ＳＰＹＤＥＲ
　
88年：プレミア・フィルム・インターナショナル
監督：ＪＭ・アヴェリアーナ（ホセ・マリ・アヴェリアーナ）
主演：ブレーク・バーナー
　　　 ロナルド・ウィリアム・ローレンス
　　　 ゲーリー・ルーニー
　　　 ロクサンヌ・バード
　　　 マイケル・ヴラスタス
　シリオ・Ｈ・サンチャゴの制作指揮によるアメリカ合衆国とフィリピンの合作。おなじみのヴェトナム戦争ものでなく、ヴェトナム後遺症ものの変形といえる。
　最初はヴェトナムが舞台っぽくはじまり、家畜に餌をやるごときヴェトナムの野戦収容所における捕虜のあつかいがでてくる。ミッシング・イン・アクションの救出劇ふうに銃撃戦を展開も、これがミッシング・イン・アクションの息子をもつハワイの大富豪のロデリック・ペンドルトン（ポール・ホーム）にみせるデモンストレーションとわかる。いくらなんでも芝居じゃヘンだろうと思うが、まずは導入部。ペンドルトンの息子の消息を知るらしき麻薬中毒のジェフ（デレク・ウィリアムズ）がデモンストレーションのメンバーから逃げる。
　舞台をロサンジェルスに移し、市警察の麻薬捜査官のブラッド・スパイダー（ブレーク・バーナー）とリー（ロナルド・ウィリアム・ローレンス）がシンジケートのカルロス（ランス・ユルゲンセン）と親父のボス（ドン・ファウラー）を退治のエピソードがでてくる。ブラッドの過激な捜査をマスコミが批判に上司のオドネル（ジョン・ドゥラニー）が怒るも、反抗のスパイダーがクリント・イーストウッドのダーティハリーやシルヴェスター・スタローンのコブラを意識のキャラクターに設定と示す。
　親族のリーにジェフが連絡をとり、リーがハワイへ出発で本筋に進む。
　ロサンジェルスの風景ショット以外、全編がフィリピンで撮影で、ロサンジェルス空港のシーンもニノイ・アキノで撮っている。
　相棒のリーがハワイで殺され、今度はスパイダーが乗りこむ。あとはミッシング・イン・アクションの捜索詐欺をたくらむグループをつきとめ、これを壊滅の話。麻薬関係の線で中毒のウィーゼル（ルーイー・デル・カスティーリオ）をしめあげ、ペンドルトン宅へ押しかける。ハワイ警察のカナカ（ヘンリー・ストーザルコフスキー）からペンドルドンの情報をえる、とごくストレートに進展。詐欺のリーダーのフリードキン（マイケル・ヴラスタス）と一連の殺人を指示のスキナー（ゲーリー・ルーニー）にたどりつく。ペンドルトンの娘のカレン（ロクサンヌ・バード）がスパイダーにフリードキンたちが東南アジアの麻薬取り引きにかかわると教える。スパイダーの身代わりでカナカが爆死や、詐欺団につうじる悪徳警官のデーヴィッドスン（ジョン・ファルチ）の存在など、まったくのパターン。部屋に爆弾があるとスパイダーが気づくきっかけをくれる中年のメイド（ヘレン・マクニーディー）のひょうひょうさが少しおもしろいかな。
　黒人のリーとジェフにスキナーが偏見をあらわな人種問題を表面的に盛りこんだりも、スティーヴ・ロジャーズの脚本にさほど特長がみられない。
　ついに詐欺がバレてペンドルトンを誘拐のフリードキンの私設軍隊と警察の銃撃戦で、カネを届けたカレンがまだ父のペンドルトンと抱きあっているうちにスパイダーと警官隊が突撃はどんなものか。カレンが撃たれて絶望のペンドルトンがヘリコプターで特攻の体当たりでフリードキンを爆殺の浪花節はよいも、リーの仇のスキナーと一対一のマーシャル・アーツでスパイダーが対決に迫力不足が大きなマイナス・ポイントになる。
　ホセ・マリ・アヴェリアーナ（ＪＭ・アヴェリアーナと表記）のテンポは早いけれど、粘りの弱い演出がＢ級の味わいをさげる。
　ブレーク・バーナーが主人公を演じるほどの精彩に乏しいあたりも致命的で、悪役のゲーリー・ルーニーの魅力薄も同じ。
　個人的にはフィリピン女優の出演がゼロに失望だし、白人のロクサンヌ・バードとリーの妻らしき役で黒人のメスキ・ゲラハンのヒロインは興味の対象外。せめてスパイダーとカレンのベッド・シーンぐらいは入れるべき。
　一応、フィリピンの役者ではカナカの上司で暴君的な警察の士官役に性格俳優のヴィク・ディアスが顔をだす。

※　この作品は『ミッドナイト・コップ／復讐の美学』の題名でヴィデオ発売されたことがある。