12年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：カティー・ガルシア・モリナ
主演：ジョン・ロイド・クルース
エンジェル・ロクシン
エドガー・モルティス
テッチー・アグバヤニ
エドガー・アラン・グスマン
イアン・デ・レオン
Ｋ・ブロサス
ブーム・ラブルスカ
パトリック・ガルシア
ジョン・ロイド・クルースとエンジェル・ロクシンの共演によるロマンスもので、フィリピンの観客は本当にこういうラヴ・コメディーが好き。実際、レーティングがＲにもかかわらず、一億五千万ペソをこえる興行収入をあげている。それにあわせてか、ヒット狙いの商業作ゆえ、フアン・ミゲル・セヴィーリアのありきたりな脚本のもと、表面的な絵づくりばかりに気をはらうカティー・ガルシア・モリナの演出で、ストレートないいかたをすればくだらない。
歯医者のマッキー（ジョン・ロイド・クルース）は休暇ででかけたビーチで美女と一夜をともにするも、朝に美女が姿を消す。新たなキャリアにと歯医者を週末に限定し、新聞社の記者を目ざす。その訓練期間のコーチ役に指名の敏腕記者が、いつかの美女のセス（エンジェル・ロクシン）。マッキーがセスを口説きつつ、セスの指導で記者として認められる。たまたま家族にセスを紹介のタイミングで前の恋人のイヤ（アンディ・マンザノ）が通りかかって家族がハシャぎ、セスが嫉妬をおぼえる。かえってセスが自分に好意があると嬉しさを感じ、マッキーがセスの家を訪れる。しばらくは交際を楽しむふたりだったが、かねてよりセスが希望のシンガポールの特派員に駐在が決まる。自らの落ちこみとセスへの配慮でマッキーが冷たい態度をとり、セスが五年前の失恋を告白する。シンガポールに住んでいたセスは建築家志望の恋人がセブに仕事をみつけ、すべてのキャリアや友人を捨てて一緒に移住。そこで事故にあって立てない苦しみのとき、恋人が自分を放りだしてニューヨークのビジネスを選んだ。そのために恋愛不信におちったという。マッキーが著名な建築家の取材に向かい、相手のヴィンス（パトリック・ガルシア）がセスの元恋人と判明。まったくセスに謝罪の気持ちがないとわかり、とっさにマッキーがキレる。
とにかく展開に偶然が多く、新聞社でマッキーがセスと再会程度はよいも、セスとマッキーの家族が同席の場にイヤが遭遇や、セスの過去を聞いた直後にヴィンスのインタビューがマッキーにまいこむなど、ご都合主義の強引さが目だつ。
現実へのあまい対応がバカっぽく、マッキーがセスの気を引こうとふるまうばかりで、さほど努力のさまがうかがえず、いったん記事を変名にされる屈辱があるとはいえ、ライターの職業をなめてるんじゃないかのごとくうつる。マッキーが家族をセスに紹介が休日でなく、昼休みのあたりも、マニラの新聞社はそんなにお気楽なのと皮肉がおきる。マッキーがヴィンスへ暴力は暗示のみで未遂っぽいながら、理由のいかんにかかわらず、仕事中に取材対象へ無礼な行為にペナルティーがゼロのわけないはず。ちなみに新聞社は実在の“マニラ・ビューリティン”で、ライフ・スタイル部門の編集チーフ（メル・キムラ）のコミカルな解説をカメラマン志望のポン（ヒュブス・アサルコン）とマッキーが聞くバックで印刷の輪転機は本物だろう。編集室はセットに違いなく、マッキーが執筆のセスを称賛の記事が載る設定に、ありえないフィクションと割りきるよりも“マニラ・ビューリティン”は低レヴェルな新聞と嘲笑を誘う。
意図的なお軽さでも、リアリティーが薄すぎ。
