（最後まで待っています）
01年：ＶＩＶＡフィルムズ／ＬＶＮピクチャーズ
監督：エリック・マッティ
主演：リカ・ペラレホ
ベルナルド・パランカ
マーク・ヒル
ピンキー・アマドール
ジョング・ヒラリオ
ジャッキー・フォースター
ココイ・ヒメネス
映画監督にはときに何を描くかではなく、どう描くかに興味の対象を置きたがるケースがある。黒澤明が『蜘蛛巣城』や『どん底』で自らの演出力を試そうとしたかのごとく、テクニックを駆使してみたいからだろうか。ロベール・ブレッソンが何を描くかに振りまわされることなく、どう描くかに徹したいからと『白夜』に手をつけたのと同じような狙いを、ここでのエリック・マッティから感じとる。
ストーリーだけみれば、何度かの偶然が引かれ合う男女を結びつけないという、実にオーソドックスな恋愛もの。『愛染かつら』じゃなし、とも思うのだが…
全編にめくるめくような映像美が展開され、ラウロ・レネ・Ｒ・マンダの撮影力もあって、とにかく“キレイ”という意味では圧倒される。セピア調の画面に始まって、琥珀色の草原を自転車で駆けぬけたり、デートで散策すると蝶が舞ってきたり、いかにもやってるなあという人工性ながらも、鮮やかな感性をうかがうにたるもの。自然の風景だけでなく、たとえばベルナルド・パランカ演じる男のほうの主人公の家庭描写など、ヴィート・カヒリの編集技術も手伝って、掃除をしたり、料理を並べたり、飾りつけをしたりといった日常が無言で語られていき、まったく脱帽の表現力である。これらに何度か挿入曲がかぶさるのだが、その使いかたも心憎い。
ただモーツァルトの“ピアノ協奏曲第21番”の第２楽章がやたら流されるあたりは、さすがに『みじかくも美しく燃え』をイメージするし、“エリーゼのために”や“パッフェルベルのカノン”のように、もう少しさり気なくてもよかったんじゃないかとの印象が先立つ。音楽のつなぎに雑な部分があるのも残念である。
無言の表現がとくに冴えているのは、リカ・ペラレホ演じる女のほうの主人公にベルナルドがひとめ惚れするシーンで、そりゃあリカのような女性が現われれば誰だって、とも感じるのだが、顔のクロース・アップのつなぎなどからときめきをストレートに伝えてくれる。
マニラへでてきたときの喧騒も、風景の切りとりによってたくみにとらえられている。
一方で台詞の使いかたもなかなかのもので、最後に再会した二人が、つい素直になれずに別れてしまうやりとりなど、人間ってこうなんだよなあ、と妙に納得させられる展開。
また途中に四度ほど老カップルのインタヴューというか、自然な語りが挿入されて、これがゴダール風のつなぎで、実際に素人なのか、演出したシーンなのかわからないあたりに構成のみごとさを痛感させる。タガログ語じゃないから字幕が入ったり、歌を口ずさんだりと、けっこう興味深い部分である。
さらに加えて風俗的にも地方の氷工場など面白い要素が盛りこまれているのだが、中でもこの作品の核をなすと判断したいくらいに興味を引きつけるのが、カレッジへ進学したベルナルドがジャッキー・フォースター演じるガールフレンドとのおつき合いから入った演劇講座のエピソード。ここでリカと再会する設定で、ゲスト出演のココイ・ヒメネス演じる講師のもと、ニュー・ヨークのアクターズ・スタジオを思わせるような演技やダンスの練習が繰り広げられる。まあ演劇といえばフィリピンでは大衆から遊離した中流趣味かもしれないが、いかにも感性的なインテリっぽいココイのもと、自分を表現しようとする学生たちの鼓動が画面に息づいている。ひょっとしてエリック監督は、ラヴ・ストーリーよりも、この演劇の講義の様子を描きたかったんじゃないか、と推測してしまうほど。
まさに映像美と、幹である筋よりも枝葉にあたる細部によって好奇心を刺激してくれる、かなりの佳作と評価したい。
それで一番の目的であるリカのセクシーさが満足できる内容になっているかだが、こちらもしっかりと合格。高校の更衣室をベルナルドらがのぞくシーンでは、上半身裸だがぼんやりとしか乳房がみえないものの、自宅で着がえるときの白い下着姿でまず魅了してくれる。ハイライトはベルナルドとの水中ラヴ・シーンで、意識的に青を強調した画面の泡がブクブクでる間を衣服のまま泳ぐ姿などヴィーナスを彷彿とさせるうえ、ブラウスを脱いでオッパイがポロンとでるや、ヴィーナス以上だなあとうっとり。水上に横たわる月光に照らされた裸身も、あまりのお尻のキュートさに悩殺される。演劇講座で再会したあとは、舞台裏で抱き合うときに、またもオッパイをポロン。裸の上から舞台衣装をはおってふざけるときも乳首を露出したままで、すごく形のいい乳房だし、やっぱりリカは天使だなあとキスを送るばかり。
ジャッキーも「ジョアンヌ・キンタスとレズ」（本当？）なんて記事が載った雑誌の半裸の写真から大胆な露出を期待したが、さすがに最初に登場するシーンから肉感的なボディーで迫ってくるあたりがさすが。ただ雨の中でベルナルドと抱き合うときの濡れた下着が興奮させてくれるも、続くベッド・シーンがあいまいな描きかたなのは残念だった。
