ＴＩＬＬ　Ｉ　ＭＥＴ　ＹＯＵ
　
06年：ＧＭＡフィルムズ／ＶＩＶＡフィルムズ
監督：マーク・Ａ・レイエス
主演：ロビン・パディーリア
　　 　レジーン・ヴェラスケス
　　 　エディー・ガルシア
　　 　クー・レデスマ
　　 　ジュニー・ガンボア
　　 　ルス・ヴァルデス
　　 　マイク・“ペクト”・ナクア
　ロビン・パディーリアとレジーン・ヴェラスケスが共演のラヴ・ロマンスで、大スターの顔合わせがマイナスに作用の見本みたいな作品。
　高齢のマヌエル（エディー・ガルシア）がオーナーの牧場につとめるガブリエル（ロビン・パディーリア）は雇い人たちからの人気が高く、マヌエルの信頼が厚い。突然にマヌエルが若い女性のルイサ（レジーン・ヴェラスケス）を連れてきて、結婚すると告げる。驚くガブリエルにマヌエルが牧場の生活に慣れるようにと不在の間、ルイサをあずける。上流出身をよそおうルイサに対し、ガブルエルがニセもののお嬢さまと感じ、財産目的でマヌエルに接近の正体を暴こうとふるまう。たくみにガブリエルの挑発をルイサがかわすうち、ふたりに愛が芽ばえる。マヌエルが戻り、ルイサの心の変化に気がつく。
　アネット・ゴソン・アブロガルのストーリーによるベネディクト・ミケの脚本の、さほど特徴のない話を、いかにマーク・Ａ・レイエスがロビンとレジーンの個性に合わせ、魅力を高めるかに焦点をおいて語るため、ファンにはいいだろうが、退屈このうえない。
　マーケットに赤いドレスで洗練された美人がきたとの騒ぎでガブリエルがルイサをみかけ、串刺しのバーベキューを下品に食うレジーンのバカっぽい演技がうまく、マヌエルのルイサを雇い人たちに紹介に、ガブリエルが直感で怪しいとにらむきっかけがよいも、ほとんどそこまで。いわゆるロビンのカッコをつけたがる庶民的なあんちゃんの像はエルマー・バーンスタインの『荒野の七人』のフレーズに似た音楽で馬に飛び乗り、ルイサのバギーと競争で落馬にはじまって、カラオケで騒ぎ、ルイサを助けようと反対に崖から落ちるなどであらわす。レジーンの下層育ちぶりは黒い乗馬服で高級趣味の馬術ふうに決めるや、乗馬服の上着を脱いでノー・スリーヴのシャツでバギーをかっ飛ばし、酒飲み対決で酔っ払うなどで示す。カラオケで歌えといわれてマイクをとると、人気歌手の見せ場かと思うも、ここは中途半端で肩すかし。崖を落下のガブリエルにルイサがキスは、普通程度の納得にとどまる。
　マーケットでおばちゃんのネリー（アウラ・ミハレス）がルイサに声をかけ、人違いだと振りきり、ルイサが少女時代に父が家族を捨ててでていき、母が亡くなった記憶を回想は、案外と情感をそそらない。とにかくマヌエルが帰る前後からだるさを伴い、海に向かってガブリエルが「ルイサを愛している」と叫べば、うしろにルイサがいて気まずい告白状態や、ウェディング・ドレスを広げてながめつつ、ルイサが夢を捨てる決断に主題歌を流すシーンがたるい印象を与える。マヌエルにルイサが指輪を返して去るのに、表面的なセンティメンタルさにくわえ、内面のドラマがほしい。
　ただし脇に評価したい部分が多く、ガブリエルの部下のティキョ（マイク・“ペクト”・ナクア）がずっこけでなく、キャラクターでコメディー・リリーフをはたす。長老のパデル（ジュニー・ガンボア）とおばちゃんのロレン（ルス・ヴァルデス）やマルタ（イダ・ヤネサ）がいて、みんな世話焼きで共同体をなす牧場のライフ・スタイルがほほえましい。ゲスト出演のクー・レデスマが演じるパシンがマーケットに店をもち、それを手伝う姪のマリマル（パトリシア・イスマエル）が小太りのねえちゃんで、ガブリエルを好きらしく、親切の押し売りにガブリエルが逃げるあたりもユーモラス。コロニアルふうの衣装でダンスのフィエスタがいきいきと労働者の楽しみを伝える。ルイサのウェディング・ドレスを制作で採寸のデザイナー（フラニー・ザモラ）がオカマなのや、少女時代のルイサが住む家が茅葺きの高床式にフィリピンがにじむ。
　とくにルイサが消える結末に対し、マヌエルが怒るでもなく、無言でガブリエルの肩をボンと叩く大人の対応がみごとで、地主制度が現在もあれこれと問題を引き起こすフィリピンだが、こんな領主のもとで働くのは幸福だなあと思わせる。
　いったんルイサと別れで幕がおり、ここで終わってもいいも、ハッピー・エンドのエピローグをおくのがスター企画。マヌエルが死亡でガブリエルが墓にもうで、ルイサを迎えにいく数年後、マイクを手に歌を披露のルイサが歌手になったようで、実はＳＭシティーのイヴェント・ステージでカラオケ付きマイクのセールス・レディーがウィットなセンスにあふれる。
　もっとも個人的に歌手のレジーンにときめくながら、女優のレジーンには魅惑度が乏しく、そこがイマイチの要素をなす。 水浴びの直後にガブリエルに裸をみられるシーンで、前向きのショットはタオルでオッパイを隠すが、うしろのショットは背中が露出し、左側の腰に刺青があってドッチラケ。だからウェディング・ドレスの採寸でバストの浮かぶ白いワンピース、飲酒合戦でバストがのぞく白いワンピース、トラクターの修理でバストの谷間が迫る緑のワンピース、ガブリエルと釣りでバストがセクシーなゼブラ柄のワンピース、ガブリエルと乗馬で破れが入ったジーンズ、焚き火の夜にガブリエルとキスでバストの切れこむワンピース、カラオケのマイクのセールスでバストが目だつ緑のシャツと披露も、さっぱり欲望の刺激がない。
　女優だとガブリエルの妹のヘーゼルを演じるジャッキー・ライスが驚くほどキュートな美人で、ヒップラインが視線を誘うベージュのピタパンにドキドキ。エピローグで恋人のブライアン（マーキー・シエロ）と結婚がわかるも、全編でもっとジャッキーをながめたかったなあとの思いが盛りあがる。本作の二年後に清純派を脱皮で雑誌に大胆なビキニを発表では、何度かお世話にあずかったが、これほどのかわいこちゃんだもんと興奮をかきたてる。
　なお、ガブリエルがパデルに「エンジンが壊れた」というトラクターにはＫＵＢＯＴＡと書かれ、さすが中古を日本から輸入のフィリピンらしいあつかい。日本国内ならクボタのクレームが必至に違いない。