ＳＡＧＷＡＮ
（櫂）
　
09年：ロカ・プロダクションズ
監督：モンティ・プーノ・パルンガオ
主演：ライアン・ドゥンゴ
　　 　デニス・トレス
　　 　マルティナ・ウィルソン
　　 　マーク・ポルトゥス
　かなり以前のことだが、パグサンハンに白人相手のホモ売春の発展場があったという。まだインターネットのない時代、アメリカ合衆国で口コミによって広がり、客がきたらしい。さて、そのきっかけは何かと想像するに、この地で長期にわたって撮影をおこなった『地獄の黙示録』あたりが怪しいとの推測が成りたつ。映画関係者やスタッフには同性愛が多いだけに…。
　なんて話はさておき、ケソン州のカラウアグでロケの作品。バンカーでマングローブの川を行き来のローカルな観光地がでてきて、吊り橋のかかる渓谷や清流の岩場がみえる。パグサンハンとはまた違った田舎の静かな雰囲気が興味深い。あとで物語にカラむニューハーフのタリヤー（ヘヘルソン・“ギグル”・エスメラルダ）がオーナーの小さな掘っ立て小屋のショップにタタロン川と書かれた土産物のＴシャツがあるが、おそらく架空の地名だろう。ここでバンカーを漕ぐ商売のアルフレッド（ライアン・ドゥンゴ）が主人公で、十八歳の童貞との設定。その初体験を描くながら、おなじみのホモをあつかうフィリピン映画だけに、ストレートじゃない。
　川はホモ売春のメッカをなし、漕ぎ手仲間のエマン（デニス・トレス）やナト（マーク・ポルトゥス）、タド（アドリアン・カンポス）が男を売っている。先のニューハーフのタリヤーやオカマのマリマル（アレクサンダー・“トクナッツ”・カスティーリオ）が客を斡旋する。
　地主のカ・セルソ（監督と共同で脚本を執筆のアーノルド・メンドーサが演じる）には口のきけない娘のセシリア（マルティナ・ウィルソン）がいて、周囲と筆談で会話。セシリアはアルフレッドが好きながら、なかなかアルフレッドはセシリアと一線を越えない。何度かのフラッシュの映像をインサートで、過去のトラウマらしき記憶がジャマみたいと示す。
　アルフレッドは部屋に若いころの両親の写真を飾るも、母がいなくて、父（アルマン・グチェレス）は顔にアザがあり、暗い性格で仕事をしない。
　途中でマリマルが司会をつとめ、タリヤーが参加で優勝を目指すが、二位で落ちこむニューハーフの美人コンテストというヘンなイヴェントをはさみ、住民たちの少し奇妙な日常の生活模様が語られる。セシリアの家のキリスト像がいわゆる一般的なサント・ニーニョでなく、丸顔のぽっちゃり型なのがおかしく、お祈りのとき以外はセシリアが布をかぶせる。「もうお昼ご飯、食べた？」でセシリアがアルフレッドを招き、洗面器で腕だけなく、足も洗ってあげる。父のカ・セルソの帰宅でも、セシリアは腕と足を洗う。アルフレッドの父が闘鶏のニワトリをもてば、オナニーのあとにアルフレッドが闘鶏用の刃を研ぐ。タリヤーは若いジュニア（アントン・ヴィンセント・マルコ）をかこうようで、携帯電話をわたしている。ほかにもタリヤーとマリマルのまわりにはジーノ・カブリアーネスやエリー・オブセナ演じる若者がたむろし、同性愛の匂いが立ちこめる。タリヤーの友人のデクスター（ブリックス・カルピオ）がバイクでマニラからくると、エマンがバイクをうらやましがる。
　カ・セルソが仕切る土手の乗船場には、バンカーの利用代が三十ペソと書かれ、安いと思わせるが、本当はエマンへ斡旋予定だった客のマーク（ストーリーを担当のフランクリン・ジュンダクが演じる）をタドがボートの上でお相手のとき、チンポをさわるのにタドが「三百ペソ」というと、マークが五百ペソあげていて、なるほどとうなずく。ボートマンたちは以前に外国人の客をうけ入れたようで、マリマルがフィリピン人の客たちに「アメリカ人もきたよ」との説明を「ドイツ人だ」と直す。もちろん男ばかりでなく、エマンがおばさんの客（イレーヌ・パカナ）を案内に、どことなくホスト的な女性向けの売春もあるごとき雰囲気がただよう。
　ドラマはエマンがアルフレッドへ愛情をおぼえながらも、アルフレッドがオナニーの最中やナトと客（カール・エマヌエル・カラスカル）の川ではなく部屋のホモ・セックスをエマンとのぞきの興奮の最中にトラウマっぽい記憶にさいなまれ、デクスターがタリヤーにアルフレッドとやりたいと合図を送り、エマンとデクスターがバンカーで川へでるとアルフレッドが同行。マングローブの岩場で三人プレーに発展で、アルフレッドがデクスターにチンポをさわられるや、記憶がもたげるのに悩む。欲求不満のセシリアがアルフレッドにキスで、いよいよセックスかでも記憶がよみがえり、いったいアルフレッドの脳裏に浮かぶ川原のセックスの映像は男と男なのか、男と女なのかをあいまいなままに断片をみせつつ、実は若いころの父（レイマート・チュア）がホモだったため、母（ヴィルナ・センダ・カネテ）が情事の現場へしのんで近づくと襲いかかり、櫂で殴って父の顔に傷をつけたものと明らかになる。近親相姦のイメージでショッキングさを狙った感じ。
