ＳＡＬＡ　ＳＡ　ＩＮＩＴ　　ＳＡＬＡ　ＳＡ　ＬＡＭＩＧ
（暑いとダメ、寒くてもダメ）
　
93年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ペペ・マルコス
主演：ラモン・“ボン”・レヴィーリア・ジュニア
　　　 ヴィーナ・モラレス
　　　 ジョニー・デルガド
　　　 マーク・ヒル
　　　 ミア・プラッツ
　　　 ルビー・ロドリゲス
　　　 スモーキー・マナロト
　　　 テレサ・ロイサガ
　　　 ベルティン・ラブラ
　　　 デニス・パディーリア
　　　 ジョージ・エストレガン・ジュニア
　荒唐無稽なアクション映画ながら、ペペ・マルコスのテンポよい演出でみせる。
　ラモン・“ボン”・レヴィーリア・ジュニア演じる主人公が街中で銃撃戦を繰り広げ、ジョージ・エストレガン・ジュニア演じる悪党をしとめるのが冒頭。エルニー・サラテ演じる警察の高官から報酬をもらい、ラモンは闇の仕事人的な立場とわかる。さっそくキング・グチェレス演じる次のターゲットの依頼を受け、その捜査のためにスモーキー・マナロト演じる相棒とともに、貧民街へ越してくる。借りた部屋のとなりにはヴィーナ・モラレス演じる若い女性が住んでいて、二人が恋仲になるわけである。
　スモーキーとヴィーナがいきなりケンカし、ラモンも第一印象が悪いあたり、いかにもロマンスのスタートとして定番。
　一方でマーク・ヒル演じる殺し屋がいて、ジョニー・デルガド演じるシンジケートのボスに雇われ、白バイ警官や浮浪者に変装して相手を始末する。キングの射殺にもバーでドンパチ撃ち合うラモンに比べ、明らかにスマートな手法だから苦笑い。
　エルニーがラモンにマークの殺害を指示し、いよいよメインの対決へと進む。
　たまたま水の配給でトラブルになり、ラモンが地元のチンピラをやっつけるも、ケガしてミア・プラッツ演じる女性に救われる。ミアがバー勤めで、同僚のテレサ・ロイサガ演じるホステスがマークの恋人。「友人だ」と説明してミアからテレサの情報を得るのだが、マークもミアからラモンについて聞きだす。ミアとラモンが会っている現場をヴィーナがみかけ、誤解から嫉妬、といった偶然はとくに問題ない。それぞれがつかんだネタをもとに、スモーキーが老人に変装するマークの正体をつかみ、ラモンと対決になるも、警察がきたために勝負はおあずけ。マークがラモンの打ち合わせ場所を襲い、エルニーが撃たれるなどの流れのあと、ベルティン・ラブラ演じる叔父、ルビー・ロドリゲス演じる従姉妹と暮らすヴィーナが、実はスリ一家。マークの財布をヴィーナが盗む偶然は、さすがに作為が目立ちすぎる。ヴィーナを追跡するうち、マークがラモンをみかける展開は、かなりセコいとの印象が盛りあがる。マーク一味がヴィーナの家を襲い、火を放って貧民街が炎上、との画面は赤く染まる映像が『風と共に去りぬ』のアトランタ脱出のシーンを連想させるうえ、扇風機を持って逃げる人など、妙にリアルなおかしさを伴うも、迷惑な出来事と同情を誘うから、素直に楽しめない。
　逃亡過程でレナート・デル・プラド演じる強盗に合って無一文になったラモンとヴィーナが、ホールド・アップに失敗するエピソードはコメディー。市場で引ったくりをつかまえて礼金をもらうのはよいにして、売りもののフルーツを無茶苦茶にするなど、誰が弁償するのとの疑問には答えていない。
　しょせん、ご都合主義だ。
　ラストで重傷を負ったヴィーナの病院へラモンに変装したマークが現われ、ラモン対ラモンになる図式も、見分けのつかないそっくりさんにバケるなんて、マジで描いたら笑うしかない。
　怪人二十面相じゃないんだから。
　でも、二度あるカー・アクションで先行するラモンが引き返してきてワザと衝突したり、ジョニーとラモンの車を赤と青で色彩対比させて視覚的面白さをだすなど、サスペンスに満ちた部分も多いのは事実。とにかく、あくびを誘わなかったスピーディーさを評価したい。
　平均点には達したようだ。
　ところでヒロインがヴィーナだから、最初からセクシーな期待は抱いていなかったものの、体を洗うために共同浴室へ入るシーンがあるではないか。ガウンを着たヴィーナはノックをして空きを確かめると、中でガウンの紐に手をかける。まさかヴィーナがホントに脱ぐの！！！？　と下着姿をイメージするだけで即カチンカチン状態。どうしよう、キャーッ、と興奮がきわまったのだが、ラモンがいたとわかって、肩をだしただけでストップが残念。もーう、このドキドキをどう静めてくれるわけー。ラモンとデートでビーチへ行くときも、水着じゃないからイライラ。逃げている最中、雷雨に遭遇してズブズブに濡れるシチュエーションでも、シャツがスケるあやうさが欠如。屋内で震えるシーンへつながり、普通、ハダカになってタオルでボディーをふくでしょう。
　やっぱりヴィーナはイカせてくれなかったか、とむなしくしおれるしかない。
　キングとマークが来店するクラブのシーンは二回でてきて、ダンサーが挑発的に踊るも、衣装の露出がイマイチ。白いスパッツでの登場衣装がそそったミアや、大人の色気たっぷりのテレサが水着じゃないのも減点。
　まあ、キャストの時点でわかる要素だけに、当然の結果といえる。
　なお、なぜかヴィーナではなくブスのルビーをナンパする男として、デニス・パディーリアがゲスト出演している。