（あなたにだけ）
10年：ＡＢＳ−ＣＢＮプロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ローリス・ギリエン
主演：ロルナ・トレンティノ
ベア・アロンソ
クリストファー・デ・レオン
ココ・マルティン
エンチョン・ディー
マイルス・オカンポ
シャイナ・マクダヤオ
ディーテル・オカンポ
サンジョー・マルード
エンプレス
ローレン・ヤング
ドミニク・オチョア
アイギ・ボーイ・フロレス
ファミリーの群像劇であり、ただの良質なドラマにすぎない。
頑張って働いたおカネで建てた新居のお披露目の日に、家族を捨てた父親のフランコ（クリストファー・デ・レオン）が十年ぶりに姿をみせる。妻のアマンダ（ロルナ・トレンティノ）が許すことを決めて同居を認め、長男のコビー（ココ・マルティン）、二男のジェームズ（エンチョン・ディー）、二女のリサ（マイルス・オカンポ）が同意も、父親の蒸発のあとに苦労を強いられた長女のダイアン（ベア・アロンソ）だけがかたくなに拒む。
子どもたちはそれぞれに問題をかかえ、インテリア・デザイナーのダイアンは同僚のジョン（サンジョー・マルード）のプロポーズをうけ、幸福の絶頂のはずが、アメリカ合衆国へいった以前の恋人のポール（ディーテル・オカンポ）が戻り、気持ちがよろめく。ポールのアタックで恋愛が再燃のとき、アメリカ合衆国にポールが妊娠中のフィアンセを隠すとわかる。ナースのコビーはプレイボーイで次々とガールフレンドを変えるも、コビーの子をはらんだ孤児のカレン（シャイナ・マグダヤオ）が現われ、アマンダがカレンを家に住まわせる。カレッジの水泳選手のジェームズは早く母親のアマンダをラクさせたいため、優秀な成績による卒業で高給な職についてほしいと願うダイアンの期待に応えきれず、試験で不正をおこなう。コビーとジェームズが父親を憎もうと考えた過去もつのに対し、まだハイスクールのリサはフランコの記憶がないが、父親の愛情を知らずに育ったせいか、男子の同級生（アイギ・ボーイ・フロレス）が好いてくれるのに嫌悪感を示す。
フランコが愛人のジーナ（プリシーリア・メイレーリエス）と関係継続をコビーが目撃でアマンダがフランコを追いだし、弟に劣等感をいだくコビーがからんでジェームズとケンカ。いよいよ家庭内がバラバラの危機にダイアンがヤケでポールに走り、その自責の念でジョンに婚約指輪を返す。
ジェームズのクラスメートで交際相手のロレイン（ローレン・ヤング）が、悩んで悲観的なジェームズに「どんな家族にもトラブルがあるのよ」というのがテーマだろうけど、結局は宗教に救いを求めるフィリピンっぽい低次元にとどまる。部屋に閉じこもったアマンダが神に祈っていたとの展開で、しょせんは他力本願ねとあきれる。しかもアマンダが末期ガンにおかされ、敬愛するエリック神父（ドミニク・オチョア）にのみ打ち明けたとダイアンに告白に、肉親の死で解決のありきたりな作劇かと落胆。
ただしリカルド・リー、アンナ・カレニナ・Ｌ・ラモス、ラルフ・ハシント・キブラト、ミア・ルイーズ・ラモス、ジョン・ポール・Ｅ・アベーレラのストーリーによるリカルド・リー、アンナ・カレニナ・Ｌ・ラモス、ラルフ・ハシント・キブラトの脚本は、アマンダにも責任を問うあたりが単細胞な構成を避けるかな。何度もフランコの不倫に耐えたアマンダは、自分も他人の子を生んだ事実をバラす。養育権を放棄で今は貧民街に暮らす娘のアグネス（エンプレス・シュック）をアマンダがダイアンと訪ね、母と名乗らずに会うシーンが情感をつくる。
もっともアマンダの臨終をみとって家族が絆を回復のうえ、ダイアンがアグネスにアマンダのことを話し、カレンの出産でコビーが落ちつく。赤ん坊の洗礼式にジョンとロレインとリサを慕う男子同級生も出席の、あまい予定調和にまとまったスケールの小ささ。ていねいな演出ながら、ときにローリス・ギリエンは感情のぶつかり合いをストレートな手法であらわし、平均枠の範囲内におさまる。
まあ一家の大黒柱が母と長女で、男どもがどうしょうもない図式がフィリピンの現実を反映といえる。十三歳のリサにフランコやコビーが自動車の運転を路上で教習のバカさ加減がいかにも。フランコがコビーにギターを買い、アマンダの病室で演奏にフィリピン人のギター好きがわかる。
女優陣はロルナ・トレンティノが初老に達し、さすがにストライク・ゾーンをはずれる。ベア・アロンソはジーンズと黒いタイツ型の衣装にうかがうプロポーションに魅力を感じる。マイルス・オカンポはまだ子どもの年齢だし、ブスっぽい。シャイナ・マグダヤオにボディーへ着衣がフィットの誘惑がなく、コビーとセックスで露出ゼロに残念。エンプレス・シュックは色気を欠き、ローレン・ヤングはあまりの厚化粧にがっくり。プリシーリア・マイレーリエスは、ただ歩くだけに終わる。アマンダの同僚を演じるジャジャ・ゴンサレスとビューティー・ゴンサレスに、リサの同級生を演じるジェンマエ・クストディオとオーブリー・カラアンは、やはり立っているか、座っているのみ。ジェームズとロレインの教師役のアイダ・エスピリトゥとメイド役のブレンダ・ポルカディーリアはおばさんになる。コビーのガールフレンドのうち、家の披露パーティーに出席役のミッチ・ダンテスと、ナースの同僚役のヒヤスミン・ネリがかわいいし、セックスをすませて帰る役のジョンヌ・モンサントが素晴らしい。全裸でベッドから起きるや、黒いパンティーをはいて立ちあがり、トップレスに黒いブラをつける。乳首はみえないも、ローライズのパンティーが食いこむお尻のラインと、紐なしブラに浮かぶバストの谷間に興奮を誘う。
ディーテル・オカンポがバスタオルを巻いた半裸のショットは女性ファン向けだろうけど、ゲゲゲのゲ。このシーンでベア・アロンソのセミ・ヌードがほしかった。
