ＰＥＱＵＥ　ＧＡＬＬＡＧＡ’Ｓ　ＳＣＯＲＰＩＯ ＮＩＧＨＴＳ　２
　
99年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エリック・マッティ
主演：アルベルト・マルティネス
　　　 ジョイス・ヒメネス
　　　 デイジー・レイエス
　　　 ヤヌス・デル・プラド
　　　 マニー・カスタニェーダ
　　　 ルシアノ・Ｂ・カルロス
　　　 チェリー・パイ・ピカチェ
　開巻と同時にオッパイを丸だしにして着がえる女子学生たちが登場。そこへジョイス・ヒメネス扮する新入りが案内されてきて、ここが女子寮であるとわかる。フィリピン映画界に芸術的エロスを持ちこんだ『ＳＣＯＲＰＩＯ　ＮＩＧＨＴＳ』の続編であるだけに、今回も濃厚な官能の世界が待っているだろうとの期待感が十分に漂ってくる。
　続編とはいっても物語にまったく関連性はなく、完全に独立した作品。題名に前作の監督であるペケ・ガリアーガの名前が冠されているが、監修とストーリーを担当しているだけで脚本には携わっていない。それでも名前が題名に加えられているということは、前作がいかに衝撃的であり、評判となったかがうかがえるようだ。
　本作では人気のジョイス・ヒメネスがキャストされているだけに、どのようにその豊満な肉体を露出してくれるかに、いやがうえでも注目が集まる。
　舞台となるのは共学の大学で、アルベルト・マルティネス扮する講師がジョイス扮する女子学生に翻弄されることなる。いわば教師と教え子との禁断の愛である。教室での授業シーンに続いて、それぞれの部屋と寮での生活シーンが同時に描かれてゆく。前作同様に二人の置かれた生活環境を丹念に描写していて、エリック・マッティ監督の力量発揮とでもいうべきところなのだが、どうしてもペケの描いたリアリズムある画面づくりと比較するとマネの枠をでないし、一歩譲るとは感じざるを得ない。ただアルベルトの部屋から寮がのぞき見できるようになっているシチュエーションがくせもので、窓越しにすね毛を剃るジョイスや、チョコレートのしずくが胸にたれて、乳首をあらわにしてふきとるジョイスをみせつけられれば、当然のことながらその魅力の虜になってしまう。さらに図書室での椅子に座るジョイスのスカートの奥からチラリとみえるパンティーをのぞくシーンなど、若くてモンモンしている教師なら、どこの国でも同じような誘惑と戦っているのではないかと思えてくる。
　ジョイスの寮では同室の者が男を連れこんでセックスにふけり、ふと目覚めたジョイスがこれを目撃するあたり、女性のセックスへのあくなき興味と欲求にもふれているようだ。
　もっともデイジー・レイエス扮する女教師とアルベルトの職員室での愛撫シーンなど、他の教師にみつかるのではというサスペンスの盛りあげかたがうまく、その分、エロティックさが薄まっている点が残念。アルベルトとジョイスのカラミは図書室でのセックス、映画館での愛撫、食堂での愛撫が控え目な描写で、やっと女子更衣室でシャワーに濡れて衣服をスケさせながらのセックスで見せ場となるのだが、やはり周囲に発見されるのではとのサスペンスと表裏一体になっていて、どっぷりとエロスの恍惚に浸らさせてくれないのが不満。アルベルトの部屋へジョイスがやってきて、初めてジャマな要素の入らない官能のベッド・シーンとなるも、前作のような興奮が得られないのは演出力の差と解釈すべきなのだろうか。陰毛までみせたジョイスの裸体のみが迫力を持って圧倒してくる。
　ドラマはアルベルトにジョイスがのぞかれていると気がつくことをきっかけにして始まり、次第に悲劇へとなだれこんでいく展開。これに置かれた境遇に悩んでいる少年の自殺劇がからんで、確かに単純な性を扱ったジャンルではなく、貧困や妬みが生みだすフィリピン社会の根底にある問題に言及していることがわかる。マリファナをまわしのみしての乱ちきパーティー描写など、アメリカ映画で表現されている同種のシーンとは違って、どこか光のみえない生活からの逃避というか、すごく諦観的なやるせなさのようなものを漂わせている。これがフィリピン人自身の手によって描かれているあたりに、文化的な興味深さを感じとる。
　やがてジョイスから相手にされなくなり、思いつめたアルベルトが誕生パーティーにまぎれ、女装して女子寮に忍びこむシーンで映画はクライマックスへ。二段ベッドに寄りかかって女の格好のアルベルトとジョイスの立ちセックス。そこへもう一人女子大生がやってきて、異様な三人でのからみ。ついにみつかり、アルベルトは周囲の者からボコボコに蹴りを入れられる。セックスの欲求が行きつく先は、こうも人間を異常に追いこむかといった恐ろしさをゆがんだ形で強調しているようでもある。アルベルトが汚物の中にまみれて街の片すみに捨てられてゆくラストまで、ほとんど希望のようなものがうかがえない。
　明るく陽気なフィリピーナという固定観念から解放してくれる作品であり、裏にある本音のいったんをみせつけられたような気になってくる。前作には遠く及ばないものの、確かに一見に価する映画ではないか。
　なお、女学生の一人役にサンドラ・ソベルを確認する。