ＳＩＬＩＰ
（のぞき）
　
07年：セイコ・フィルムズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：ダイアナ・スビリ
　　　 フランシン・プリエト
　　　 ポロ・ラヴァレス
　ダイアナ・スビリとフランシン・プリエトの共演によるセクシー・サスペンスで、巨匠ジョエル・Ｃ・ラマンガンが計算のたけた演出でみせる。ラクエル・Ｎ・ヴィリアヴィセンシオの脚本がたくみだともいえる。
　冒頭、竹細工の籠を編むところが興味深く、これを仕入れる男がいて、牛に荷車を引かせる行商とわかる。ちょくちょくフィリピンでみかける旅の販売人である。籠や帽子、ほうきなどの竹製品だけでなく、リコ（ポロ・ラヴァレス）がアルミの風鈴などを売ってまわり、風鈴のショットに金属音がかさなることをリコがやってきた象徴のように使っている。叔母（エヴァ・ダレン）の経営する食堂で働くテス（ダイアナ）がリコと知り合い、めでたく結婚となる。二人がメールでやりとりから、低収入の庶民にまで携帯が普及しているのがわかる。リコの故郷へ向かうバスの中でテスが黒い人物の幻覚をみて、さっそくミステリー・タッチをうかがわせる。実家には口のきけない老人の使用人のポルド（クリス・ダルス）が住み、親切ながらも、庭に鳥の死骸を埋めているといった謎の行動であやしさをにおわす。両親の墓にリコが結婚を報告しているときにテスが再び黒い人物をみて、ホラーものかなと感じさせる。教会でミサの最中にリコをながめていた女がでていき、テスが嫌な気分になる。生活の必要でリコが行商へ出発で、妊娠したテスが一人になってからがいよいよ本筋へと入る。リコの荷物の中にテスが教会にいた女とリコのツー・ショットをみつけ、腹立たしさで破って捨てる。水浴びの囲いの中には口紅と香水があって、ますます不信感がつのる。夜にポルドが襲ってきて、包丁で首を切って追いはらうが、このあたりは幻想だと思っていたものの、朝にテスが包丁を洗うショットにつながり、現実だったのかと驚かせる。山羊を飼っている山の生活をリアルに描きつつ、ポルドがいなくなり、携帯がつうじず、ラジオがうまく受信しないなどでテスの孤立を示し、町でテスがセリア（フランシン）に声をかける設定へとつながる。あまりにも安易にテスがセリアを自宅へ誘っているのが説得力を欠く。しばらく二人がレズっぽい感情を抱くのをにおわすも、いつかの囲いの中にあったのと同じタイプの口紅をセリアが差しだしたのでテスがピーンとカンを働かせ、同じ香りの香水に疑惑をもたげる。リコが帰ってきてセリアのいるのを不信がるも、とりあえず認め、テスとリコの愛撫をのぞいたセリアの表情の変化に新たなドラマを予感させる。水浴びでセリアがリコのチンポをみたあたりからテスが浮気のイメージにとりつかれ、嫉妬でリコを問いつめるとぶたれる。リコの暴力によって、実は仮面をかぶった偽善者かなとの伏線をはる。セリアとリコのツー・ショットを発見で、テスが二人の隠された過去を知ってセリアにくってかかる。リコがセリアを追いだすと、セリアが肉欲の挑発を残してでていく。荷車から風鈴の音が聞こえるのでテスがきてみれば、中でリコがセリアとセックスしている。ついに思いあまったテスがセリアを包丁で刺し、リコが死体を井戸に投げ捨てて隠す。との型どおりに進んだ三角関係のストーリーは、フィリピン映画にイヤというほどあふれているお決まりの殺人に発展の結末をむかえてチャンチャン。ああ、くだらねえ、なんてコバカにした感想が浮かんでくる。川原で黒い衣装のセリアをみかけてテスが驚き、井戸をあさると死体が消えている。前にテスが目撃した黒い人物はセリアだったのかとの謎がとけるも、まだ先がある。セリアが生きていてリコと会っていると察したテスがリコを責め、否定したので今度は錯乱からリコを刺す。リコの従兄弟のランド（ジム・ペバンコ）に救われ、ランドの要請で警察が井戸を捜すが、なにもでてこない。そんなときリコが戻ってきてテスの異常に直面し、病院で妄想癖と診断される。すべてが夢オチなわけで、だとポルドの行為の不自然さや安易なセリアの招き入れに納得がいくし、セリアがいることへのリコの驚きがヘンといった欠点のように思われた部分がワザとだったのね、としてやられた苦笑いがおきる。さすがジョエル・Ｃ・ラマンガンじゃないか。精神病院でもセリアの亡霊をみるテスをポロがやさしく看病で一年後、息子のジェーソンが生まれ、退院したテスが力強く「消えろ」と呼びかけてセリアの陰をふりきる。ポルドも加わって、ジェーソンが神父（トニー・マベサ）から洗礼をうける。七年後にセリアがジェーソンへとりつこうとしているのを暗示で終わる。住環境を含む山の暮らしや、玉ねぎの共同収穫などの農作業のようすといった描写に好奇心が刺激される。ちょっと七年後のエピローグは余計にも感じる。
　とにかくお目当てはダイアナ・スビリとフランシン・プリエトのお色気なので、すべての評価はそこにかかるというもの。ダイアナは結婚前の食堂のトイレでイチャイチャや、山の家へきてのセックスが露出たらずだし、ポルドに襲われる際に太腿のアップまでだし、囲いの中の水浴びがパンティー一枚で、すき間だらけに竹を組んだ囲いなので容易にのぞけてプラヴァシーの低さを痛感させるのに、オッパイが隠れっぱなしで不満。囲いの中でリコと抱き合うときは、水をかけられたシャツに浮かぶ乳首がみえづらい位置にある。でも白いシャツやキャミソール、スリップの衣装をノー・ブラで着ているから、全編に薄っすらとしたスケ乳首が楽しめる。フランシンとレズのごときたわむれをくり返すところがハイライトといえて、雨の中で濡れて乳首にシャツが貼りつき、蚊帳の中でトップレスになってのじゃれ合いは枕でバストをおさえたままなのがイマイチながら、川原でフランシンの背中を石鹸で洗ってあげるダイアナは、斜めから横乳の乳首が全開にゆれている。立ちあがった二人の素っ裸のうしろ姿もチラッとおがませてくれる。フランシンは白いスリップなど、やはりスケ乳首を披露のうえ、水浴びで濡れたパンティーがお尻にピタピタの手ブラによるトップレスが興奮をくれる。悪魔的な笑みを浮かべる、いかにも役柄に合った魅力がゾクッとさせるものの、リコと真っ裸で森の中を走るシーンでポロ・ラヴァレスのほうのお尻がみえているのに、フランシンは肝心のパーツが木や葉の陰になったまま。二階から囲いの中が丸みえとの構図でテスがリコの水浴びをのぞくときにポロのお尻だし全裸ショットが入るのは、ジョエル・Ｃ・ラマンガンがオカマゆえの趣味だろうか。いずれにしてもダイアナ、フランシンともに大胆なヌードを欠いたのが残念だった。