ＴＡＭＰＩＳＡＷ
（水面でバチャバチャ）
　
02年：トリ・ヴィジョン・フィルムズ
監督：フランシス・“ジュン”・ポサダス
主演：アレック・ボヴィック
　　　 アナ・カプリ
　　　 ジョン・アパシーブレ
　　　 アイミー・トレス
　　　 メリッサ・メンデス
　　　 ピンキー・アマドール
　　　 ロイ・アルヴァレス
　　　 パオロ・リヴェロ
　　　 アルベルト・デ・エステバン
　精神病の遺伝を底辺にした、近親愛憎劇である。
　メリッサ・メンデス演じる妻が妊娠しているのに、これを喜ばないどころか、ロイ・アルヴァレス演じる夫が暴力を振るうのが冒頭。二十年後となって、アレック・ボヴィック演じる長女をメリッサはまったくかわいがらず、アイミー・トレスとアナ・カプリ演じる妹のほうばかりに愛情をそそぐ。
　アレックが二十歳との設定ということは、アイミーとアナは十代になるが、さすがに少々無理のある配役。アナが一番下というのは、実年齢から考えてもヘンじゃないか、との印象がまず先に立つ。
　それはさておき、頭のおかしくなったロイを追いだし、メリッサはジョン・アパシーブレ演じる妻のある男と逢い引きをくり返す。アイミーはパオロ・リヴェロ演じるボーイ・フレンドとつき合い、パオロは控えな性格。アナはアルベルト・デ・エステバン演じる不良と交際中で、アレックがそれを非難。メリッサは製塩所を持っているのだが、ノノン・デ・アンドレス演じる労働者を雇っていて、メリッサに迫ったロイをジョンが射殺をノノンが目撃する。アレックは無断で服を一着買っただけでメリッサからイジメぬかれ、ついに復讐を決意し、ジョンを奪いとる行動にでる。しかもメリッサが事故から車椅子生活をよぎなくされると、動けないメリッサの前で服をみせびらかせたり、自分が少女時代に受けたごとく強引に口の中へ突っこむ食べかたをさせたり、陰湿な嫌がらせを展開。ジョンとのセックスを目にしたメリッサが自殺するや、だんだんと後悔の念にとりつかれる、というストーリー。
　アレックとアナは犬猿の仲に陥り、アレックはパオロを誘惑し、ゆがんだ関係はもつれまくる。でもジョンはアイミーをレイプしようとするばかりか、ピンキー・アマドール演じる妻がアレックを責めにくると、つかまえて自宅の階段に手錠でつなき、、あまりにも一人で悪をしょいすぎているキャラクターづけ。各自の深層心理に迫ろうなんて意図はうかがえず、単純な構造でしかない。アルベルトがアナの一家の遺伝のうわさもあって、もてあそんだだけでアナと別れ、ジェシカ・ピカ演じる母もアナを中傷したため、アイミーが怒りをぶつけたあと、アレックは直接アルベルトに蹴りを入れて、しょうもないヤツからの解放が姉妹の絆の復活を暗示する。ジョンはギャングに借りていたカネが返せず、アレックからうまく奪おうとするも、ノノンにロイ殺しをバラされ、ノノンを撃ったために、アレックがピストルを奪って射殺。
　よくある殺人劇の枠をでていないじゃないか。
　まあ、アレックは異常者となって病院に収容されたあと、三姉妹の愛情が元の状態へと戻る。退院してパオロと一緒になったアイミーや、アナと抱き合うラストの余韻がよく、一応そこそこのできではある。
　興味深いのは舞台となっている家内製手工業的な塩の工場の描写で、鋤のようなもので耕し、スコップで袋につめたり、こんなふうにつくっているのか、と妙に好奇心を刺激される。