　ついにセシリアとディープ・キスにも記憶のもらたす苦悩からアルフレッドがセックスの直前で逃げる。身体のほてりが続くセシリアのもとへアルフレッドがすぐに戻ったようでいて、セックスを迫るのがエマンとわかり、セリシアが拒む。でも我慢の限度に抗しきれず、エマンでもいいかと挿入に発展のタイミングにカ・セルソが帰ってきて、娘を溺愛のカ・セルソがエマンを追いだし、セシリアのボディーを石鹸で洗おうとする。無理やりに歯磨きなどを強要の父を振りきり、セシリアがアルフレッドの部屋へ駈けこむや、ベッドで枕を抱くなどでアルフレッドの感触を確かめれば、現われたのはエマン。服のまま抱き合ってセリシアとエマンが寝るところへアルフレッドが加わり、全裸に脱いで三人のセックスに。
　愛するセシリアと愛するエマンとの、異性と同性の二人の恋人とアルフレッドが同時にストレートとホモのセックスを初体験で記憶を振るきる内容。
　眠る三人に怒りのカ・セルソが櫂をもって暴行をチラつかせるオチがつく。
　まあ、ホモが主題だけに男同士の愛撫の描写が気持ち悪く、冒頭のマングローブに隠れた川辺でナトが客のレーヴェン（監督のモンティ・パルンガオが演じる）と同性愛セックスに二人がお尻を露出なら、アルフレッドとエマンがのぞくホモ・セックスでナトと客がフェラチオのあと、騎乗位でもだえる。デクスターとエマンのフェラチオではエマンが短パンをおろしてお尻をだし、アルフレッドのジッパーをさげるとデクスターがアルフレッドのチンポをもむ。アルフレッドがオシッコでチンポをつかむや、そのままオナニーで自分のチンポを握る。水浴び中の父と話すショットでもアルフレッドは全裸だが、画面はチンポがモロのときに手前の陰や刷りガラスでみえなくし、意図的にワザとらしいボカしかたが劇場公開への配慮かと思わせる。通常、フィリピンのディジタル作の場合、チンポを堂々にうつすケースが多いだけに。
　またニューハーフのタリヤーは脚の部分が大胆に分かれて太腿がでるうえ、バストがこぼれそうな前どめのタイト・スカートを着ていて、美人コンテストで水着からドレスに着がえでふくらんだ乳房の乳首をみせる。コンテスト会場では何名ものニューハーフがビキニの水着ながら、本当は男なわけで、微妙な困惑を招く。
　美人のマリアン・リヴェラが演じた人気ＴＶドラマのヒロインであるマリマルの名前をつけたオカマが不細工なあたりは、お笑い要素。
　もちろんセシリアのヌードを含み、マルティナ・ウィルソンがけっこうかわいいし、個人的にも好みのタイプでウハウハをくれる。帰宅でベッドに横たわってほてり、ひとりでよがるとスカートの中にパンティーがのぞく。アルフレッドの手を洗ってあげて食事や、ふたりでマリア像に祈ったあと、ディープ・キスで抱き合うもアルフレッドが去り、エマンに入れかわってアルフレッドだと勘違いのまま愛撫で四つんばいにエマンがチンポをだすために半ケツをみせるが、セシリアは胸元のブラまでにとどまり、父に水をかけられ、身体を洗われるときもブラをはずさない。エマンとアルフレッドと三人プレーのセックスは全裸がそそるも、たくみに乳首が隠れ、翌朝に川の字状態で素っ裸に眠る三人のうち、セシリアだけ腰まわりにシーツをのせるのが残念ながら、わりと前半におかれるオナニーのシーンがやってくれる。父がスカートにメンスの血がついていると気がついて教え、部屋でスカートを脱ぐと、血で赤くなったナプキンを貼ったパンティーをおろす。うしろを向いたセシリアのキュートなお尻が丸だしで悩殺なのに、前面へポーズをかえ、腰までのシャツを着ていてオッパイはみえないが、なんと陰毛をバッチリに露出。しかも頭を奥にベッドへ寝転び、メンスの設定で赤めにぬった内股にオマンコがチラつき、まさか、そこまで全開なわけと興奮を誘うや、もだえる動きで無駄毛を処理したオマンコがはっきりとうかがえる。乳首のモロはなくとも、小さいサイズでとはいえ、オマンコのモロに視線が釘づけ。もう、たまりません。
　マルティナ・ウィルソンの今後に注目が盛りあがる。