ＳＡ　ＩＬＡＬＩＭ　ＮＧ　ＣＯＧＯＮ
（コゴン草の奥に）
　
05年：ドゥドゥイ・プラス／モダーン・フィルムズ
監督：リコ・マリア・イラルデ
主演：ユル・セルヴォ
　　　 フリア・クラレテ
　　　 ディド・デラ・パス
　　　 ラウル・モリット
　　　 ユージー・ロドリゲス
　　　 ラモン・バウティスタ
　　　 ジョエル・トーレ
　ちょっと奇妙な小品。
　冒頭に強盗があり、リーダーのペピト（ラウル・モリット）がカネを奪ったあとに仲間を殺し、運転手のサム（ユル・セルヴォ）にも銃を向けるが、反対に殺される。軍人くずれのサムはペピトの紹介でボスのジョニー（ディド・デラ・パス）と会い、実行犯に加わった経緯を思いだす。ジョニーはサムがカネをもち逃げと察し、追っ手のバンジョー（ユージー・ロドリゲス）をさし向け、自らも二人の部下と行動をおこす。サムは誰も住まない屋敷をみつけて、しばらくそこに逗留。窓から若い女性がいるのに気がつき、家を探して訪ねるや、最初は警戒されたものの、すぐにロマンスが芽ばえる。自己紹介で女性はカチャ（フリア・クラレテ）と名のる。屋敷へバンジョーがやってきて、危うくやられそうになるが、カチャの協力で撃退。今度はジョニーが襲ってくる。とこれだけなら一般的なロマンスからみの犯罪アクション。まずカチャが葉にくるんだイモをおいていくのに謎をかけ、そのイモを草っぱらの中から異様な手がでてきてつかむ。屋敷には父母娘の家族の写真がかかり、母だけ顔の上に別貼りの一枚がサムに心理的な圧迫をあたえ、写真の母の顔が変わる幻想をみる。父は科学者だったようで、カール・アグスト博士と書かれた奇怪な絵の資料や、実験室に胎児のホルマリン漬けがあるのをみつける。庭のコゴン草をつぶす異様な手に血がしたたり、近所で警察の車がエンコして、水をもらいにきた警官（ラウル・バウティスタ）に庭から異様な手がのびて、ピシャッと血がとぶ。とのモンスターがひそむ伏線をはる。
　カチャが博士の娘と告白のあと、ジョニーとの対決でサムが部下の二人をやっつけ、ジョニーと双方が傷つくあたりは、丁寧に描いているが、いささかご都合主義に思える。生きていたジョニーにサムが追いつめられたとき、ついに顔の変形した老女のモンスター（カチャ・ゲレロ）があらわれる。
　サムが額縁を割った写真の母親だけ別貼りの部分がはがれ、下から変形した顔の母親が写っているのに、無言ですべての原因を暗示する。
　リコ・マリア・イラルデはホラーを詩的に語ろうとしたようで、ある程度は成功と評価できるだろう。でもアクションとロマンスの混ぜ合わせの欲張りが、いずれの要素にも中途半端に終わった印象をまぬがれない。だからこそ、これで全部なのみたいな消化不良を残す。大衆娯楽に徹しなかった反動かもしれない。ディジタルの低予算作品っぽいので、小規模なりにウィットが効いたと手腕を認めるべきか。
　役者では博士のジョエル・トーレと幼いカチャのウナ・イラルデが写真の中いるだけの出演になり、とくに名優のジョエルは数枚の写真のみの映像のシーンをまったく欠くながら、自然な笑顔にも裏の意志をうかがわせる表情のとりかたで博士のキャラクター像を静止画にあらわし、さすがの存在感を示す。ユルは強盗ふうじゃないが、そこに不本意だった状況をさとすも、射撃のうまいのに納得がおきない。
　フリアのセクシーさは個人的に最高の賞賛ポイントになる。ワンピースのまま泳いでプールからあがるのをサムが奥でみつめるとき、ワンピースがボディーにペタペタと貼りつくばかりか、別のワンピースに着がえをはじめ、短パン型のパンティー一枚のセミ・ヌードをうしろからとらえるカメラにお尻を突きだすポーズをとる。ミニのワンピースにパンティーがチラつきそうなショットを含み、サムとのベッドでは服を脱ぎ、お尻の割れ目がのぞく寸前までの背中を全開にする。フリアの魅力が作品の価値を数倍高めている。