ＳＡＮＡ　ＰＡＧ−ＩＢＩＧ　ＮＡ
（愛があれば）
　
98年：グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督： ジェフリー・ヘトゥリアン
主演：エンジェル・アキノ
　　　 ジェラルド・マドリッド
　　　 ニダ・ブランカ
　　　 チンゴイ・アロンソ
　　　 フリオ・ディアス
　　　 ピンキー・アマドール
　　　 リチャード・ボニン
　　　 ヴァンジー・ラバラン
　ティーン・エージャーが大人の女に恋する題材は、ミシェル・ボワロンの『個人教授』あたりから一時期ブームがあったように思う。次第に性への好奇心を直接的に扱う内容へと転じ、セックスの指南をしてもらって童貞を失う作品ばかりになったものの、これらの中でキャロル・ベーカーがヌードを披露したりしていて、当時は童貞だったから、ものすごくときめいた記憶だ。自分もあんな人と…　なんて期待しながらも、実際は処女相手にぎごちなく初体験するのだが…
　といった話はどうでもよく、父の愛人に恋する少年の物語である。ジェラルド・マドリッド演じるのは大学教授の息子で、ある日、チンゴイ・アロンソ演じる父が見知らぬ女性とデートしているのを目撃する。「あれは誰」と問いつめるのだが、その直後に父が心臓発作で急死。映画はフリオ・ディアス演じるジェラルドの兄が葬式会場で麻雀していたり、車を売ったカネをアテにしたり、ピンキー・アマドール演じる姉が仕事の都合で葬式のときもアメリカから帰ってこなかったり、物質的にめぐまれているのに、ギクシャクした家庭環境を提示する。ジェラルドが好奇心から父の死を知らせるために愛人を探し、訪ねてみれば、エンジェル・アキノ演じる魅力的な女性で、すぐに引かれてしまうわけである。
　ニダ・ブランカ演じる母がエンジェルの存在を知ってショックを受け、しかもジェラルドがエンジェルの家にひたっていたためヒステリーに陥る。リチャード・ボニン演じる前のエンジェルの恋人が寄りを戻そうとするも、子どものようなジェラルドが現われたのに嫉妬して、ジェラルドをボコボコにする。といったエピソードを加えながら、実はエンジェルが妊娠していて、女の子を産むまでが描かれる。
　最後はニダと和解し、義理の妹である赤ちゃんを連れたエンジェルが帰郷することになって、ジェラルドが港で見送るまで、ほとんど破綻のない構成。それだけにかえって面白みに欠け、タルい印象なのだが、そこそこできましたねといった感じだろうか。『個人教授』で描かれたようなほろ苦い成長劇というわけではなく、人畜無害な作品と軽くあつかうのは、ちょっとかわいそう。
　ただし本来はエンジェルのファンだから、セクシーな要素を期待していただけに、この面での不満はかなり大きい。ラストでジェラルドが「結局、僕が童貞を喪失したのかって？　それは秘密さ」とナレーションで告白していて、ジェフリー・ヘトゥリアン監督など作者はウィットのつもりだろうが、秘密にしてほしくなかったよお、というのがこちらの本音。冒頭近くでのオナニー・シーンでジェラルドはお尻をだしているから、あとで裸にされてエンジェルにチンポをさわってもらうんだろうなあ、と心待ちにしていたのに…　回想でのチンゴイとのベッドにおいても、エンジェルは胸の谷間すらみせない。確かにペチャパイのほうだし、それがまたキュートなのだが、パレオみたいな衣装でちょっと色気をうかがわせるくらいで、これじゃイライラがつのるばかり。
　あー、もー、エンジェル、大好きなのに…
　余談だが、ジェラルドが子どもあしらいをやたら嫌がっていて、いくつの設定だろうと思っていたら十七歳で、だと車を運転しているから、フィリピンは十八歳からじゃないのね、というのがわかって興味深い。部屋にはビートルズのポスターが貼ってあって、自分の気持ちを説明する台詞で「ポール・マッカートニーなら…」「ジョン・レノンなら…」と述べるのも、フフンとうなずいてしまった。