ＴＥＳＴＩＧＯ
（目撃）
　
99/00年：リーガル・エンターテインメント
監督：フランシス・“ジュン”・ポサダス
主演：ゾーレン・レガスピ
　　　 デイジー・レイエス
　　　 ボブ・ソレル
　　 　エフレン・レイエス・ジュニア
　　　 ジムウェル・スティーヴンス
　　　 ルシタ・ソリアノ
　　 　メアン・ヴァルガス
　　 　ジャッキー・カスティリエホス
　　 　アレックス・ボラド
　双子ものサスペンスである。多くの映画で双子はストーリーの題材にされてきたが、自分と瓜二つの人間がいるということは、確かに面白い設定ではある。
　それでこの作品は、部分的によいところがあるものの、双子をうまく生かせたかという意味では、残念ながら失格といえるだろう。
　少年時代に水難事故によって、二人のうちの片方が行方不明になってしまうのが冒頭。大きくなってゾーレン・レガスピ演じるもう片方は、ルシタ・ソリアノ演じる母とマニラへでてきて、射撃場のインストラクターをしている。ある日、知り合いのジプニー運転手が殺される瞬間に居あわせ、目撃者となってしまう。
　ジムウェル・スティーヴンス演じるシンジケートのボスの息子をリーダーに、現金輸送車を襲う過程と、ゾーレンらが乗るジプニーの様子が平行して描かれ、逃走中のジムウェルの車とジプニーがぶつかるまでが、けっこう引きつける展開。なかなかフランシス・“ジュン”・ポサダスの演出がうまい。
　ジムウェルの似顔絵が描かれ、目撃の様子が伝えられるのだが、平気でマスコミがゾーレンらを顔だしでニュースにしているから、フィリピンでは安全とか保護の考えかたはないのか、とあきれてしまう。案の定、もう一人の目撃者が殺され、そうなることを事前に恐れて犯人を肯定していなかったゾーレンには、買収の手が伸びてくる。さすがにそれは許さず、しかもジャッキー・カスティレホス演じるもう一人の目撃者の妻への非人間的な仕打ちや、自らの家が襲撃されたことで、ついに裁判での証言を決心するまでを、またテンポよくみせてくれる。
　ジムウェルの父であるボブ・ソレル演じるジンジケートのボスから脅しをうけたために、目撃者保護プログラムによって守られることに。オイオイ、そんなものがあるなら、最初からしっかりガードしてやれよ、とまたあきれてしまう。
　ここからはちょっと感心しない展開。刑務所でジムウェルがオカマを掘られる光景が気持ち悪いが、これによって仮病をつかって、移送される過程で脱獄に成功。ちょうど同じときに死んだと思っていた兄弟が、故郷へやってくる。親切な夫婦に助けられて成長したのだが、ずっと記憶喪失だったものの、やっと自分が誰かわかって、訪ねてきたという設定。兄弟は勘違いされて、ジムウェルに暴行のすえに殺されてしまう。
　なんだ、双子といったって、これだけしか登場しないわけ。もっと複雑にからんできて、たとえば別人が目撃者と間違えられて訳もなく狙われることでサスペンスが走るといった、そういう内容じゃないわけ、とガックリ。
　川のほとりにある民家に隠れて暮らしていたゾーレンだが、まさか生きていたとは思わなかった兄弟と死体で再会し、ついにトサカにくる。自分たちに一生懸命になってくれて、今は愛を感じるようになったデイジー・レイエス演じる弁護士が誘拐されたこともあって、ジムウェルらが武器の不法輸入をする現場へと乗りこむ。
　あとはお決まりのドンパチ。
　ホント、なんでもっとシチュエーションをうまく活用できなかったんだろう、と残念というよりも、不思議になってしまう。
　またジムウェルの極悪非道ぶりが大げさで、ちょっと現実離れしているが、そこはフィクション。実際にこんな人物がいたら、さっさと死刑にすればいいわけで、被害者の人権よりも加害者の人権ばかり優先していると、アメリカ合衆国のように犯罪天国になっちゃうぞ、なんてことは別の話。
　そもそもはデイジーのファンだから、彼女の活躍を期待してみた作品ではある。弁護士で登場するからオッと思ったものの、ゾーレンの添えもの的な役にすぎず、かなり落胆。とくに誘拐されてからは、縛ってつるされるのだが、ハダカにひんむかれないまでも、せめて服をビリビリッと破られて、ブラぐらいにはならないことには。極悪のジムウェルだから、それくらいはするだろう、なんて感じるのだが。
　デイジー・ファンとしては、不満以外の何物でもない。
　あとジンウェルの愛人を演じたカラ・クリステルが、騎乗位でのセックスなどをみせてくれるのが、そこそこよろしい。
　生きていた兄弟のガール・フレンドを演じたメアン・ヴァルガスがなかなかかわいく、もっと大きな役でまたみてみたいと感じる。