（ＥＶＥＬＹＮ， ＭＹＲＮＡ， ＆ ＭＡＲＧＩＥ）
(92)年：グッド・ハーヴェスト
監督：ペケ・ガリアーガ、ロール・レイエス、マリオ・Ｊ・デロス・レイエス
主演：ディーナ・ボネヴィー
ガビー・コンセプション
エディー・ガルシア
リチャード・ゴメス
ルッファ・グチェレス
マリセル・ラクサ
ヒルダ・コロネル
アルマ・モレノ
ロニー・リケッツ
ミゲル・ロドリゲス
チャリト・ソリス
ロルナ・トレンティノ
三名の女性をめぐるオムニバスで、異例の豪華なキャストになっている。
エピソードⅠ ＥＶＥＬＹＮ
ロルナ・トレンティノ演じるダンサーのエヴリンが、ガビー・コンセプション演じるシンジケートの男からカネをわたされ、日本へいく仕事の話をうける。ロルナにはルッファ・グチェレス演じる知恵遅れの妹がいて、ルッファの治療費をえるため、怪しい連中とつき合う日々を送っている。ガビーはマリセル・ラクサ演じる恋人とすごすのに、ロルナへほの字になり、ものにしたくてしょうがない。ジェームズ・ティティカカ演じる近所の若者がルッファの美人ぶりに引かれ、いつも見守っていたのだが、野郎どもがルッファの水浴びをのぞこうとしたをとめてケンカのうえ、ナイフで刺される。それを目の当たりにルッファがショックで亡くなり、ロルナが生きる希望を失う。日本いきを承諾して、もう帰ってこなかったとのストーリー。
ペケ・ガリアーガ、ロール・レイエス、ドン・エスクデロの脚本をペケとロールのコンビが監督で、無難にまとまった小品。
まずは開巻とともに男かと思えるようなショート・ヘアーのダンサーが踊り、引き締まった肉体のお尻にハイレグのパンティーが食いこむステージを繰り広げる。ロルナが現われ、アメリカ人の客にまじってガビーがながめる中、黒いハイレグ・パンティーのボディー・スーツでお尻を突きだしてフリフリや、ワンワンのポーズで挑発する。驚くほど魅惑のプロポーションにうっとりし、早くもロルナに悩殺状態を招く。
素晴らしいじゃないか。
美貌のルッファは脚を洗ったり、服のまま頭から水をかけたりするが、いささか露出不足。マリセルはプールで泳ぐのをガビーが沈める意地悪のシーンにおいて、プール・サイドへあがらないので濡れた水着姿をおがめずじまい。ロルナのスタイルくっきりのフェロモンに負けている。
個人的にはロルナ万歳、といった印象に尽きる。
エピソードⅡ ＭＹＲＮＡ
ディーナ・ボネヴィー演じるミルナはあるミュージシャンの大ファンで、肉体関係をもち、子どもをはらんでいる。そのミュージシャンが日本へバンド演奏にでかけたまま連絡を絶ち、ヒステリックに荒れる。ディーナの一家はチャリト・ソリス演じる母にオペラ歌手を目指した過去があり、家庭内でオペラの練習会を開いている。エディー・ガルシア演じるクラシック音楽好きの父は、リチャード・ゴメス演じる息子にヴァイオリンの練習を押しつける。ディーナにもピアノの習得を迫ると、赤ん坊が生まれても相手の行方がわからず、絶望感のうえに、理解のない父母への当てつけもあって、ディーナが自らの両手を煮えたぎる熱湯に浸す。
ローランド・ティニオの脚本を、監督名のクレジットがないものの、おそらくペケとロールが演出したのだろう。不満を口にするディーナがバックのアリアに合わせ、絶叫に変わっていく表現におもしろさがあるが、かつて同様の手法をつかったヴィリー・フォルストの『たそがれの維納』にかなわない。広島、名古屋、大阪とディーナが電話をかけまくる剣幕が単細胞すぎるあたり、人間描写の説得力に弱く、イマイチな内容に終わっている。
服を脱がずにシャワーを浴びるのが狂気の暗示とはいえ、ディーナの肌が隠れている残念さも考慮すれば、次第点以下に思えてくる。
エピソードⅢ ＭＡＲＧＩＥ
アルマ・モレノ演じるマージーが、シモン・ソレル演じる幼い息子と幸福な暮らしにある。ミゲル・ロドリゲス演じる夫とも平穏だが、ヒルダ・コロネル演じる女性がアメリカから帰国して波が起きる。ワザとらしく偶然をよそおってヒルダがミゲルと再会し、かつて愛し合ったミゲルを挑発する。またロニー・リケッツ演じるジゴロを雇い、アルマの誘惑を頼む。ロニーが近づいてもアルマが無視なので、シモンを誘拐。アルマを呼びだしてセックスを求める。一方、ヒルダがシモンのもとへくると、シモンが病気で倒れ、ラクエル・ヴィリアヴィセンシオ演じる知り合いの女医にみせる。どうやらシモンはヒルダの子どもかもしれないとわかる。ロニーが仕事を楽しんだと残金をうけとらず、回復したシモンを連れてヒルダがアメリカへ戻ろうとするが、本気でアルマを愛したロニーの通報で警察が空港へ駆けつける。
ファニー・ガルシアの脚本が前二作と異なって明らかにストーリー・テリングを意識し、マリオ・Ｊ・デロス・レイエスが非日常のシチュエーション劇を語るものの、シモンが衰弱を示すのにヒルダがじっとながめ続けるなど、ヘンな行動が多くて違和感が残る。アルマとロニーの心理が変化するのをとらえるには、いささか表層的といわざるをえない。
アルマがブスっぽいのはいつものことながら、ジャージでジョギングを始めるヒルダのお尻をとらえ、太めだなあとあきれる点を基準に入れれば、女優の魅力もイマイチに思える。ヒルダがマニキュアやフェイシャル・エステで化粧するようすには興味を引かれるが…
結果、どのエピソードも浅いレヴェルに終わり、満足にはいたらない。短編ゆえのしょうがなさであり、オール・スターの顔見世作品と考えればこんなもの。
とにかくロルナのセクシーさだけは絶賛にあたいした。
