ＳＵＮＤＯ
（ある場所から人を迎えにいく者）
　
09年：ＧＭＡフィルムズ
監督：トペル・リー
主演：ロビン・パディーリア
　　　 サンシャイン・ディゾン
　 　　リーアン・ラモス
　 　　カトリナ・ハリリ
　 　　ヘロ・アンヘレス
　 　　マーク・バウティスタ
　 　　ジャクリン・ホセ
　 　　イサ・カルサド
　　 　シモン・アトキンズ
　トペル・リーのホラーで、予知能力と死神の存在をかけ合わせた内容だが、さほど恐くないでき。
　冒頭にゲスト出演のイサ・カルサドが演じるノイローゼ気味の女性が事故で亡くなるエピソードがおかれ、なんだろうとの興味を引きつけ、病院で重傷のロマノ（ロビン・パディーリア）が戦場の記憶をフラッシュ・バックに続く。車椅子に押されてロマノが退院のさいに病室や廊下に霊をみて、スタートはまずまずながら…。
　女医のルエリア（サンシャイン・ディゾン）が雨の墓地で遺体掘りに立ち合い、棺からミイラのでるこげおどしで盛りあげのあと、伯母（ルス・ヴァルデス）とマニラで暮らすルエリアが友人のバステ（マーク・バウティスタ）の運転で故郷に帰り、近所だったメンガイ（メリー・タガサ）の娘で、幼なじみのイサベル（リーアン・ラモス）が盲目なため、手術をうけさせようとマニラへ向かう本筋に入って、やや退屈になる。ロマノはイサベルの兄にあたり、長髪でヒゲぼうぼうの風貌で引きこもりに陥った設定で、謎の呼び声を聞く。精神を病むロマノも治療でマニラへ同行で、ヒゲをそって車に乗る。夫の葬式に出席のため、同じ村に住むルメン（グライデル・メルカド）と、その義理の弟のエリック（ヘロ・アンヘレス）も一緒。ケンカでボーイフレンドの車を降り、交通手段を失っている三流女優のクリスティナ（カトリナ・ハリリ）を途中で拾って役者がそろうと、ロマノが居眠り運転しそうなバステを起こして交通事故の幻想をみるや、実際に手前で事故が発生する。不気味な人影に停車で、トンネルから赤ん坊の声を聞く、などの進めかたに緊張感が乏しく、ただ霊がうろついたりに、背筋がゾクッとふるえるごとき寒さがない。ドライヴ・インのカイデリアで休憩で、ロマノがテーブルの下に霊を目撃のあと、トイレでオシッコのルメンが事故で亡くなる。マニラに着いてロマノが天井で首を吊る男の霊に驚き、ルメンの夫（ジノ・マルセロ）の葬式にきてみれば、遺体の手についた傷がドライヴ・インのテーブルの下にでた霊と同じものと気がつき、イサベルとエリックが式場に閉じこめられるや、床にあふれた水でエリックが漏電の感電死。との連続に、予定調和というか、なぜとの疑問がわきあがってこない。
　生死のさかいをさまよって以来、ロマノが予知能力をえたと告白し、それは事故で亡くなるものの霊を先にみかけるのみだといい、この種のことにくわしい中年女性のチャ・エルマ（オデット・カーン）をマーケットに訪ねる。ここで肉切り包丁に霊がうつってガス爆発に気がつくあたりで、事故の予知じゃなく、ロマノが事故を運んでいるんじゃないかと思えてくる。黒い謎の女性（ヴェネッサ・アンドレス）の存在が示されるが、だと余計にバカバカしい。非現実、超自然にあっても、ひょっして自分の身にも…、との思いがふるえを呼ぶわけで、ロマノの行き先へ死神がついてくるみたいな構成だと、ただ単にロマノが疫病神なだけだとあきれるのみ。アロイ・アドラワンの脚本がイマイチながら、キリスト教徒か、アスワン（妖怪みたいなもの）の伝統のあるフィリピンと風習の違いかとも感じる。
　ロマノたちがクリスティナを心配になって家にいき、母（リナ・レイエス）のだしたコーヒー・カップにクリスティナの霊をみて、撮影の仕事の前にマッサージのスパへきたクリスティナがサウナに閉じこめられ、熱湯のシャワーを浴びて亡くなる。スパの外で待っていたバステがバーベキューの屋台で火の粉を目にかぶり、目を押さえて道路を横切って車にひかれる。いよいよロマノとルエリアとイサベルの三人が残され、どういう結末をつけるのかにおいて、ルエリアが妊娠の発覚で赤ん坊の声の理由がわかり、イサベルが盲目なのを使って謎の黒い女性の霊に導かれて歩き、ビルのベランダの壁に平均台のように立つ。助けようとロマノも立つとイサベラが霊に変わり、ロマノと真下のプールに落下、とのクライマックスはさすがにハッとさせる。本当は誰がイサベルを殺し、ロマノが知った真実は…、で二度のドンデン返しの用意はどこかのいだだきっぽいが、まずまずかもしれない。
　とにかく霊を異様な形相でだせばいいってものじゃなく、だしすぎがかえって恐怖度を弱め、単調さをまねくトペル・リーの演出に落胆。つまらないと断定したくなるが、ルメンの夫の葬儀で無心に祈る老女（エストレリア・クエンスレル）がいるムードづくりや、眼医者（ダイアン・ウイ）がイサベルを診察で「五分五分」といったりのリアルさに、ＪＡ・タデナの撮影も手伝い、イサベラのひたいにバステの血がぴしゃりと飛ぶ映像センスなど、評価のポイントは指摘できる。ロマノたちが相談をもちかけ、チャ・エルマが「おカネあるの」と聞くあたりの人間描写も買える。
　女優ではサンシャイン・ディゾンが太ったのが明らかだが、リーアン・ラモスはかわいいし、グライデル・メルカドは熟女の魅力をかもす。なんといってもカトリナ・ハリリのセクシーさが個人的には最大の関心になる。ボーイフレンドとケンカ別れの夜に雨が降ってきて、ミニスカにシャツの衣装が濡れるショットを欠くのは不満ながら、スパでシャワーを浴びるショットですりガラスごしのヌードのうしろ姿をみせ、マッサージやサウナでバスタオルを巻いたボディーにドキドキ。欲をいえばルエリアが住むコンドミニアムへイサベラを連れてきたとき、プールに水着の女性がいるので、リーアン・ラモスの水着もみたかった。
　なお、ジャクリン・ホセの名前がゲストのクレジットに読めるが、確認できずじまい。