（墓守）
00年：ＭＭＧフィルムズ
監督：ローランド・レデスマ
主演：ロナルド・ガン・レデスマ
エフレン・レイエス
アンジェラ・ヴェレス
レイ・ＰＪ・アベリアーナ
ロミー・ディアス
リナ・レイエス
コンラッド・ポー
ディンド・アロヨ
レーイ・ロルダン
ザンドロ・ザモラ
ホセ・ロムロ
エルニー・オルテガ
エルニー・サラテ
ジェス・サンチェス
謎の殺し屋ものは犯罪アクションの一つのジャンルだが、『ゴルゴ13』のように現実の国際情勢などを踏まえた背景がリアルな作品はまれである。ここでも架空の設定により、ちょっとアホらしい物語が展開する。
ロナルド・ガン・レデスマ演じる“墓守”と呼ばれる人物が主人公で、表向きはビジネス・マンを装っていて、なかなか正体を現さないのが焦点。と思ったのに、案外簡単にバレてしまうし、アンジェラ・ヴェレス演じる看護婦との関係も、スーパーマンと恋人のような秘密を明かせないといった展開にはならない。それに主人公がよくケンカを売られ、パンパンパンと相手をのしてしまうのだから、岡本喜八が『殺人狂時代』で描いたようなダサくバケきるというのはフィリピン人には無理というか、感性に合わないのではないか。
映画はロミー・ディアス演じる妙な殺し屋が日本刀などで対戦を繰り返していくシーンがあり、けっこう殺陣がしっかりしているのには驚くが、主人公へ決闘を挑むなど、何を描きたいのかよくわからない展開をしばらく続け、エフレン・レイエス演じる弱々しいフリをしていた組織の乗っ取りを狙う男が本性を現してきて本格的に動きだす。エフレンが後半にみるみる悪党づらになるのは演技力であり、メガネをかけたり、エプロンで料理をしたりと小道具をつかって多面性だそうとするも、あまり成功していないロナルドとの差はキャリアの違いだろうか、役者とスターの違いだろうか。
エフレンがロナルドに依頼してローランド・ダンテス演じる組織のボスを殺させるのだが、ロナルドの正体に気がつくや、今度はロナルドを襲撃してくることになる。ボス一味を始末するシーンでは、ロナルドが二挺拳銃でまんがティックに決めて、やはりフィリピン人は、こういうカッコいいのが好きなのだろう。
レイ・ＰＪ・アベリアーナ演じる貧民街の仲間や、リナ・レイエス演じるフィアンセとのエピソードもあるが、ストーリーをふくらませるにはいたっていない。リナは組織にかかわっている役どころながら、ケンカのシーンでのピチピチのパンツ姿がプロポーションのよさをうかがわせ、なかなかおいしそう。でも愛撫シーンは中途半端だし、扱いの軽いのが残念。
まあ、もっとも期待していたのはアンジェラとのカラミがどうなっているかで、自宅で看護するために住みこみでやってくるや、白衣からセクシーなホット・パンツに変わって、とても看護婦に思えないのがご愛嬌。ベッド・シーンではせっかくヌードになっているのに、よくみえない撮りかたをしているため、オイオイと不満をいいたくなる。翌朝に胸元の谷間がドキドキものの衣装でベッドに食事を運んでくるところは、さすがアンジェラとうっとりだが…
最大の見せ場はセックスの真っ最中にエフレンの手下たちが襲ってくるシーンで、アンジェラは全裸で敵と格闘する。これはもう文句のない興奮なのに、よく目を凝らしてみれば、乳首にはニプレスをしているし、陰毛のあたりは前貼りをしている。ちょっとガッカリなものの、ほとんど素っ裸も同然だし、やっぱりビンビンものだと納得。
プールに逃げたロナルドとアンジェラを撃つシーンでは、水中にもぐっていく弾丸を写すというアイディアが盛りこまれているも、水面にガバッとでてきた二人が相手を撃ち殺すのは無理があるんじゃないか。ロナルドはいいにして、アンジェラは看護婦だし、そんなに射撃がうまいわけないだろうと思うが、これもカッコよく決まればよし、ということなのか。
バズーカで家をふっ飛ばすシーンは、はりぼてバレバレである。
結局、今度はロナルドがエフレンの本拠へ乗りこんできて、映画はクライマックスに。たった一人で大勢を相手にするとは『コマンドー』のアーノルド・シュワルツェネッガーみたいなヤツと思うが、簡単にザコどもをやっつけるのだからご都合主義。しかもエフレンとの一騎打ちで肉弾戦になるや、シュワルツェネッガーとは大違いでひ弱そうな体形のロナルドは負けちゃうぞと感じさせ、案の定、投げ飛ばされるも、倒れた先の横に銃があって、それを撃って終るのだから、バカにしてるんじゃないか、とあきれるのみ。
ラストの神父姿で現れるロナルドとアンジェラの教会での再会まで、コメディーではないのに、正直なところ笑いを誘発するほどの低レヴェル。前半のスポーツ・カーから四駆に乗りかえるところのダラダラ長い編集も気になって、駄作の見本みたいな作品だ。
