ＳＵＰＥＲ　Ｂ
　
02年：ＮＥＯフィルムズ
監督：ジョイス・ベルナル
主演：ルーファ・メエ・キント
　　　 マーヴィン・アグスティン
　　　 メラニー・マルケス
　　　 マイリーン・ディゾン
　　　 トロイ・モンテロ
　　　 アイサ・マルケス
　　　 イサベラ・ダサ・デ・レオン
　ジョイス・ベルナル監督、ルーファ・メエ・キント主演の『ＢＯＯＢＡ』のコンビが『ＤＡＲＮＡ』のパロディーのような内容に挑戦だから、ハチャメチャなナンセンス・コメディーを期待したのだが…
　確かにハチャメチャには違いないものの、ファンタジーのなりそこね、といったでき。
　タイトル前のルーファがホクロをつけてアロヨ大統領の顔マネをする意味なしギャグからは、けっこうイケそうな予感が走る。ディック・イズラエル演じる父、マリア・イザベル・ロペス演じる母とともに露店の食堂を営むルーファには、マーヴィン・アグスティン演じる占い師の息子がホレていて、マーヴィンが裏声でしゃべるのはさして笑えないが、バカっぽさを伝えてくる。マリッサ・デルガド演じる母からもらった指輪をマルヴィンがルーファにプレゼントし、それをはめるとルーファの首が三百六十度回転のうえ、緑の唾液をはくのは『エクソシスト』まね。階段の逆立ち歩きもあるから、ディレクターズ・カット版を下敷きにしたのだろうが、相変わらずフィリピン映画のオリジナリティーの欠如を嘆くも、とにかくアホらしい。
　あとで老女のスーパーウーマンからマリッサがもらったと紹介されるこの指輪を「人々のために使います」と誓ってはめたら、今度は正義のヒロインへ変身し、ヨガもどきの妙チクリンなダンスのあとにボカーンっと爆発で登場、というのが愉快。何度かでてくる変身シーンでは、いちいち踊ったあとの爆発が周囲の者までまっ黒にしていて、クスクスを誘発する。
　ヒロインである“スーパーＢ”の衣装がピンクのブラとパンティーにマント、ＳＭの女王さまっぽいマスクというセクシーなデザインながら、素材が厚くてイマイチそそらないものの、空ゆくスーパーＢをみあげてゴムス・ブルサ演じる男が「鳥だ、いや、スーパーＢだ」とスーパーマンにあった台詞をいうときに、ブラがハズれ落ちてアレレ。ルーファーが手でオッパイを隠しながら飛ぶあたりは、けっこう視線を引きつける。 ボーイ・ゴメスなどが演じる強盗を退治していると、ルーファがあこがれのトロイ・モンテロ演じる雑誌記者がきて、カメラに「ハイ、ポーズ」で、強盗までカッコつけるなど、まったく現実味の欠如感がくだらない。形だけのクンフー・アクションごっこやピンクのガスの噴射もでてきて、相当にスラプスティックではあるが…
　悪党をやっつけるとき、パシパシと平手打ちが気にかかる。マーヴィンとの会話もビンタをくらわせながらで、お前らはどつき漫才か!?
　マーヴィンがルーファへの思いをイメージする海岸シーンでも、ルーファの顔を砂浜に引きずって血だらけを呼ぶし、ルーファがマーヴィンをしばき返す。そんな暴力的な愛情表現って、あり？
　致命的なのは、ルーファーの宿敵となるメラニー・マルケスとマイリーン・ディゾンが演じるフラワー・ガールズと名のる二人組の扱い。歌って踊る子どもたちのアイドルで、イサベラ・デ・レオン演じるルーファの下の妹も夢中。そのテーマ曲はルーファのパフォーマンスによるスーパーＢの主題歌より上出来なのだが、気に入らないとスタッフをぶつし、自分たちよりもスーパーＢのほうが話題だとわかると、周囲をとにかく殴る蹴る。ルーファを応援したゴムスらを光線で洗脳する際にも、やはり暴力的なのはどうして？
　実はメラニーとマイリーンは花のついたヘッド・ギアーや自分たちのフィギュアを売って催眠にかけ、イサベラなど多くの子どもたちが家族を嫌って集まり、悪の世界を築こうと企むエイリアンとの設定で、いったんマリッサに指輪を取り返されてパワーを失ったルーファを制裁するとき、まあ、どつくのなんの。取材にきたトロイにもこれでもかと拳をあげ、いわゆる日常レヴェルのヴァイオレンスだけに、みていて不愉快。
　再びスーパーＢとなったルーファとの対決も、マニラ中を回転していくマヌケな描写を合成で加えるなんて眼中になく、相変わらずのビンタの応酬が主体だから、ほとんどゼロといっていいほど楽しめない。ヒーロー気どりで加勢にきたマーヴィンがボコボコにやられる部分も同じ。
　いったいジョイスなどスタッフは、手をあげるという暴力行為に対して、どういう考えかたを持っているのか聞いてみたい。そんなに人をしばくことが嬉しいのか。ファンタジーに殴る蹴るを持ちこめばエンターテインメントだと解釈してるのか。
　突然、脈略もなくスパイダーマンのマネっこが現れ、ダメ押し的に暴力三昧で、もうゲのゲのゲのサイテー！
　エピローグでルーファが女優としての自分自身に変わり「演技賞を…」と涙で訴えるギャグも、これほどのウルトラ駄作のあとでは単純に余計なだけ。
　ムカムカばかりがあと味という、早くネガごと抹消したほうがはるかにためになりそうなコメディーらしき（？）一編だった。
　まあ、それでもおいしい部分はあり、スーパーＢのコスチュームが挑発不足なのは述べたが、水着のシーンでのルーファがみごと。青と赤の二種類のビキニを披露し、青いほうは乳首がこぼれそうなブラや、陰毛がハミでそうなハイレグの股間で圧倒をくれる。赤いほうはマーヴィンがルーファの片脚をつかんで引きずる動作が腹立たしいものの、パンティーが食いこみ、マーヴィンに抱きつくポーズでルーファのお尻のお肉がプラプラ揺れる。
　さすが、ルーファ。
　メラニーとマイリーンはバトルの間、全身黒タイツながら、さらに黒いチャイナのようなものを重ね着していて、プロポーションの隠れたままが残念。
　ルーファの上の妹を演じたアイサ・マルケスは、白いピタパンで下半身の発達をうかがわせ、今後の成長を期待させた。
　なおフラワー・ガールズがＰＢＡに出演するシーンでは、実際のＰＢＡ案内役であるチキ・ロアが顔をだしている。