ＳＩＬＡＫＢＯ
（感情の爆発）
　
95年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：セザール・モンタノ
　　 　アリス・ディクソン
　　 　アンジャネット・アバヤリ
　　 　マージョリー・バレート
　　　 ジョコ・ディアス
　　　 ロベルト・アレヴァロ
　　 　レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ
　　 　アリシア・アロンソ
　セザール・モンタノ演じる主人公がサックスを吹く出だし。ウィリー・クルースによるブルースの調べがアンニュイな雰囲気をつくっている。
　けっこうフィルム・ノワールとしてイケるんじゃないか、と期待させる。
　ちなみにウィリーの音楽はブルースによる統一した印象にはなっていないものの、低音や不協和音を使った効果がまずまずで、けっこう評価できるところ。
　ミシェル・パートン演じる女性がやってくると、セザールに抱かれる。オッパイがみえないのは残念だが、半裸になってのラヴ・シーンがタイトル・バックとは、嬉しいじゃないか。
　このミシェルが殺されてドラマがスタートする。セザールは刑事との設定で、昨晩に抱いたばかりの女が犠牲者だから、自分も容疑者になる可能性を秘めながら捜査していくわけである。アリス・ディクソンとジョコ・ディアス演じる同僚がいて、売春婦を狙った変態の犯行だろうと、美人のアリスによるオトリ捜査が実行される。まさかアリスが脱ぐまい、とは思っているのだが、車の中でチンポを処理しなきゃいけなさそうな状況に陥ったり、けっこうおかしい。とくにレイ・“ＰＪ”・アベリアーナ演じる別件の売春婦殺人犯とホテルへ入ったときなど、黒いイヴリングのアリスに向かってレイが「ハダカになれ」といっているが、そんな「オレだってアリスのハダカをみたいよー」と声がでそう。
　レイが殺人するシーンでは、犠牲者のオッパイもお尻もバッチリで、けっこうウハウハ。
　一方でマージョリー・バレート演じる殺人事件を目撃したと証言する女がでてきて、椅子に座るときにパンティーをチラつかせるポーズをとるから、かなり怪しい伏線。目撃者保護のプログラムでセザールがガードする展開になるのだが、明らかに誘惑してくる。それでセザールのほうもキスしながら胸の谷間に手を入れるし、スケベねー。海岸ではハッと息を飲むようなハイレグのビキニを披露してくれて、とくに座った横からのボディー・ラインが色っぽく、マージョリーはなかなかみせてくれる。
　アンニュイからはほど遠い描きかただが…
　予想通りマージョリーの告発は虚言だったものの、このサブ・ストーリーもしっかりメインにからんでくる扱いになる。
　本来はアンジャネット・アバヤリが出演しているから、ＡＪのセクシー・シーンを目的にしてみた映画。ちゃんとワクワクしただけのものが用意されていて嬉しい。セザールの恋人であるバーの女という役柄で、異常に嫉妬深い性格づけにされている。まずはバーの奥の楽屋の場面から登場。ビキニの女たちがいる中、ＡＪが水着でないのはアレッという感じだが、友人を演じるグライデル・メルカドがブラをつけている光景にドキドキ。そのままグライデルはビキニにスケスケの布を巻いたスタイルで誘惑してくれる。セザールと階段の踊り場でセックスするときにＡＪが脱がないのもアレッだが、仮面をつけたダンサーたちのいる店内で、ついにセザールがこない不満からキレて、私が踊るとステージでストリップを始めるところが全編のハイライト。ワンピースの肩紐を落とし、バストの谷間をあらわにしていく。それはもう肌のしまりといい、艶のよさといい、理想に近いオッパイを連想させる。黒いビキニの下着になると、プロポーションのみごとさがまた特筆もの。キュッとしまったウェストといい、キリッと切れあがったヒップといい、女性の美の究極と表現しても過言ではないほど。しかもオッパイの迫力は言葉で賛辞できる能力をはるかに超えているが、よくみると片方の乳房だけブラから乳首が半分はみでている。
　ウワー、みみみ、みえちゃってるよー、と放心状態。
　カーテンの陰にボディーを隠してブラとパンティーをとるフィニッシュは、全裸を公開しないことがわかっていても、中身を想像するだけで燃え尽きるまで追いこんでくれる。
　ＡＪはさすがすぎる。
　ただアリスとの対決になるクライマックスは、途中でプールに落ちるものの、ともに水中シーンは吹きかえを使っているようだし、水からあがっても衣装がスケていなし、貼りついてボディー・ラインをくっきりにもしていないからイマイチ。
　映画はセザールとバーのヤクザとの格闘や、レイとジョコのカー・アクションなど適当に見せ場を盛りこみ、とにかくあきさせないような構成になっている。さすがジョエル・Ｃ・ラマンガン監督なのだが、冒頭のイメージにあったフィルム・ノワールとは別世界で、どこか肩透かしをくらったようなもの足りなさが残るのは事実。アリスがだんだんとセザールを疑い始め、ついには逮捕となり、自暴自棄に荒れていたセザールがアリスを許すラストも説得力がない。普通ここまで崩れた信頼関係というのは元に戻らないもので、たとえ謝罪しても形だけの修復にすぎず、一生シコリになるのが実際のはず。
　甘い終わりかただなあ、とマジでバカにしそう。
　ムーディーなフィルム・ノワールがダメなら、ハード・ボイルドもフィリピン映画には無理ということか。
　また犯人がミエミエなのも困った要素。個人的には犯人当てというのは苦手なほうで、市川崑の“金田一耕助”シリーズで加藤武が演じた等々力警部なみの推理力しか持ち合わせていないと思っているのだが、そんな人間でもこれくらいのストーリーなら容易にわかってしまう。
　本格ミステリーも落第となると、どうすればいいわけ。
　結局、ＡＪのような女優の魅力は間違いなくトップ・レヴェルなので、それを楽しむしかない、という判断に落ち着くのが本音といえそうだ。
　ＡＪ、好きよー。