　アレックが精神を病み始めてからの行動表現もユニーク。塩を下に薄く敷くと、まわりにロウロクを円形に並べて火をともし、中に入って十字のポーズで立つなど、あやしい儀式を連想する内容。このひとり宗教とでもいうべきものに耽溺している横で警察が駆けつけ、塩の山を掘れば、中からジョンの死体がでてくる映像づくりにも面白味がにじんでいる。
　もっとも、とくに注目すべきはセクシーな要素なのだが、ここはイマイチだったとの減点ありが本音。親子四人が海岸で戯れるシーンが最初のドキドキで、白いスリップのような衣装から乳首がスケてるんじゃないかと目を凝らすとき、まずメリッサに視線の集中を送るから、意外と自分の熟女趣味を認識する。全員がブラをつけていて、ポッチが浮きあがらないのが残念。メリッサはパンツ一枚のジョンに抱かれたり、ジープの中でセックスしようとするシーンがあるものの、太腿やバストの谷間の色っぽさは確かにすごいが、ちゃんと中年のヌードがみたかったなあ。
　アナはいつもの大胆さが感じられず、海岸でアルベルトに愛撫されるところでは肝心の露出がなく、セックス・シーンでも脱いでいるのにオッパイが隠れたまま。さすがにアレレッ、と意外さしか残らない。
　アイミーはプロポーションのよさをうかがわせるも、ブスだから除外。
　それでアレックだが、白いスリップのようなシャツで波打ち際に座って、押し寄せる海水をザブッと浴びるとき、今度はブラをしていないから乳首がくっきりと浮きでている。ビーチでジョンとイチャつき合い、これを目撃したアナが批判するシーンへと続き、流れのある岩場の海岸へ移って、シャツのまま体を洗うアレックのオッパイは、ピタッと布が貼りついていて、丸みえよりも挑発的。こりゃあ、マジで鼻血もの。でもメリッサにみせつけるセックスは、乳首のポッチとパンティーのスケてみえるシャツまでで、さすがに全裸にならなきゃ、との不満が起こる。塩の上でのセックス・シーンでは、オッパイがポロリと視界に飛びこんでくるが、もっと激しくモミモミされてもよかったんじゃないか。アルベルトをボコボコにするために誘いこむところでも、シャツを脱がされ、真上からのショットで乳首が映るものの、一瞬すぎてオイオイオイ。
　さして美人じゃなけれど、気になる容貌のアレックだけに、ちゃんとボディーをおがみたかったなあ、との欲求は満たされないままだった。
　肉体露出に関していえは、四十点ほどの評価といった結果。

※　アレックはこの作品で“フィリピノ・アカデミー・オブ・ムーヴィー・アーツ・アンド・サイエンス”の主演女優賞を獲得した。『ＤＥＫＡＤＡ　’７０』のヴィルマ・サントスや『ＭＡＮＯ　ＰＯ』アラ・ミナを抑えてだけに、かなり意外だったといえよう。ボールド女優の受賞に芸能マスコミの中には、戸惑いを隠せない報道もあった。確かにメリッサへ憎しみの眼差しを向ける表情づくりなどで頑張っていたものの、アナがアレックに送る軽蔑の視線とさほど変わらないとも思え、そんなにうまいかあ、との疑問が残るのは事実。次の主演作である『ＭＡＳＡＲＡＰ　ＮＡ　ＰＡＧＡＤ』のほうが作品のできとしても、アレックの演技としても上だ、という気がしないでもない。でもアレックのようなセクシーさを売る女優をちゃんと評価しようとの姿勢には共感するし、いい傾向なんじゃないかな、とも感じる。授賞式でのアレックの赤いヘソだしの衣装は特筆もので、バッサリあいた胸元もだが、 完全にサイドが露出したロング・スカートは、実際のところ、ただ布を前後にたらしただけじゃないか。腰の下あたりに細く食いこむパンティーの赤い紐がビンビン状態を誘い、おそらくこの格好で歩いているときは、角度によってパンティーがみえちゃってたに違いない。アレックったら、やってくれる。