ＳＩＧＡＷ
（叫び）
　
04年：メガヴィジョン・フィルムズ
監督：ヤム・ララナス
主演：リチャード・グチェレス
　　　 エンジェル・ロクシン
　　　 ジョマリ・イリアーナ
　　　 イサ・カルサド
　　　 ジェームズ・ブランコ
　　　 エリア・ゲヴァラ
　　　 ロニー・ラサロ
　わりと正統派ホラーといえるかもしれない。ヤム・ララナスが黒を基調にした画面づくりで不気味さを盛りあげ、霊の怨念を描く。またリチャード・グチェレスとエンジェル・ロクシンという、人気沸騰のカップルを主役に、アイドル映画の側面もある。
　リチャード演じるレストランに勤める若者が、ルイ・マナンサラ演じる母のもとから自立し、古いアパートで一人暮らしを始める。同じ階にはジョマリ・イリアーナ演じる警備員が住んでいて、イサ・カルサド演じる妻に暴力をふるい、エリア・ゲヴァラ演じる幼い娘に対しても横暴。ときにイサにピストルをつきつけたりもする。エリアはリチャードが声をかけても無視で、遊んでいるかと思えば、突然、姿を消す。ジェームズ・ブランコ演じる設計士の隣人が、ドアのノックの音に開くとイサがいて、夫から守るため、娘をあずかってほしいと頼まれる。リチャードは廊下やベッドの下に人影を感じたり、夜に天井から血がしたたってくる幻想のうちに金縛りにあったりの恐怖を体験をする。エンジェル・ロクシン演じるリチャードの恋人が訪ねた帰りにエリアがエレベーターに乗ってきて、子どもっぽく全階のボタンを押すおふざけにきょうじたはずが、別の男が乗ったときにみえなくなる。あれっと不審がって降りると、またエリアが乗っている。エンジェルが気味悪くてリチャードに電話を入れ、リチャードは天井に浮かんだ悪魔の顔のようなシミをペンキで塗りつぶす。ジェームズはエレベーターでジョマリとはち合わせ、たびたびエリアをあずかることを脅される。それでジョマリがこん棒をもってイサに迫ったとき、イサがジェームズの部屋のドアをたたいて助けを求めるも、ジェームズが聞こえないふりをする。ジョマリがイサの頭にこん棒をぶつける瞬間を、リチャードがドアののぞきレンズから目撃でハッとなる。相変わらずベッドの下で音がきしみ、エリアが現れたのに消えて、ロニー・ラサロ演じる管理人にたずねてみれば、リチャードの階にはほかに誰も住んでおらず、前に殺人事件が起こった事実を教えられる。アパートのフロアーで響くすべての声や音は現実じゃないとわかり、リチャードが耳をふさぎ、血だらけのエリアの亡霊がでて、たまらず母の家へ身をよせる。そうとは知らずにエンジェルがやってくるや、空き室となった元ジョマリの部屋へ閉じこめられ、身体をもてあそばれたうえ、鏡の中に血だらけのエリアをみる。以来、リチャードの目にエンジェルの顔が一瞬、イサとダブり、エンジェルと食事するレストランや、コメディーを上映する映画館でもイサが現れる。エンジェルは映画館のトイレでドアに血がたれてきて、エリアがのぞくのに悲鳴をあげる。エンジェルの家へ逃げればポチョロ・モンテスとテッシー・ヴィリアヌエヴァ演じるエンジェルの両親がリチャードを責め、もはやどこへいっても呪われるならと、仕方なくもう一晩だけリチャードが問題のアパートに泊まる。
　ようは成仏（キリスト教だから昇天か）できなかった霊魂が未練の残る現場をうろつき、救いを求めても拒否された怨念を、たまたまやってきた住人にとりつき、訴えかけるとの内容で、かなりシンプルな構図。『リング』のヴィデオ・テープのような新しいアイディアに乏しいものの、シンプルゆえに恐怖への結びつきを素直に感じる。安易に妖怪やモンスターがでるシラけもなく、なかなかゾクッとくるでき。主人公に非があってたたられるのではなく、まったく偶然という霊との遭遇もかえって効果をあげる。
　血だらけのイサが助けを呼んでリチャードに迫り、ジョマリのスキをみてピストルを奪うと、実はイサが撃った事件の再現がリチャードの前で展開するラストまで、一気に引きつけるヤムの語り口がけっこう好調。確かにこけおどしの部分を含むながら、オーソドックスに“ホラー”というイメージの表現が買えて、どこか懐かしくさえある。らせん階段の風景など、最近のＣＧ過多の凡庸な作品とは違ったムードづくりが評価にあたいする。
　それでエンジェルの魅力はどうかだが、最初のほうでリチャードに抱きつくときのななめ横顔が意外とブスっぽくてびっくり。でも美人なのは間違いないし、ニタイプのジーンズや黒パンに萌える、といったところ。映画館のトイレでちゃんとズボンをさげてくれれば嬉しかったけど、それは無理な注文か。イサはパンツ一丁のジョマリの背中をふくシーンがあって、もしイサがパンティー露出だったらイッたかも、なんて妄想がわきあがった。