ＵＮＡ　ＫＡＮＧ　ＮＡＧＩＮＧ　ＡＫＩＮ
（最初にあなたは私のものだった）
　
91年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ローリス・ギリエン
主演：シャーロン・コネータ
　　　 ガビー・コンセプション
　　　 ドーン・スレータ
　　　 チャリト・ソリス
　　　 エディー・グチェレス
　　　 マイケル・デ・メサ
　　　 アルミダ・シギオン・レイナ
　　　 パトリック・グスマン
　ヘレン・メリズのポギ・コミクスをもとにオルランド・Ｒ・ナドレスが脚色で、いかにもとってつけたようなドラマティックさをベースに敷くフィクションになる。
　シャーロン・コネータとガビー・コンセションのコンビにドーン・スレータを加えたスター企画。
　ガビー演じる大会社の御曹子がヘリコプターで移動中にスタッフから強盗に合い、格闘のすえに墜落を起こす。命はとりとめたものの記憶喪失に陥り、偶然知り合ったパラワンの田舎で暮らすエディー・グチェレス演じる学者の家に住む。シャーロン演じるエディーの娘が婚約者のパイロットを事故で失った記憶から解放されないのも手伝い、いかにも二枚目のガビーを嫌う。でも次第に心を許し合い、やがては結婚を経て出産へ。ちょうど赤ん坊が生まれる瞬間、医者を呼びに行ったガビーのバスが転落でショックから記憶を取り戻す。元の会社へ復帰でドーン演じる婚約者と結婚。カビーが別階級に属する大金持ちとわかったため、ガビーへの愛を抑えきれないシャーロンに対してエディーが「死んだと思うんだ」と説き伏せる。
　なにがワザとらしいといって、シャーロンが将来を期待される画家で、マイケル・デ・メサ演じるオカマの画商がちょくちょくシャーロン宅のある島へやってくる。マイケルがドーンの友人でシャーロンの絵をドーンの部屋に飾り、作者の説明をする。たまたまガビーが不在のとき、ドーンをシャーロンのところへ連れてきて「婚約者が事故で行方不明なの」なんて話しをかわす。あとでシャーロンがドーンの写真をみせてガビーが「美人だ」というのに、まったく記憶がない。ドーンのもとへ戻ったガビーがシャーロンの絵がかけてあるのに気がつき、ドーンに作者のことを聞くのに、まったく記憶がない。
　安っぽいシチュエーションだなあ、とあきれる。
　タイミングよくエディーが心臓発作で亡くなるのも、ご都合主義な進めかた。
　ガビーとドーンの結婚式へシャーロンがきて、一緒に写真撮影となり、たった一人だけ真相を知るシャーロンの心理はそこそこ描けたかな。
　シャーロンがマニラへでてからの後半は、アルミダ・シギオン・レイナ演じるガビーの母がシャーロンへ息子の肖像画を依頼し、シャーロンがガビーをモデルに起用。ガビーへの気持ちに苦しむシャーロンに、チャリト・ソリス演じる伯母が「我慢するのよ」と諭す。自分の子と知らずに赤ん坊をあやすガビーが誕生日を聞いて「事故で記憶がよみがえった日と同じだ」と驚く。などの状況を置きながら、エスカレーターをすべり落ちてドーンが流産。ガビーが仕事で女性と会うのをみてもヤキモチの嫉妬深いドーンの性格に嫌気がさし、ガビーがシャーロンへ迫る。アリシア・アロンソ演じる知人にシャーロンは赤ん坊の面倒をみてもらっていたのだが、パトリック・グスマン演じるアリシアの甥の建築家がシャーロンに恋し、あっさりフラれたので、ドーンにガビーとシャーロンの関係をチクる。ドーンが荒れたため、シャーロンが島へ帰り、ガビーが追ってくる。さらにドーンも現われ、子どもに銃を向けるとガビーがなだめる。ついにシャーロンが封印を決めていた結婚式の写真やガビーの絵をだして、いっさいを告白。
　ガビーが空白期間の記憶を取り戻さないままに、シャーロンと結ばれるシメがユニークかな。
　とにかくローリス・ギリエンの演出はシャーロンとガビーが最初に会うところからして目線のそらしかたなどがきごちなかったが、クライマックスにいたってドーンが絶叫に終始のうえ、シャーロンまでもが絶叫型演技に変わり、バカバカしさにあきれを生じさせる。いくら極端な虚構であっても、もうちょっと考えてほしいなあ。
　ガビーが山岳民族に救われて薬草の治療をうけるあたりが興味深く、半分くらいの舞台になるパワランの南端に位置するブグスク島の海が透きとおるように紺碧なのが美しいこともあり、けっこう楽しめる要素を含むのだが、それはローリスの力量外のこと。
　くだらない内容だ。
　素材がしょうもないだけに、こんなものかもしれない。
　それでシャーロンとドーンの魅力はどうかだと、全身にパレオを巻いたシャーロンがガビーへ迫るとき、パレオをほどくんじゃないかとのドキドキを呼ぶながら、海で波と戯れるのもパレオのままで残念。シャーロンの水着をおがみたかったじゃないか。ガビーと服を脱がずにもだえて寝ころぶ愛撫も、もっとピチピチの衣装だったらと悔やまれる。シャーロンよりも大好きなドーンはガビーとの初夜など、二度のベッドでシャツやスリップまで。せめてブラをみせてくれれば興奮したものを。
　とイマイチな結果で、ほとんど満足できない。
　ドーンを愛してるのに。
　マハール・キタ、ドーン。
　まあ、エディー宅の家政婦を演じたコメディエンヌのジンキー・オダが、不自然にズッコケない控え目さは買える。
　なお、現存プリントは冒頭部にほんの少しの欠落がある。