ＴＡＴＬＯＮＧ　ＰＵＳＯ　　ＩＩＳＡＮＧ　ＰＡＮＧＡＲＡＰ
（三つの心、一つの夢）
　
00年：フェーム　フィル‐ＡＭメディア・エンターテインメント
監督：ジェッセ・Ｂ・パンギリナン
主演：マリセル・モラレス
　　　 プレシャス・ヴァレンシア
　　　 アイラ・ルナ
　　　 クリス・ヴィリアヌエヴァ
　　　 ドビー・ハワード
　　　 プロスペロ・ルナ
　　　 デーヴ・ロドリゲス
　フィリピン人があの超ダメ国家のアメリカ合衆国へいかにあこがれを抱いているかは、もうあきれるほどだが、ヴェトナム人やカンボジア人だってアホ国家のフランス共和国に特別な感情があるようだから、旧宗主国というのは植民地政策で支配した相手の精神構造まで奴隷にしたようだ。
　なんてことはさておき、アメリカに夢をみた三人の女性を描く作品である。個人的にはあんなウルトラ傲慢自己中心国が理想だと思うこと自体からしてお笑いだが、一応実態なんだし、小バカするだけで先へ進もう。かつては自分だって、幻想をもった時期があるのだから…
　小学校でミシェル・オーストリア、ジェーニー・リオ・サンタヤナ、ファイナ・リー演じる仲良し三人組は将来アメリカへわたる約束をする。大きくなってマリセル・モラレス、プレシャス・ヴァレンシア、アイラ・ルナが演じるようになり、マリセルがクリス・ヴィリアヌエヴァ演じる恋人などをおいてサン・フランシスコへ到着するところから始まる。たまたま空港から乗ったタクシーの運転手がデーヴィッド・ロドリゲス演じるフィリピン人だったので、さっそく親しくなり、デーヴィッドはあとの展開に大きくからんでくる。
　マリセルは先にアメリカへきていたプレシャスの家に居候するのだが、プレシャスはドビー・ハワード演じる夫とグリーン・カードの取得のために結婚している。ドビーは鞭でペシペシたたくのが好きなＳＭ癖の変態で、マリセルにも手をだすな、とすぐに先が読める。でも、浮気現場の証拠写真が撮れたからプレシャスは念願の離婚が成立し、フランシス・フェリックス演じる別の男と一緒になる。
　フィリピンから妹が病気になったとの知らせがきて、マリセルは仕事を探すも、グリーン・カードを持っていないのでどこもダメ。デーヴィッドに頼んでみると、紹介されたのは性風俗。メラニー・ハーバート演じる斡旋屋のおばさんからカネを前借りしたため、それを返すためにのぞきショーのダンサーを演じたり、売春を実行していく。しかもデーヴィッドが襲おうとしたのを必死に拒否すると、デーヴィッドが移民局へタレこんで、マリセルは追われる立場に。
　一方アイラは、アメリカへくるも食いつめてストリート売春していたのだが、たまたまつかまったときにジョン・ゼレリ演じる黒人警官がいい人で、自分も妻がフィリピン人だからと見逃したうえ、仕事を紹介してくれる。プロスペロ・ルナ演じる初老のフィリピン系アメリカ人の介護で、妻を亡くしたプロスペロは自分の世界に閉じこもる日々。太っていて醜男のプロスペロだが、アイラがまごころこめて接したのでだんだんと心を開いてくるあたりは、もっともよく描けている部分。アイラがグリーン・カードを欲しがっていると知って形だけ結婚するものの、いざカードが取れると「これでお別れだね」と悲しみをあらわにするプロスペロに「どこへも行かない。一緒にいるから」というアイラのやさしさは、プロスペロとの交流部分に説得力があっただけに、無理なく理解できる。ジェッセ・Ｂ・パンギリナン監督の心理のとらえかたに感心。
　でも別々だったマリセルとプレシャスが、アイラと再会するのにどういうシチュエーションを用意するのだろうと期待していたのに、単なる偶然というのは肩透かし。
　いや、ちゃんと頭を使ってないぞー、とアイディア不足に不満タラタラ。
　マリセルがたまたま買った宝クジで大金を当てるオチも、本当にまじめにつくっているのか、と怒りすらわいてくる。アメリカ生活の苦労をリアリズムで描こうとの厳しい姿勢はないのか。しょせんフィリピン映画というのは、ハーレクインの枠をでない、安易な幸運に頼るしか解決方法をみいだせないのか。高級リムジンに乗ってくるラストも、夢がかなったというよりも、無駄遣い好きのノータリンといったイメージが先行するのみ。
　お前らは、猿か。
　グリーン・カードを取得する題材でも、ペ・チャンホの『ディープ・ブルー・ナイト』やピーター・ウィアーの『グリーン・カード』と比べれば、その差歴然。
　せっかくアメリカ・ロケまでしながら、よくもまあ、駄作をつくったものよ、といったあきれ感がもたげてくる。皮肉な解釈をすれば、フィリピン人のダメさ加減がストレートにでてしまった面が興味深いかもしれない。
　なお主役の三人だが、マリセルはいささかブスっぽいものの、オープニングがマニラのプールのシーンで、ボディーにフィットした競泳ふうの黒い水着が色っぽく、さっそく挑発してくれる。水の中にいるＡＪ・プロスペロとアイリーン・プロスペロが演じる女性の水着にも視線を奪われる。ダンサーになってからはジーンズのホット・パンツで腰をクネクネさせる動きにウハウハだが、ホット・パンツを脱いだのに、パンティー丸みえのショットがないのは残念。
　アイラはプロスペロが自分の肉体を求めていると勘違いして、バス・ローブをまくり、黒いブラになって抗議するシーンがあり、みごとなオッパイの谷間に鼻息が荒くなる。こりゃ、スゲー。
　プレシャスは美人といかないまでも一番キュートだが、ＳＭの場面においても大胆な露出なしだった。