ＳＡＮＧＧＡＮＯ
（居候）
　
(97)年：メガヴィジョン・フィルムズ／シネマックス・スタジオス
監督：トト・ナティヴィダッド
監督：セザール・モンタノ
　　 　ジュディー・アン・サントス
　　 　ジョン・エストラダ
　　　 ニーニョ・ムーラック
　　　 マイキー・ヴィリアヌエヴァ
　　　 エヴァンジェリン・パスクアル
　子役出身のジュディー・アン・サントスは確かに人気スターだが、さすがにアクション映画の相手役はつらい。青春ロマンスやコメディーならともかく、斬ったはったの世界を支えるヒロインとしてブスすぎる。下ぶくれっぽいスタイルの悪さもゾクゾク感を欠くから、ちょっと困る。なんて面食いの意見はファンにとって腹立たしいかもしれないが、とにかくマイキー・ヴィリアヌエヴァの共演だからみてみた。
　露店を開いて生活費を稼ぐハイ・ティーン娘がジュディーの役どころで、ヤクザにからまれたのをセザール・モンタノ演じる幼なじみが助ける。大暴れしてセザールがジョン・エストラダ演じる警官に連行されると、ジョンも幼なじみで親友との設定。ジュディーの姉を演じるのがマイキーで、エヴァンジェリン・パスクアル演じる母が何かにつけ、ヒステリックにマイキーをしかりまくる。ジョニー・ヴィカール演じるエヴァンジェリンの後夫がジョンの実父にあたる、ねじれた人間関係。
　ジョンが食堂でカネを払わないなど、いかにも警官だが、麻薬犯の摘発で正義感ぶりを示す。ところが捜査は芝居で、ザンドロ・ザモラ演じる上司たちとともにシンジケートから賄賂をとっていると判明。エヴァンジェリンの異常なマイキーいじめを仲裁していたジョニーが、ジュディーを犯そうとしてセザールに殺されるなど、人間の印象を逆転させる手法は、たくみに計算して狙ったあとをうかがわせる。
　ジョンがマイキーを人質にとってレイプし、法廷でジュディーに偽証をしいるとセザールを有罪にするばかりか、留置場や刑務所でセザールへ刺客を送りこんできて、この憎しみからは友情よりも親子愛のほうが深い傾向を読みとれるよう。
　刑務所内におけるセザールのアクションはけっこうみせるものの、格闘に勝利して、周囲の囚人たちがセザールの名を唱えるタイミングがワザとらしく、エキストラ的役者を使うヘタさが目立つのはどんなものか。セザールがうまく脱獄するや、ジュディーの案内でマイキーを救いに向かうシーンへつながって、足手まといになるはずのジュディーを連れ、しかも危険にさらし、たった一人で大勢を相手にしようとのバカっぽさにあきれが盛りあがる。だったら頭を使って作戦を練れよ、と感じるものの、単純にバリバリ撃ちまくるだけだから、いったん撤退になるのは当たり前。
　バカ、のひと言に尽きる。
　今度はジョンに銃をつきつけ、マイキーの保護に成功するも、ザンドロたちがやってきて銃撃戦になるクライマックスも同様。照明を消して各人が懐中電灯を持ち、その複数の光をサーチ・ライトのように照らす画面づくりはサスペンスのムードとしてなかなかで、さすがトト・ナティヴィダッドと素直に評価なのだが、やはりセザールの弾ばかりが相手に命中するご都合主義の落胆を抑えるまでにはいたっていない。
　まあ、遊園地のカラオケでセザールが歌い、リリア・クンタパイ演じる老女が夢中になったり、ニーニョ・ムーラック演じる相棒がいきがったりのコメディー要素を適度に入れて、全体のバランスに溶けこんでいるうまさや、貧民街に暮らす庶民のようすを自然に描くなど、うなずける部分が多いのは事実。
　だからこそあと一歩、肝心なところでのポイント不足が決定的なマイナスだったようだ。
　それで目的のマイキーだが、家出してジョンに相談を持ちかけるとき、場所が紐Ｔバックのビキニでダンサーたちが踊るバーの店内。きっとマイキーが極小水着もあやうくステージに立つぞと妄想がふくらんだのに、ないままで残念。ジョンから手ごめを受けるシーンでは、ボディコン衣装からオッパイのみえる寸前で、一応は元気にしてくれる。
　ほかにジュディーが嫉妬する原因になる、セザールにイチャつく女性を演じたジェイアール・デ・ルナが、ホット・パンツ衣装でおいしいそうだったこと。