ＴＡＫＢＯ…　ＴＡＬＯＮ…　ＴＩＬＩ！！！
（走れ…　跳べ…　叫べ！！！）
　
92年：セイコ・フィルムズ
監督：エフレン・“ロッジング”・ハルレゴ
第一エピソード
ＭＡＨＩＷＡＧＡＮＧ　ＢＡＮＧＡ
（謎めいた水瓶）
主演：リナ・レイエス
　　　 レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ
　　　 ジョジョ・アキン
第二エピソード
ＡＮＧ　ＬＡＬＡＫＩ　ＳＡ　ＳＡＬＡＭＩＮ
（鏡の中の男）
主演：シェリル・クルース
　　 　ロムニック・サルメンタ
　　　 シルヴィア・サンチェス
第三エピソード
ＭＧＡ　ＬＡＲＵＡＮ　ＮＩＮＡ　ＫＩＫＯ，　ＴＩＴＯ　ＡＴ　ＴＯＴＯ
（キコ、ティトとトトのおもちゃ）
主演：レネ・レキエスタス
　　　 リタ・アヴィラ
　　　 レーモンド・グチェレス
　　　 リチャード・グチェレス
　三話構成のオムニバスで、ホラー、ロマンス、コメディーとジャンル分けしたファンタジーになっている。
　第一話は山岳民族の制裁によって槍でめった刺しにされる男がでるプロローグのあと、アイアイ・デラス・アラスが店員を演じる骨董店から、リナ・レイエス演じる女性が大きな水瓶を買う。それを自宅に飾っておくと底に怪物が潜み、サミー・レグマイとジンキー・オダが演じる使用人の夫妻や、フローラ・ガセル演じる家政婦を引きこむ。レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ演じる夫とうまくいっていないリナは離婚を考えていて、デリア・ラゾン演じる仲介者の説得も功を奏さない。そんなときティン・ティン・パテオとハロルド・コルデロ演じる幼い娘と息子が水瓶の犠牲になりかけ、中からミイラ化した山岳民族のモンスターがでてくる。夫婦で必死に退治し、気がつけば家族の絆を取り戻していたとのストーリー。リッキー・リーのたくみにまとめた脚本を得て、エフレン・“ロッジング”・ハルレゴが軽快にみせる小品といえる。それなりにサスペンスもあり、まずまずいいんじゃないか。
　リナはベッドヘ太腿をあらわに寝ころんだスリップ姿が色っぽく、化けものにワンピースを破られてブラのみえる背中がそそる。
　第二話はシェリル・クルース演じる女学生が、地下の納屋に置かれた鏡の奥に幽閉中のロムニック・サルメンタ演じるハンサムな青年と出会う。シェリルは空想癖に浸って、学校でルーシー・キント演じる教師や、カセリン・フランシスコとチンガイ・リェーゴ演じる同級生があきれるほど現実離れした性格。鏡の前で呪文をとなえると…　なんて展開はよいのだが、シルヴィア・サンチェス演じる魔女とノノン・デ・アンドレス演じる助手が地獄の釜のごときものをゆでる鏡の裏の世界がイマジネーション不足。鏡越しにキスしようとすると唇が触れ合わず、ロムニックがでてきてシェリルとダンスなどに、怒ったシルヴィアが鏡へ強制的に吸いこませ、イヴリン・ヴァルガス演じる家政婦にシェリルがロムニックをみせるや、驚いたイヴリンが鏡を割らんばかりにあわてる、との語り口に起伏が乏しく、けっこうタルい。普通の女性のかっこうでシルヴィアが現われ、ルス・フェルナンデス演じるシェリルの叔母にうまく近づき、シェリルとイヴリンをつかまえて刺すぞの瞬間、ロムニックが助けてシルヴィアを鏡へ押しこみガチャンと破壊のシメも予想のまま。リッキーとエフレンのコンビ作ながら、こちらはさして成功しなかったと感じる。
　シェリルの魅力もやや開花せずじまいだが、鷲鼻の特殊メイクを加えたシルヴィアはみごとに適役だった。
　第三話はゴミ集めで暮らすレネ・レキエスタス演じる男が主人公になり、レーモンド・グチェレスとリチャード・グチェレス演じる双子のようにそっくりの子どもがいて、レネも区別がついていないも、一人が息子で、一人が甥との設定。ボロ服の三人がショッピング・モールへでかけると、ドン・ペポト演じる警備員が怪しみ、ドタバタ・チェイスを繰り広げる。一方でレス・コルテス演じる泥棒ふうの男が、あれこれ商品を物色する。閉店となって誰もいなくなり、隠れていたレネたちがでてくるや、リタ・アヴィラ演じるマネキン人形が動きだす。子どもたちが三名やってきて、レーモンドとリチャードにおもちゃ売り場の時計が示す時間に合わせて人間になれると教える。これを聞いたレスが針を動かし、擬人化したいくつもの人形にレネとの対決を命じる。そしてレスがリタを襲ったとき、子どもたちが針を進めてリタが消える。すっかりリタに恋していたレネが嘆くと、マネキンに戻っているのがわかる。いわば夜の間だけ人形が生命を得る典型的なメルヘンといえ、脚本のジョー・バルトロメが同様の童話（ちょっと違うけど、ウィーダの『ニュールンベルクのストーブ』くらいしか思いだせない）を参考にしたのではないだろうか。リタのメイク・アップから察するに、エフレンがマイケル・ゴッドリーブの『マネキン』を念頭に入れたとも考えられる。いずれにしてもギャグが貧困で、それほど笑えないのがつらい。
　リタはエナメルのボディコン・ミニがセクシーなものの、次々とマネキンがつけている衣装に着がえていくとき、ビキニ下着の番になり、そんな大胆なかっこうをみせてくれるんだと興奮したら、レネがブラをはめてキャーッなんてオチで残念。赤いランジェリーにとどまる。
　結果、第一話は楽しめたが、あとのマイナスで印象ダウンに終わったようだ。