ＳＡＮＴＡ　ＳＡＮＴＩＴＡ
（聖なる聖小母）
　
05年：ユニテル・ピクチャーズ／トニー・グロリア・プロダクション
監督：ローリス・ギリエン
主演：ジェリコ・ロサレス
　　　 アンジェリカ・パンガニバン
　　　 ヒルダ・コロネル
　　　 ジョニー・デルガド
　　　 チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 ピンキー・デ・レオン
　アンジェリカ・パンガニバンが脱いだ、と話題を提供した作品ながら、そんなのはお申し訳程度だろうと想像がつくし、ローリス・ギリエンがありきたりな奇跡ものを題材に、どうあつかったかの興味がわく（ジェリー・グラショの原案にもとづく、脚本はジェリー、ミチコ・ヤマモト、フラン・フエレオの共同）。チェリー・パイ・ピカチェ演じる尼僧の足の傷をアンジェリカ演じる問題の女性が治してチェリー・パイが「奇跡だ」とチンゴイ・アロンソ演じる神父に訴え、チンゴイが「処女マリアがでただの、フィリピンには奇跡だらけだ」とあきれるシーンがあって、いいかえればフィリピン映画には騙りのケース、本当のケースを含め『ＡＮＧ　ＨＵＬＩＮＧ　ＢＩＲＨＥＮ　ＳＡ　ＬＵＰＡ』『ＢＩＲＨＥＮ　ＮＧ　ＭＡＮＡＯＡＧ』など、いっぱい宗教的奇跡を描く作品がみられるだけに、正直なところローリスまでとのあきれ感がわくのは否めない。まあ、それだけ奇跡が好きな国民性ということか。
　キアポの教会を舞台にとり、風俗的な興味はかなりになる。教会の前でサンパギータを売る若い女性がアンジェリカの役で、携帯電話をほしがっていて、レストランで置き引きしたり。教会の中には信者の悩みを聞いて神に祈ることで手数料をとる祈り女みたいな中年女性たちが脇に座し、まずこの存在自体がおもしろい。ヒルダ・コロネル演じるその一人がアンジェリカの母。ヒルダに強要されて家でマリア像に祈る際に上の空だけでなく、アンジェリカは教会でぶつかった身体障害者にケンカを売ったり、教会の柱に噛んだガムを貼りつけるキャラになっている。ある日、ついに家出のあと、帰ってみれば不在の間にヒルダが亡くなり、葬式の真っ最中。しばらくして教会でヒルダの仕事をなに気なく始めてみれば、願いがかなったとのウワサが広がり、長蛇の列ができるわけである。一方でジェリコ・ロサレス演じるエスコート・ボーイこと、男娼がピンキー・デ・レオン演じる中年女性のお相手をつとめ、代理店から借りた車に乗っている。アンジェリカと知り合い、携帯電話を買ってあげるなどで親密さを増し、家出したアンジェリカを泊める。実はすでに幼い息子をもち、ベルティン・ラブラ演じる叔父にあずけている。田舎にはジョニー・デルガド演じる神父がいて、スキャンダルを批判され、キアポにでてくる。ヒルダの部屋がある長屋の一階に間借りし、アンジェリカとヒルダのいさかいを聞く。ピンキーを送った帰り、ジェリコの車が衝突未遂を起こして事件へと進む。リッキー・ダヴァオ演じる対向車の運転手が謝る余裕も与えずに殴りかかってきたため、キレたジェリコが殴り返し、ピストルをだそうとしたので、あわてて先に撃つ。それを自分の息子と同じくらいの年齢にあたるリッキーの息子がながめていたのがわかって、ジェリコがショックをうける。相変わらず救いを求める人々がアンジェリカのところへ集まり、奇跡信仰が深まる反面、母への苦悩をアンジェリカがジョニーに相談し、従兄妹との紹介でジェリコもジョニーに絶望の気持ちを打ち明けるも、ジョニーが無力を痛感するばかり。そして病気だったジェリコの息子が死んで、ジェリコが遺体を抱きながらアンジェリカのもとへ「生き返らせろ」とやってくるクライマックスを迎える。
　教会前広場を大群衆が埋めつくすフィエスタのもようは記録映像を使い、宗教と生活が一体化したフィリピンをうかがわせる。そのくせ神に勝手な内容ばかりを祈り、本来の信仰と祈祷の区別がついていないのが特徴で、おそらくローリスは他力本願なありかたに批判の目を向けたのではないか。またゴルゴダの丘を模して三体の十字架が立つ田舎の教会の庭は、信者たちとひざまずくジョニーの虚無的な表情をとらえることでシンボル的なシーンをつくろうとするも、無宗教の徒にすれば、カトリックが偶像崇拝以外の何物でもないとのイメージにつきあたる。でも裸足で砂漠を歩いたり、自分の死に立ち会うアンジェリカの悪夢がヘタなシュールレアリズムに走らない表現なのを買うし、刑務所のジェリコをアンジェリカが訪ねるラストも印象をあげる。まずまずといえよう。
　それでアンジェリカがどこまで肌をさらしたかだが、ヒルダから薬を塗られるときに背中を大胆にみせるほか、逃げてきたジェリコをかくまった夜にセックスで、黒いブラをはずし、スカートのジッパーをさげて手を入れられるものの、肝心の正常位でジェリコの刺青ばかりを映してアンジェリカのオッパイがなく、結局、お申し訳程度。むしろ家出の直後に近所の男たちの前を闊歩する際のミニスカがあやういくらいのほうがそそり、太めだなあと丸わかりなのがご愛嬌。ほかに熟女のピンキーがジェリコとホテルにいるも、着衣のままだった。