ＴＥＥＮＡＧＥ　ＭＡＭＡ
　
93年：リーガル・フィルムズ
監督：マリオ・Ｊ・デロス・レイエス
主演：ジャッキー・フォースター
　　　 ガビー・コンセプション
　　　 ジェフリー・サントス
　　　 エリック・フルクトゥオソ
　　　 カルラ・エストラダ
　　　 ジーナ・アラハル
　　　 グライデル・メルカド
　　 　アル・タンタイ
　　 　エミリオ・マルヴァル
　　 　セバスチャン・コルデロ
　　 　サンシャイン・クルース
　　　 チェスカ・ディアス
　　　 ダニエル・フィゲロア
　　　 アリ・ソット
　スキャンダルっぽい題名に思え、日本だとヤンママという範ちゅうかもしれないが、フィリピンではごくありふれた日常じゃないか。
　これは周囲の友人たちをみた実感のみならず、自分のカノジョがそうなったのだから、何といってよいやら。もちろんどこか知らないヤツの子で、ずっと妊娠を隠していたのだが、そんなのバレないわけがない。17歳ではらんで、18歳で出産じゃ、一体この先どうすんだよ、という感じ。考えてみれば７ヶ月もフィリピンへ行かなかった間の出来事で、自分が17歳のころを思いだしてみれば、好きな子に一日でも会わないことがあるとイライラしたもの。それを７ヶ月も放っておいた自分にも責任があるわけで、出産後しばらくは冷戦状態が続いたのだが、向こうから折れてきたのをきっかけに、いつの間にか許してしまった。相手の母親の元に女の赤ちゃんは預けてあるとかで、まだ会ったことはないも、いやはや困ったものだ。
　そんな話はさておき、映画は自己中心的、無責任というフィリピンのごく一般的な男どもに翻弄される女性たちを描いていて、けっこう納得のいくストーリーである。売れる前のグライデル・メルカド（クレジットではラニ・メルカドになっている）演じる遊んでいた同級生が妊娠し、無理やり流産にしようとオマンコに針金のようなものを突っこんだのが原因で死んでしまう事件があって、同じく妊娠したジャッキー・フォースター演じる主人公が出産を決意する出だしに説得力をもたせている。ジャッキーは自らも私生児で、別々に住む父親と母親の両方の怒りと苦悩がでてくるが、赤ん坊の父親であるジェフリー・サントス演じる同級生の身勝手さは、まさにダメ男の典型。子どもを寝かしつけた横でセックスしたり、自分の欲望のことしか考えていない。しかもチェスカ・ディアス演じる新しい恋人をつくったり、浮気もし放題ときている。カルラ・エストラダ演じる親友の同級生が育児を助けてくれるものの、カルラがガビー・コンセプション演じる前衛画家とつき合うようになり、このガビーがジャッキーを口説いたことで女同士の友情にもヒビが入ってしまう。ガビーだってしょうもないヤツなのはすぐにわかるが、また接近してきたジェフリーとケンカし、ついには過失からアトリエに火をつけて、あやうく赤ちゃんを焼死させるところだったりするから、バカさ加減にもほどがある。
　エリック・フルクトゥオソ演じるボンボンと結婚することになったカルラと和解し、２年後にはサンシャイン・クルース演じる妻をもらったガビーと再会して、すべてが過去になったことを悟ったジャッキーは、相変わらずジェフリーから愛の告白を受けるのだが、一人自立の道を歩み始める。この精神的に大人になっていく静かな成長のドラマが好感のもてる印象で、マリオ・Ｊ・デロス・レイエス監督の視線に共感を抱く。まあ、テンポがイマイチでこれといったうまさもないから、退屈する部分が多いものの、よしとしようではないか。
　それにしても、子どもを抱えて男に逃げられ、自分の力で生活と格闘しながら頑張っている女性をフィリピンでは本当に何名もみかけるが、ウチのカノジョももうちょっと自立してくれればなあ、なんて思ったりする。
　まあ、ジャッキーのファンだから、セクシーなシーンを期待してみた作品なれど、ジェフリーやガビーとのセックスでは肝心のパーツの露出がないままなうえ、赤ん坊にお乳をあげるところでも、乳首が隠れているのが残念。でもお腹がでてきたのを気にして全身を鏡に映すときのガードルの下着姿や、ガビーと海へ行ったときの黒いビキニが誘惑的で、そこそこ満足させてくれる。
　またカルラはジャッキーより美人だと思うが、全身に絵の具をぬりたくってカンバスの上で転がるというアヴァンギャルド的なペインティングのシーンがあって、ピッタリとフィットしたボディー・スーツがエロティックだから嬉しい悲鳴。ビンビンものの興奮で、全編最大のハイライトになっている。
　グライデルがガビーの絵のモデルになる設定もあるが、ヌードではなくセミなのが惜しかった。