の戦隊もののいただき。小人のタレントであるムラが演じるジーンの仲間とアイアイがライト・サーベルで戦うのは、まったく『スター・ウォーズ』そのまま。ヴォルタから電源のパワーを抜きとろうと狙ったジーンが、アイアイとそれぞれのボックスに入ってエネルギー交換のセットが、どこか『ザ・フライ』でみたものを連想させる。ボビー・アンドルーズとオネミグ・ボンドク演じるジーンの部下の変造怪人がゴキブリのデザインで、直接、関係ないだろうが、こんなのを劇場版アニメ『Ｄｒ．ＳＬＵＭＰ　ドクタースランプ』でみたような。ジーンが乗る透明のジェットや、アイアイが爆弾を飲みこんで腹の中で爆発をおさめるＣＧも同様に、すべてが以前にあった印象の表現ばかり。
　模倣に終始では評価の対象にならないぞ、といいたくなる。
　一応、ヘーゼル・メンドーサ演じるアイアイの子ども時代にイザ・ヤネザ演じる母が身代わりに落雷で亡くなり、電流をうまく操れないアイアイがジュスティン・クユガン演じる弟に大やけどをさせ、携帯電話の引ったくりにあったポーリーン・ルナ演じる妹を感電で意識不明の入院へ追いこむと、ジュスティンが家をでていき、アイアイが悩んでボーイにパワーを奪ってくれと頼むドラマを含むながら、マジっぽさがコメディーとうまくなじんでいない。ディーテル・オカンポ演じる弁護士とアイアイのロマンスは、アイアイがブスだけに説得力を欠く。など、メル・メンドーサ・デル・ロサリオとアルテミオ・Ｃ・アバド・ジュニアの脚本がイマイチ。ユージン・ドミンゴ演じるアイアイの仕事仲間のうるさいオバサンぶりと、チョコレイト・ナッツ演じるその相棒、および怪人の一人がオカマなのがおかしいうえ、病院で変身のとき、アイアイがノノン・デ・アンドレス演じる患者を再生中の心臓電気ショック装置を借りるのが愉快、と細部には買えるギャグがみられるも、人気のアイアイのずっこけがパターンといえ、意外性のプラスがほしかった。とにかく電流を反射させるだけというジーンと決闘のシメが安易で、ウェン・Ｖ・デラマスの演出にがっくり。
　最初から期待はしてなかったものの、やっぱり期待はずれ。
　ただしジーンのうっとりするような魅力は、ただものでない。悪の構想をねるアジトで黒いレザーのピタパンが理想的なヒップラインをつくり、全身黒づくめのボディー・スーツになってからは、まさに大人の女性の色気がムンムン。
　ジーンのプロポーションの誘惑が、映画のすべてだったようだ。
　ほかに女優陣では、ポーリーンが白いジャージ姿でちょっとそそる。アイアイがダンス・コンテストのＴＶ番組に出演する司会役にはミッキー・フェリオルスがゲスト出演。クレジットにはサンダラ・パクの名前が読めるも、どこにいるのかわからなかった。
　あと、映画監督であるローレンティ・ジョギも出演のようだ。
　なお、アイアイが空を飛んでクローディン・バレートとピオロ・パスクアルによる『ＭＩＬＡＮ』のラスト・シーンをながめるのは、同じスター・シネマの作品ゆえん。携帯マンがＶＩＶＡホット・ベーブスの『ＢＵＬＡＫＬＡＫ』を踊り、この曲のヒットぶりをうかがわせる。アイアイが助ける大統領を演じるのがエディー・ヒル演じる男性な点は、現在、フィリピンの大統領は女性じゃなかったっけ、といういぶかりを残した。