ＴＵＴＯＫ
（頂上）
　
09年：ＣＢＣプロダクションズ
監督：ホヴェン・タン
主演：エミリオ・ガルシア
　　　 アレン・ディゾン
　　　 ブーツ・アンソン・ロア
　　　 ロイド・サマルティノ
　　　 アンドレア・デル・ロサリオ
　　　 イアン・デ・レオン
　　　 ヴィクトル・アリワラス
　　　 レーモンド・カブラル
　テロリズム、マスコミの姿勢、人間の虚栄心など、多角的に風刺のドラマで、ホモをからめるのがフィリピンのディジタル作っぽく、ホヴェン・タンにしては少人数にしぼった構成ながら、いずれの要素も浅い内容にとどまる。
　山岳地帯にひそむテロリストのカ・ロラン（イアン・デ・レオン）が人質を殺害の映像をマスコミに送りつけ、ＴＶ局の編成役員のデルガド（ロイド・サマルティノ）が話題づくりに独占取材を考える。野心のあるレポーターのロマン（エミリオ・ガルシア）が友人のヴィデオ・カメラマンのサルディー（アレン・ディゾン）と取材を引き受け、カ・ロランの一味が潜む山へ入る。そこでホモのレイプで犯されるうえ、カ・ロランがサルディーにロマンの殺害を命じる。
　妻のオーロラ（アンドレア・デル・ロサリオ）と幼い息子とロマンが暮らし、今のままじゃラチがあかないと危険な仕事を決めるが、心配のオーロラが反対。サルディーの母（ブーツ・アンソン・ロア）もとめるながら、ふたりが山へ出発には、名をあげる野望とともに、デルガドの強制に近い権力の行使と、収入的な心配が横たわる。
　まずデルガドが暴君も同然で、スタッフを子分のごとく使い、ロマンとサルディーの安全も無視でカ・ロランに電話を入れて挑発が、あまりにも極端なキャラクターになる。マスメディアの批判というよりも、個人の人間性の欠落に思える。ＴＶ局にスタッフが四名しかいないあたりは、寒々とした印象でウソっぽい。
　一方のカ・ロランも暴力性が際だち、すぐに銃を振りまわし、とても主義主張をもつテロリストのイメージにほど遠いもの。メンバーのリト（レーモンド・カブラル）が逃げだして軍隊にタレこみ、襲撃であっという間に全滅がオマヌケで、だったらさっさと退治しておけばよかったじゃないかとシラける。サルディーがロマンに銃を向け、カ・ロランの殺せの命令にサルディーが撃つ前に軍隊が間に合うかはサスペンスが足らず、ホヴェン・タンの演出が弱い。
　女性レポーター（ニコル・マルティネス）にデルガドが発狂のサルディーの取材を強いて、いわゆる無意識に人権を傷つけるメディアの非人間性と営利主義でなく、ただのトップがゆがんだ人物だったとの内容で、本当に浅い。
　山の中で焚き火にかがんでリトが祈り、テロリストでも宗教心をひめ、残虐に徹しきれないのと、サルディーの母が自宅で祈り、マリア像が落ちてまさかの予感で、サルディーがオカマを掘られる展開に、キリスト教の浸透による価値基準がうかがえる。
　テロリストたちがホモとの設定は、いかにも映画っぽいフィクションといえ、リトが木陰で全裸になり、別のメンバーと立位で愛撫をロマンとサルディーが目撃の際にレーモンド・カブラルのチンポとお尻がみえる。ロマンがカ・ロランに立位でアナル・セックスのレイプをサルディーに撮影させたり、サルディーが四つんばいでアヌスに挿入されるホモ・レイプは着衣のままだが、頭に異常をきたしたサルディーがマニラへ帰ってホモの男にお尻の穴を貸してもマグロなとき、立位でお尻を露出の男とトタンの塀に寄りかかってホモ・セックスで、錆びたトタンの裂け目にアレン・ディゾンのチンポが真正面にみえる。
　女優の魅力のほうがどうかだと、アンドレア・デル・ロサリオは太ったのが明らかで、もう脱がないあたりが残念。シャワーを浴びるショットが乳房の上で切れて乳首がでず、バスタオルを巻いてベッドで眠るロマンに迫るも、疲れて反応なしに不満なシーンにヌードがほしかった。ニコル・マルティネスはデルガドのコーヒーにツバを混ぜることでデルガドへの嫌悪をあらわすが、デルガドと寝て仕事をとる狡猾な人物像かと思いきや、そうでもなく、体を張ったほうがドラマに深みを与えただろうにと惜しい。やや太めで容貌がイマイチながら、そそる色気があり、ライン・プロデューサーのロデル・フェルナンドが友人なので、今度、モデルに使えるかとたずねたくなる。
　まあ、撮影のロミー・ヴィトゥグがディジタルの特性をいかした構図で画面をつくるも、大道具や小道具の少なさによるチープ感をまぬがれず、低予算の限界かもしれない。