ＳＴＡＲ？
　
79年：サンパギータ・ピクチャーズ
監督：ジョージ・Ｅ・ロー
主演：ルディー・フェルナンデス
　　 　ロルナ・トレンティノ
　　　 ジャネット・ボードン
　　　 エディー・ガルシア
　　　 セリア・ロドリゲス
　　　 ヴィク・シラヤン
　　　 ペピト・ロドリゲス
　　　 リリアン・ライン
　　　 ヴェロニカ・ジョーンズ
　　　 フェニー・セラノ
　スターのごう慢さを背景に映画界の内幕を描く作品で、ハリウッド製の『オスカー』などを参考にしたと思われる。
　人気俳優のトニー（ルディー・フェルナンデス）の葬儀にはじまり、回想で物語が進んで、また葬儀で終わる。
　主演女優賞を人気絶頂のヴィッキー（ロルナ・トレンティノ）にさらわれ、落ち目のヴィーナ（セリア・ロドリゲス）がくさっているとき、バーテンのトニーに目をつけ、自らがエージェントになって売りだしをはかる。オカマの映画監督のエードリアン（エディー・ガルシア）がトニーを気に入り、みるみる人気を得ると、主演男優賞を受賞するまでになる。でもヴィッキーとできてヴィーナの元を去り、ヴィッキーが妊娠で認知を拒み、叱責するヴィッキーも捨てて、映画会社のオーナーの娘であるジーン（ジャネット・ボードン）と結婚。また酒と博打と女の飲む打つ買うにおぼれ、ついにオーナーのドン・アルフォンソ（ヴィク・シラヤン）に解雇をいいわたされる。自らが監督に乗りだすも成功せず、借金がかさみ、ヴィーナに泣きつく。トニーへの愛が残るヴィーナの努力で復活し、再び主演男優賞をとるも、受賞式のスピーチでヘベレケに酔って関係者を傷つけ、ついには誰かに銃で撃たれる。
　トニーがスターになるためならとイヤイヤながらもエードリアンのホモ・セックスを拒まないしたたかな人物に描きつつ、性格がねじれていく過程がストレートすぎて、やや深みを欠くのはジョージ・Ｅ・ローの力量不足。夫のクリスピン（ペピト・ロドリゲス）との関係が冷めたヴィッキーのプライヴェートなど、つけたしみたいな印象のあたり、アルマン・レイエスとミリアム・Ｅ・アグスティンの脚本が練りたりない。エードリアンの助手のオカマであるジュン（ファニー・セラノ）への侮蔑や、葬式に現れた新しい愛人を含め、ヴィッキー、ヴィーナ、クリスピン、エードリアン、ジュン、ジーン、ドン・アルフォンソ、愛人の誰が犯人かのサスペスンスは、いくらミステリーじゃないとはいえ、伏線がほしいように感じる。
　もっともトニーが最初に主演男優賞を受ける作品が日本軍へのレジスタンスをあつかう戦争映画なのが、七十年代末との時代をうかがわせ、ドン・アルフォンソの会社をクビになったトニーが中国系の映画会社を訪ねるなどのショー・ビジネス界の構図が興味を引く。パーティーの会場にジョージ・エストラダがいたり、三度でてくる授賞式のプレゼンターがエディー・ロドリゲスとディヴィーナ・ヴァレンシア、ロベルト・アレヴァロとトリシア・ゴメス、グロリア・ロメロなど、ところどころに登場のゲスト出演が楽しい。映画撮影シーンの挿入だと、トニーの復帰作がヴィッキーと浮気のセックス現場へヴィーナが踏みこみ、銃口を向けるものが、冒頭に葬式シーンを置いた影響でハッと思わせる。
　若いトニーの肉体が忘れられない中年女のサガをあらわすセリアが好演で、オカマぶりが巧みなエディーの芸達者ぶりが冴える。
　女優陣のセクシーさだとヴィッキー、ヴィーナ、ジーン、第四の愛人のいずれともトニーのベッド・シーンがあり、肝心の露出をみせないながら、ジーンとは乳首がこぼれる寸前のショットに、オッと目をみはる。新婚旅行先のタガイタイで細身のジーンスをはいた姿がすばらしいプロポーションと感嘆なこともプラスで、ジーン役のジャネット・ボードンに悩殺された次第。