（ヴィーナス 美の女神）
01年：アトランティック・フィルムズ
監督：エスメラルド・“ビン”・サントス
主演：アヤ・メデル
カトリナ・パウラ
フランコ・ゲレノ
ジェス・サンチェス
アレン・ディゾン
パウロ・リヴェロ
オデット・カーン
ハニー・ブランカ
ラモン・クリストファー
ロサリンダ・ロサル
サンドラ・アモール
アヤ・メデルの主演作となると全部みなきゃ、と勝手に決めているのだが、こういう箸にも棒にもかからない作品にぶつかったときほど、むなしいものははい。
まず画面の汚さが不快で、おそらく低予算だからネガが16㎜なのだろうが、だったら撮影技術でカヴァーしろよ、と思うのだが… その撮影はといえば、ピンボケ・カットがある始末で、画面の編集がヘタなばかりでなく、音がブツブツ切れてサウンドの編集も悪く、基本的なところで落第点。ジョン・ウィリアムズの『遥かなる大地へ』の音楽を雰囲気も考えずに流したり、センスの悪さにもあきれるのみ。
物語の構成はムチャクチャに近い。
セクシーであるために男たちにからまれ、夫を誘惑したとオデット・カーン演じるオバサンに追いだされて、アヤ演じる主人公がマニラから田舎へと帰ってくるのだが、そこは麻薬取り引きの舞台になっている。フランク・ゲレノ演じる神父が組織と戦っているが、実はこの神父がアヤの父で、売春婦であるハニー・ブランカ演じる母の元恋人。となれば、いくらでもドラマが広がりそうなものなのに、本当にマジメに考えたのか、と疑いたくなるほどに支離滅裂で分裂ダンゴの串刺し状態。
夫に買春されたロサリンダ・ロサル演じる妻に母が殺され、アヤが復讐でロサリンダを殺す。売春婦で生きる決心をしたアヤが、客をどんどんとる。それで組織のボスにも抱かれる。隣りに住んでいる若い夫をアヤが誘惑して、カトリナ・パウラ演じるその妻が自殺する。といったエピソードが、はたしてつながっているのやら、いないのやら。サンドラ・アモール（？）演じる妻を組織にレイプで殺され、娘を人質にとられて神父を誘いだしてしまうも、最後は組織のボスをやっつけて娘を亡くすラモン・クリストファー演じる捜査官のエピソードもうまくからんでこない。それでクライマックスになってもまったく盛りあがらず、殺された神父をみてアヤが泣くシーンなど、どっちらけ。
神父は父親なんだから、アヤの売春行為に、どうして何もしなかったわけ、と匙投げ状態。
障害者のスリや、海岸の狂女など、わけのわからない人物が登場して、これほどまでに人間が描けないというのは、マーク・シートの試験で０点をとるのと同じくらい、かえって難しいんじゃないかとも思えるほど。かつて石井聰亙の『爆裂都市 Ｂｕｒｓｔ Ｃｉｔｙ』や長崎俊一の『九月の冗談クラブバンド』をみたとき、フィルムのクズをつなげばこうなるんじゃないか、との腹立たしさを覚えたものだが、それらと変わらないムカムカ感が残ってくる。まあ石井聰亙も長崎俊一も、その後まずまずの作品を演出しているから、エスメラルド・“ビン”・サントス監督もいずれ納得のいく仕事をしてくれるに違いない、と希望のかけらでもみいだしたい。
それと半ポルノのような狙いがあるのだろうが、せっかくアヤが出演しているのに、信じられないくらい中途半端。オデットにからまれたり、ロサリンドと格闘したりするところがオッパイのみえる寸前でとめてあるのはいいにしても、何度かあるセックス・シーンで乳首が隠れたままなのは、ちょっとサーヴィスが足りない。ラストで意味なくシャツを脱ぐカットまで、迫力のオッパイのアップなのに、乳首のところへ手をあてていて、結局、露出のないままで終わり。カトリナも上半身ハダカになるが、乳首を隠していて、そういう方針の演出なのかとも思うのだが、ボスの女に扮する女優はオッパイもお尻も丸だしだし、ハニーとロサリンダは格闘するときに、とくにハニーなど熟女なのにオッパイがポロリだし、サンドラは死んでいるカットで乳首をだしているし、で堂々とみせちゃっている。ロサリンダなど必然性なくスリップを着たまま水あびするシーンがあって、貼りついたスリップから乳房やお尻が挑発的に浮かびあがって興奮ものだけに、脇はよくて、アヤとカトリナというスターだけもったいぶったのには、契約上の理由でもあるのかと疑いたくなる。
エンド・タイトルのバックで、ホット・パンツで踊るアヤのイメージ映像に、セクシー場面集が編集されているから、アヤをアイドル的に使用したボールド映画だとは推測できるが、これじゃアヤの無駄遣いだ。
ファンとして怒りプンプン。
それでも母の売春セックスをみてもだえるときのハイレグ・パンティーや、組織に拉致されるときのピタパン、ボスの前でプライヴェート・ダンスするときの下着姿は悩殺もので、とくにダンスでの浮きあがるヒップの形は絶品。
全裸でなくても満足させてくれるから、アヤの魅力は格別なわけで、長所のない作品の、せめてもの救いといえよう。
余談ながら、ハニーが客をとるところで二千ペソ払っているのには、田舎町のショートの、それも熟女相手なだけに「たけー！」と驚いてしまった。
