（ＳＧＴ． ＣＬＡＲＩＮ ＢＡＬＡ ＰＡＲＡ ＳＡ ＵＬＯ ＭＯ）
90年：リーガル・フィルムズ
監督：ウィリー・ダド
主演：マックス・ラウレル
オレステス・オヘダ
モニカ・ヘレラ
ローラ・ロドリゲス
ルエル・ヴェルナル
チャーリー・ダヴァオ
ロミー・ディアス
マックス・アルヴァラド
ラモン・“ボーイ”・バガチング
トニー・ベルナル
ロンメル・ヴァルデス
アレックス・デ・レオン
政府軍に所属するも、反逆部隊となって反政府ゲリラと戦った連中を主人公におくアクション作。戦争もののジャンルでなく、小競りあい戦闘ものとでも呼びたいＢ級ピクチャーといえる。日本では英語のタイトルが入る英語のふきかえ版がアメリカ・イタリア・フィリピンの合作としてヴィデオ発売になり、今も資料にそうあるが、リーガル制作の百％のフィリピン映画に大げさな、なんて苦笑いがおきる。
ディスコ・パブで白人客がダンサーにからみ、ヘルプの求めにダニー・クラリン（マックス・ラウレル）が乱闘で腕っ節のよさをかわれ、ミラー軍曹（オレステス・オヘダ）に海兵隊へスカウトされる。恒例の厳しい海兵隊のアスレティックや射撃の訓練はほどほどに、アメリカ人を人質にとるゲリラの壊滅作戦にミラー軍曹たちとダニーが参加し、潜水服で海から侵入でゲリラの司令官（ロミー・ディアス）をしとめる。いったん負傷で入院も、回復後に軍曹に昇進で仲間たちの祝福をうける。また恋人のマリー（モニカ・ヘレラ）が山岳民族を支える活動をおこない、ダニーも経済的な援助で恩人になる。一方、故郷に砂金がでて強欲な副市長（チャーリー・ダヴァオ）が土地の買い占めをはじめる。ダニーの母（ナティー・サンチャゴ）が立ちのきを拒否のため、副市長とつるむ警察署長（マックス・アルヴァラド）がダニーの弟のベニー（レーモンド・バガチング・３世）を殺す。ショックで母が廃人同然だとマリーから連絡に、マックスが休暇を申請も許可されず、かえって直属の上官（ダニー・リエル）が将校に怒られるしまつ。勝手に帰って市長に直訴も、法律重視で弱腰。そんな市長を署長が殺害で罪をダニーになすりつけ、キレたダニーが署長を殺し、市長に昇格の副市長も亡きものにする。海兵隊の仲間たちを呼びよせ、山岳民族を加えて独自の部隊を結成のうえ、農民を苦しめる反政府ゲリラの征伐にのりだす。心配のマリーが自首を懇願も、ダニーの決意が固く、ふたりが結婚。山の貧しい村では反政府ゲリラが食糧の調達で強引な略奪をはたらき、嘆く村民のために物資をとり返す。ゲリラの隊長のウスーラ（ルエル・ヴェルナル）が激怒で、犯人を教えろと女性や子どもを含む住民たちを順番に射殺し、村長の命がけの伝達にダニーが単独でつかまる。冷徹に村長を始末のウスーラがダニーの拷問を楽しむが、仲間たちの夜襲で救出。多勢のゲリラに少数の自分たちが立ちむかう必要で陸軍の戦車を盗む。これによってゲリラを粉砕でウスーラを殺す。もはやおたずねもののダニーをミラーがマリーの仲介で訪れ、投降をすすめると、尊敬するミラーの説得にダニーが応じる。ミラーがマリーと将校にダニーの意思を告げるも、すでに討伐軍がダニーの部隊を包囲のため、攻撃中止の指示に急ぐ。途中でゲリラの残党のリサ（ローラ・ロドリゲス）たちに撃たれて傷をおうが、なんとか駆けつけたときは手遅れで、最後の激戦のあと。
スタンリー・ウロンとレレン・ウバルド・ジュニアのシンプルな脚本をウィリー・ダドが早めのテンポで語り、とりあえず退屈を招かない流れのよさと評価できる。あえて深みを避け、各エピソードを適当な長さにおさえる。逆にドラマの構成が苦手なのかな、ともおしはかる。
ダニーの部隊が鉄の絆と友情で結ばれるあたり、いかにも野戦で築いた信頼関係の感じがうかがえ、戦車の強奪ではやる部下のエルニー（トニー・ベルナル）に「海兵隊には発砲するな」と銃をつきつけるのが唯一のいざこざ。そのエルニーがウスーラをしとめるも、総攻撃の猛攻で亡くなる。山岳民族のメンバーが無条件でダニーに参戦ながら、犠牲者をだす心情を無視のあつかいは、さすがに人種差別といぶかる。
連絡手段をもたない山で村長が伝令で走るのはよいにして、討伐軍に待機を先に無線で必死にせまる設定の欠如は、いささかダニーの部隊を全滅のヒロイズムへつなぎたいご都合主義にとれる。山岳民族の幼い子どもを救助でかかえたままダニーが弾丸をあびるラストは、ダニーが子どもを盾に使っているようにもみえ、おマヌケな印象を残す。
リサがあっさりダニーを殺さないウスーラに不満の反面、父親の戦死でダニーの軍に恨みをひめるなど、憎しみの連鎖はほんの少しの暗示ににじむ。
とにかく反政府軍のあまりに下品で残酷で非人道的な描きかたは、おそらくアキノ政権化における政治的なシチュエーションの反映ととらえることが可能で、そこそこの興味がわきおこる。
ロケはフィリピン映画におなじみの滝が落ちる池のほか、クラーク近郊のアメリカ軍墓地や、おもにパンパンガと思われる。
女優はモニカ・ヘレラが美人だが、初夜などのセクシーなシーンを欠く。ローラ・ロドリゲスは夜襲に驚くときにウスーラと寝ていて、シーツをボディーにあてる。アメリカ人を捕獲のゲリラとウスーラのゲリラには女戦士がまじり、配役にサラー・カルロス、エリカ・アヴェンダニョ、マリー・アン・アレナス、ベット・カスティロ、マリー・フェ・パステーリアのほか、クリスティー・ポルトゥガルの名前が読める。冒頭のディスコ・パブのミス・クリスティン・ロレーンというダンサーを演じるのがマリクリス・ガルシアかどうか不明。赤いランジェリーに水をかけて濡らすも、オッパイがスケずに終わる。バックのふたりのダンサーは店で踊る本物だろう。
※ この作品は『ゴリラ・コマンドー』の題名でヴィデオ発売されたことがある。
