ＳＩＮＦＵＬ　ＮＩＧＨＴＳ
　
04年：グリーン・ライト・エンターテインメント
監督：ホヴェンタン（ホヴェン・ムナル・タン）
主演：ナディーン・シュミット
　　　 ジョン・ホール
　　　 ジェニン・デシデリオ
　　　 アナ・カプリ
　　　 クリス・ヴィリアヌエヴァ
　　　 ジョン・アパシーブレ
　　　 ラッセル・シモン
　ナディーン・シュミット、ジェニン・デシデリオ、アナ・カプリをキャストしたホヴェン・Ｍ・タンのソフト・ポルノと低レヴェルな予想を抱いていたものの、案外と頑張っている内容だった。まずロミー・ヴィトゥグのヴィスタ・サイズの画面に切った撮影が貧民街の生活ぶりをねちっこくとらえ、そこそこのリアリズムで迫ってくる。線路にトロッコを勝手に走らせる沿線のゴミゴミした雰囲気が、よどんだ空気まで伝えてくる。裸電球をつけ、カーテンがわりの布を窓に吊るし、がさつにマットレスを敷き、壁にポスターを貼る部屋の空虚なイメージや、容易に水浴びがのぞける住環境の猥雑さもそれっぽい。
　ストーリーはいたってシンプルで、ジョン・ホール演じる家電の修理屋（ロミー）とジェニン演じるその妻（フェ）、ロミーとフェの小さな家に空き部屋があり、そこを借りたナディーン演じる娼婦（ジョイス）、デクスター・ドリア演じるママともめてジョイスと一緒にバー勤めをやめたアナ演じる娼婦（ドンナ）の愛欲劇。ロミーとのセックスに刺激を失ったフェはクリス・ヴィリアヌエヴァ演じる教会で出会った男（ラモン）を意識し始め、ラモンもサインを送る。ジョイスはロミーのパンツ一丁の水浴びを目にしてマッチョなボディーにときめき、ジョイスが部屋で客とセックスするのを目撃したロミーも興奮をおぼえる。近所にはラッセル・シモン演じる若い男（ルーイー）がいて、たまたまフェの水浴びをのぞいてオナニーするのを反対に気がつかれ、フェから挑発的にからかわれる。フェとラモン、ジョイスとロミーが浮気のセックスをおこない、フェが「夫を愛している」とラモンにいうと、ラモンが単純に肉体目的だったのでフェがショックをうける。ジョイスへあこがれが芽ばえたルーイーにジョイスのことを聞かれたロミーが「妻を愛している」と答える。ロミーとの関係を割りきっているジョイスが部屋を去り、フェがラモンの子をはらんだと知ったロミーもフェを捨てる。ドンナはジョン・アパシーブレ演じるヒモ同然の夫（ドドン）をもち、ドドンが要求する遊ぶカネのためにママへ借金を申しこんで断られたりしたのに、感謝のかけらもないドドンから変態的なセックスでレイプさながらに犯されて「ブタ」とののしり、ついに自立を決意する。これに何度も教会で祈る集会のシーンがはさまっていて、ジャニス・フラド演じる信心深い中年女（マリア）が聖書を熱心に読む反面、自分が経営する安アパートの住民たちをヒステリックに怒りまくるどん欲な人間性の発露や、若い男を囲っている実態が皮肉をつくる。ちょうど教会でラモンが信仰の大切さを説くスピーチの順番がきたとき、ロミーが乗りこんできて神の栄光をたたえるラモンにガツンと一発くらわせるのが、またも強烈な皮肉をプラスして、人間の偽善に風刺の矢を向ける。インダイ・ガリエート演じる洗濯請け負いの老女がいつも仕事をしながらラジオ・ドラマに聴き入り、その内容がフェとロミーなどにダブるおかしさをつくったあと、ボロ・ラジオが壊れてロミーのところへ修理依頼にくるとロミーが家出中とのシチューション的な皮肉も加わって、さながら“人間喜劇”といった印象。いなくなったジョイスを探すルーイーが店を訪ね、ママに「代わりに私でどう」「ディスカウトするから」といわれ、思わず逃げ帰るのをギャグではなく、けっこう実際にある光景として描いているだけに、不運をユーモアに転じるパワーがかえって笑いを誘う。
　ホント“人間喜劇”。
　ジョイスとドンナが公園でたたずみながら「これからどうするの」「さあ、わからないわ」との会話をかわして別れるようすにその日暮らしの楽天性がにじみ、ロミーと涙を流すフェとの長い沈黙がお互いの内面の葛藤を暗示する。ドンナがママに詫びを入れてバー勤めを再開し、ふとママがやさしさを示したり、ロミーがジョイスの新しい部屋にきたものの、やっぱり違うと察して無言のままフェのもとへ戻っていくのが、こじんまりとしたまとまりに納得を与える。裸体のジョイスがレズの女まで一名含み、次々と男たちが乗るのをマグロになってタバコを吸いながら好きにまかせているショットを積み重ねる冒頭と、何名もの男たちがズボンを脱いでいくショットを積み重ねるラストに全体をはさみこむ構成に、売春婦の悲しさというよりも、ジョイスがロミーを相手に一度だけ喜びのセックスをもった人生の瞬間へスポットをあてた一過性のうなずきが盛りあがる。
　なるほど、ここまでポルノで表現できれば拍手を送りたい気分。
　ホヴェン、いいんじゃないか。
　ナディーン、ジェニン、アナのヌードはどうかだが、いずれも好みのタイプをはずれる女優ながら、とくにジェニンが期待以上の興奮をくれる。夫との二度あるセックスでオッパイ全開にもだえ、ともに乳首のドアップ、それもウルトラ大写しに近いショットを含むからたまらない。ツンツンとつまんでみたい欲求を抑えきれなくなる。浮気のセックスは下着どまりの露出なのが惜しいとはいえ、のぞかれる水浴びで全裸の立ちポーズからプロポーションがはっきりとわかり、美尻の誘惑は言葉に尽くせないもの。ナディーンは一応、美人の範ちゅうだし、冒頭のオッパイだしに始まって、一人目の客、二人目の客と同じようにＴバック一枚で抱き合う座位のオッパイとお尻、浮気でやはりＴバック一枚になって抱き合う立位のオッパイとお尻における横乳の美しさが絶品。三人目の客とシャワーでの愛撫でオッパイをこれでもかとのミセミセが圧倒的な迫力なうえ、ブラとミニスカで寝ころぶかっこうでのパンティーがちらつくフェチズムも捨てがたい。アナは客とのセックスが服を着ている終わったあとなのと、夫にバックで挿入されるセックスがＴシャツのままでオッパイをださないのが残念。ママが店で厳しいハッパをかけるダンサーのビキニ水着はオマケ程度で、ジャニスが下着になるのは、やめてくれーって感じ。
　不満をあげればきりがないが、とりあえずはジェニンの乳首で体力が気持ちよく消耗できるようだ。