“ＳＡ　ＰＩＬＩＮＧ　ＮＧ　ＩＢＡ”
（ほかの側から）
　
98年：リーガル・エンターテインメント
監督：ジョニー・ホセ・クルース
主演：デイジー・レイエス
　　　 パトリック・グスマン
　　　 ジョルジア・オルテガ
　　　 アドニス・ラクサマナ
　　 　クリスティン・カルロス
　　 　ロンロン・カレホ
　　　 アリエル・レイエス
　　 　リザ・カレホ
　幸福な日常を通り過ぎていった一時の迷いともいうべき不倫のロマンスを、実にオーソドックスに描いている。よくできているのだが、それだけにかえって物足りなさが残る作品である。
　舞台となるのはラ・ウニオンとバギオで、とくにラ・ウニオンは友人の家があって、親近感のある土地だけに個人的な興味が盛りあがる。パトリック・グスマン演じるのは建築家で、ジョルジア・オルテガ演じるクッキング・スクールを開く妻と、一人息子がいる典型的な中流家庭。デイジー・レイエス演じるのはクリスティン・カルロス演じるオーナーとフラワー・ビジネスを営む女性で、アドニス・ラクサマナ演じる恋人と同棲状態にあり、こちらもそこそこ裕福。アドニスは雑な性格ながら、それだけストレートな面をもつことが示唆される。バキオとラ・ウニオンの間を走るバスにしょっちゅう乗り合わせているのだが、二組のカップルに面識はない。それがバス強盗に会うというアクシデントが、すべての始まりになる。
　強盗を退治しようとアドニスがナイフで刺され、彼を病院へ担ぎこむのをパトリックが手伝ったことで、デイジーと知り合いに。アドニスが退院後、ジョルジアを紹介のうえ、四人で食事したりする。
　アドニスとケンカの際に相談相手になってもらったりに、デイジーはだんだんとパトリックに引かれていくのだが、二人が一線を越えるには、また偶然が必要になる。車で送ってもらったときにエンコで修理しようとすると雨が降ってきて、濡れた体をふくうち、つい魔がさして…　と納得のいく構成を考えてある。
　最初は罪悪感のあった二人も、会うたびに打ちとけ、真剣になってくる。パトリックなどジョルジアからのセックスの要求が苦痛に変わるあたり、いかにも深く掘りさげない、それだけにわかりやすい心理の描きかたに、手堅さを感じる。こうなると次の興味は、いかにお互いのパートナーが浮気の事実に気がつくかだが、デイジーは自ら告白し、パトリックは電話の会話を聞かれてしまう展開に。
　ホントきっちり型からはみでない、悪くいえば冒険心のないジョニー・ホセ・クルースの演出である。
　二組が元のサヤに戻るきっかけも、みごとな偶然を準備してあって、デイジーの妊娠、アドニスの苦悩などとともに、パトリックとジョルジアの息子の急病が大きな要因となる。デイジーはアドニスとの結婚を決意し、こっそり式のときにパトリックがお祝いを贈るまで、まったくもって破綻のない、典型的な男女のドラマとして、よくできましたねえ、といった感じだろうか。
　まあ、いいんじゃないかと思う。
　クリスマスと新年を背景においているため、キリストのように体に傷をつけた男たちが海へ入っていく行事など、風俗的な面白さもある。
　もっとも内容と離れて、個人的にはこの作品のデイジーに、ガーンと圧倒されまくる。
　ジョルジアに最初から露出は期待していないし、海岸での水着姿はショーツをはいているうえ、ベッドではシーツをボディーに巻いていて、こんなもんでしょ。でもデイジーにはセクシーな肢体を披露してほしいなあ。
　と願いながらも、最初はアドニスとのシルエットのセックス・シーンに、終わったあとやはりシーツを巻いていて、ムムム不満。パトリックとのベッドでも、太腿のつけ根までみせているのに、胸などシーツをかけていて、起きあがると身体に巻きつけ、もうちょっとなのに… 　なんて妄想にかられながらも、いよいよ映画は結婚式のシーンを迎えてラストが近づき、このままだとダンスしたときの黒いパンツ・ルックと、海岸の船の陰で寝転がって抱き合ったときの網をかぶりながらのラヴ・シーンにおけるワンピース水着が色っぽかっただけかなあ、とあきらめかけたのだが…
　最後の最後に、アドニスと海岸でたわむれるシーンが用意されていた。黒いワンピース水着のデイジーは、海岸を走り、肩車され、振りまわされてボディー・ラインがくっきり。とくに浅瀬でキスしながら抱き合って転がるところが二度もあり、濡れた水着がお尻に貼りつき、食いこみ、お尻の形も割れかたも鮮明に浮かびあがる。
　うー、こんなに挑発的なデイジーには、そうそうお目にかかれるものではない。
　ヌードよりもずっと興奮できるデイジーがいたのだから、それだけで宝石のように価値のある作品だといえよう。