ＴＥＭＰＴＡＴＩＯＮ　ＩＳＬＡＮＤ
　
80年：リーガル・フィルムズ
監督：ジョーイ・ゴシェンフィアオ
主演：ディーナ・ボネヴィー
　　　 アセニト・ブリオネス
　　　 ジェニファー・コルテス
　　　 バンビ・アランブロ
　　　 デボラー・サン
　　　 アルフィー・アニド
　　　 リッキー・ベルモンテ
　　　 ドミンゴ・サバド（アル・タンタイ）
　人間が生存するための基本要素を無視したサヴァイヴァルもので、アホらしさにイライラを招く。
　ミス・マニラ・サンシャイン・コンテストが開催され、ディーナ・ボネヴィー、アセニト・ブリオネス、ジェニファー・コルテス、バンビ・アランブロ演じるミス・ボディー・ビューティフル、ミス・フォトジェニック、ミス・フレンドシップ、ミス・タレントの四名のファイナリストが、主催者たちとクルーズ中に船が火事になり、無人島へ漂着する。
　燃えさかる炎と爆発の合成が、いささかちゃっちいのがご愛嬌。
　コンテストのスポンサーの一人であるジョナス・セバスチャン演じるオカマ、ストレートだけれどもジョナスのホモ相手をつとめるリッキー・ベルモンテ演じるカメラマン、ディーナへの片思いからクルーザーにもぐりこんでいたアルフィー・アニド演じる若者、アル・タンタイ演じるクルーザーのクルー、デボラー・サン演じる召使いのように扱われているジェニファーのメイドが一緒。島は砂丘のような場所で、まったく水がなければ、魚が採れなかったため、いっさい食糧もない設定。このうち食べものはともかく、水がないと人間は数日も生きていけないだろう。
　そんなのは小学生ですら知ってる常識。
　砂漠へ不時着してほんの少しの水でしのぐ期間を舞台にとるロバート・オルドリッチの『飛べ！フェニックス』では、肌がカラカラに乾いてヒビ割れを起こしていったし、漂流での飢餓から人肉を求めて殺人をおかす極限状況を描いた新藤兼人の『人間』でも、雨が降って水だけは十分に得ていたもの。
　ここでは最後まで全員の肌がみずみずしいばかりか、汗をかいているじゃないか。もう男の女のドロドロした愛欲劇をねちっこく繰り広げても、水がないのにケンカやセックスできる元気がでるわけないぞ、と全編ドッチラケ。三日目あたりから、なんでこの人たちはまだ生きてるのとの疑問に、ほとんど脚本のトト・ベラノ、監督のジョーイ・ゴシェンフィアオの小学生にも満たない低脳ぶりを痛感するばかり。ついにはカネ持ち気質のごう慢さから嫌われて仲間に入れなかったジョナスが亡くなり、その人肉を食う展開になって、食べものより先に飲みものだろう。アンドレ・カイヤットの『眼には眼を』でも「飢えより渇きでやられる」といっていた現実に対する放棄にもほどがある。
　というわけで狙いの衝撃はクソも起きず、水だけは得られるシチュエーションを盛りこめば、こうもバカにされなかったものを、生命維持への最低条件を知らないトトとジョーイは、おそらく小学生はおろか、猿なみレヴェルと勘ぐるのみ。
　ホント、ウルトラ駄作の典型。
　無事に救出後、人肉食問題がスキャンダルを呼ぶわけでなく、再びコンテストへと続くのは、バカの上ぬり状態といえる。
　もっとも、たとえ類人猿のつくった映画であっても、内容などそっちのけで、魅力的な女優さえうつっていれば楽しめるのは事実。一回目のコンテストでずらっとワンピース水着の参加者たちがそろい、決勝でデザインの異なった主役四名のワンピース水着がアップででてきて嬉しくなる。島で巨大アイスクリームやチキンの幻想をみるショットでは、デボラーを含めて五名が水着。チキンに歩みよるときは四つんばいのワンワン・ポーズ。しかも二人は画面に向かってお尻を突きだしている。海で戯れるイメージ・シーンにおいても、濡れてボディーに貼りつくワンピースやビキニがそそる。
　ほかに大ファンのディーナはドレスからパンチラぐらいしかそそらないのが残念なものの、アセニトとジェニファーがやってくれる。ドレスの下に赤いワンピース水着のアセニトは、胸元が大胆な三角ブラのデザインでオッパイの谷間が強烈な色気を放ちまくる。みんなで魚をつかまえようと集まるとき、手前にお尻を向けたかっこうをしばらくとり、完全に視線を奪いまくる。ジェニファーとケンカを始めて浅瀬でとっ組み合うと、パンティーの部分がお尻にキュッと食いこみ、なんておいしそう。アルを誘惑する夜には、ドレスを脱いで水着のバックからブラの部分をほどき、オッパイを手で隠してふり返る。ジェニファーはコンテストの前、自宅のプールで泳ぐところが最高。水からあがってピチピチにフィットした黒いセパレーツ水着にプロポーションくっきり。食いこんだヒップラインが実にまぶしい。パンツ一丁のアルフィーをみてわざと挑発をかけるビーチでは下半身のデカパンがダサいながら、ブラはずしのうえ、腕でオッパイを押さえるトップレスを披露してくれる。ただし、デボラーに化粧箱を持たせていたので、ブラだけは白、赤、黒とチェンジするも、バンビやディーナとキャット・ファイトでデカパンのままはいかがなものか。一番性格が悪いのにミス・フレンドシップとの皮肉において、ついにはデボラーにまで反抗を受け、逆境で友情と思いやりを実感する主人公的キャラクターとはいえ、ウェストが太めだし、容貌もイマイチなのにラストでミス・マニラ・サンシャインに選ばれるあたりも首をかしげる。
　まあ、ディーナが期待ほどに活躍しなかったぶん、アセニトとジェニファーのミセミセがビンビン必至なのは確か。この肉体が作劇以前の稚拙な内容に輝きを与えたようだ。
　なお、ミスの賞品が新車、現金二万ペソ、カリフォルニア旅行なのは、いかにもフィリピンっぽい。魚が一匹だけ採れてみんなでわける際、ジョナスがナマでの食べかたに「日本食レストランの刺身と同じだ」といっていたり、人肉のアイディアがでてバンビがアンデスの聖餐の話題を口にしたり、枯れ木と枯れ草で各自が日よけの小屋をつくったりにはちょっと興味がわく。バンビの母親役でアニータ・リンダが、コンテストの司会役でビベット・オルテサとエド・ウィリアポルが出演。メル・チョングロが美術を担当している。