多少とも興味を呼ぶポイントをあげれば、マッキーがいわゆるバルカダと暮らし、男友だちのケルヴィン（エドガー・アラン・グスマン）とイペ（ブーム・ラブルスカ）に男装のニュートラルな女性のブッチ（パニン）がいるおかしさや、マッキーの父のペドロ（エドガー・モルティス）が料理のうまい影響をうけ、マッキーがバルカダの三人やセスにごちそうのようすや、セスの母（テッチー・アグバヤニ）が男にだらしなく、いつの間にか若いジェリー（アルヴィン・フォルトゥナ）を同居させるも、失意のセスをやさしくなぐさめるあたたかさや、セスの兄のデューク（イアン・デ・レオン）がカメラマンになりたいのにカメラをもたず、家でゴロゴロの怠けものぶりや、荒れたセスがタバコを吸って、いかにタバコが低能なアイテムかわかることや、マッキーが途中でギターを弾いて歌い、ラストでケルヴィンがギターを借りて弾くのを伴奏に、セスがバルカダたちの応援でマッキーに歌ってフィリピンでおなじみのガールフレンドへ歌で求婚の逆スタイルが登場の脇の要素くらい。
ただし、いずれの人物もキャラクターが単純すぎ。
ちなみに主題歌はギターの歌でなく、かつて『００７／消されたライセンス』の挿入歌だった“イフ・ユー・アスクト・ミー・トゥ”のフィリピン版アレンジになる。
前半に何度もセックス描写を盛りこみが個人的には注目だが、こちらもやや不満が残る。いきなり冒頭の愛撫のシーンでエンジェル・ロクシンが黒い水着にスケスケのシャツをはおるのに興奮をまねき、車の中で愛撫は黒いスカートのお尻を突きだすも、ベッドでセックス終わりにおきあがるハダカの背中はふきかえに思える。バルカダの三人があきれるテキーラをなめての猛烈なセックスもでてくるが、しょせんエンジェル・ロクシンに肝心の露出がないと明らかだけにセクシーさ減退で、ファッショナブルな撮りかたがむなしいばかり。むしろ室内でＹシャツから脚がのび、はだけた胸元にブラのちらつきや、ベッドでシーツにくるまって横たわりもいいが、後半の下半身にフィットのジーンズで記事の載ったマッキーに祝福で飛びつく抱きあいにはじまり、同僚のヴィヴォラ（カイ・ブロサス）と話す屋上でや、過去の告白のあとに立ち去るとき、社内を闊歩のとき、マッキーがヴィンスをぶったと知った驚きで近よるとき、マッキーが愛を叫ぶベランダで並ぶときなどでのお尻の形と浮きでるラインがそそる。ビーチの朝にマッキーが全裸でおきあがり、ボディーにシーツを巻いてのうろつきはメイキングのＮＧショットで一般人のビキニの女性がいる中で半ケツがみえて、もしどこかでエンジェルにも半ケツの露出があれば発射間違いなしだったのにと不平がこぼれる。
ほかの女優ではテッチー・アグバヤニに肥満がうかがえ、マッキーの母親役のメリッサ・メンデスは、相変わらずのちょっとキュートな熟女。マッキーの妹役の三名は本当に姉妹だろうが、ジョアナ役のパトリシャ・マルティネス、ルーシー役のダナ・マルティネス、マッテア役のダニエーリエ・マルティネスともにデブ。Ｋ・ブロサスは大柄かつ太めで、容貌もタイプをはずれ、ジーンズがイマイチ。アンディ・マンザノはストライク・ゾーンを広げればかわいい。見習いのマッキーが失敗し、セスがコメントをえるのに成功のスーパー・モデル役のイサベル・デ・レオンは、確かに長身でモデルふうながら、顔が美人に遠い。バルカダたちの手配でマッキーをトイレで誘惑のポーラ役は女優名が不明で、やはり赤いドレスを着た長身だが、いささか顔がファニーかな。
