（熱で極限状態）
98年：リーガル・エンターテインメント
監督：ウロ・Q・デラ・クルース
主演：ジョマリ・イリアーナ
アラ・ミナ
シャーメイン・アルナイス
ＬＪ・モレノ
チョロ・エスカーニョ
デーヴィッド・グラナド
マイタ・ソリアノ
愛欲に権力欲がもつれる人間ドラマはとかく重苦しくなりがちで、うまくすれば社会の本質に迫ることができるのだが、ほとんどの作品は上澄みをなぞるだけの内容に終わっている場合が多い。これがフィリピン映画となると、やはり重苦しいには違いないも、セクシーな美人女優がたっぷりとヌードを堪能させてくれるので、とにかくみせる結果にはなっている。他の発展途上国の映画と異なる点はここで、カトリック国の事実を考えるとやや矛盾しているようにも思える。まあ、それだけアメリカ文化の影響を強く受けているということだろう。この作品もアラ・ミナとシャーメイン・アルナイスの魅力で十分に満足を与えてくれる。
ストーリー的には父親が政治家で、自らも議員になるべく義務づけられたデーヴィッド・グラナド扮する男を取り巻くドラマ。まず民主主義国家なのに議員が世襲制のようになっているあたり、日本と同じだなあとニヤリ。デーヴィッドは新人にしてはいささか年齢をいっているながら、セックスのときの情けなさ、父親が亡くなったときの女々しさ、それに暴力をふるうときのサディスティックな表情など、しょうもない人物を演じたらかなりうまいのではないかと思わせる。デーヴィッドのやり手の妻がシャーメイン・アルナイスで、その愛人がジョマリ・イリアーナ。ジョマリの恋人がＬＪ・モレノ。デーヴィッドの秘書兼愛人がアラ・ミナという配役。パッと見には五角関係のドラマともいえる。
主役はジョマリだが、彼の持つ不良っぽい雰囲気がジゴロという役どころにピタリとはいかないまでも、まあまあ合っていて、アクション映画のときとは違った魅力を発揮している。冒頭のスポーツ・クラブのシーンでホモっぽい描写があるが、けっこうジョマリは同性愛者からアイドルのようにモテているのかもしれないな、とも思える。カッコよく引きしまった肉体は、当然、女性にもウケるだろうが…
それにしてもジョマリとデーヴィッドのみならず、ジョマリの親友役のチョロ・エスカーニョやデーヴィッドの子分役の二人など、男のヌードがやたらでてくるのにはうんざり。まあ、需要があるのだから仕方がないか。
物語はシャーメイン扮するデーヴィッドの妻で気性が激しく、見栄の強い女性がジゴロのジョマリを招き入れるところから始まる。シャーメインはかなりの美人で、唇が色っぽく、まずまず好みのタイプ。さっそくヌードを期待したが、全裸のジョマリの上に服を着たままで馬乗りになるものの、ノー・パンであることを暗示させるのみで、露出が少ないのに不満。小道具の氷の使いかたもヘタで、ウロ・Q・デラ・クルース監督はセクシー描写をもっと勉強してほしいなあ。しかも終ってブラをつけるシーンは背中から撮られていて、ほとんど乳房がみえないまま。そのあと白いパンティーをはくも、チラッと画面の下に黒いパンティーをすでにはいているのが写ってしまうので、これってヘンじゃないかとも思わせる。明らかに撮りかたの失敗だ。
二回目のセックス・シーンでは、よっ、待ってましたシャーメインは全裸なのだが、背後からのカットのとき、照明の加減でお尻がみえなくなっている。女性上位で横から撮ったカットでも、手などがジャマをして乳首が隠れっぱなしで、またまた不満。シャーメインに関しては最後まで空振りといえる。美人だから許すが…
闘鶏場の興味深い描写のあと、デーヴィッドがここのオーナーだとわかって、今度は事務室でデーヴィッドと秘書役のアラとのセックス・シーンになる。ご贔屓アラの登場にパチパチパチと拍手。アラの裸体の絵画がインテリアとして飾られているあたりも嬉しいサーヴィス。でもデーヴィッドは薬をやっていたため、早々にイッてしまって、アラはブラをみせるどまり。オイオイ、これで終りかよ、と肩透かしをくわせる。あとに期待しよう。
アラの二回目は馬乗りになり、黒いイヴニングを着たままでも、正面からのカメラに胸の谷間がポロリとこぼれそうになって、ああ、たまらんなあ。と思っていると、体を下にいるデーヴィッドにピタリとくっつけてかがみ、奥にはめくりあげたイヴニングからお尻がみえて、なんとアラはパンティーをはいていないではないか。わー、こんな誘惑的な撮りかたをされたら、最後までみているこちらの体力がもたないかもしれないぞ…
なんて鼻息が荒くなっていると、三回目は座位から始まり、まず背後のアングルのカメラでアラのお尻が丸みえになれば、女性上位から正常位に変わってオッパイが大写しに。あのド迫力の乳房に吸いつきたくなるような乳首が、手を伸ばせば届きそうなところに…
ウウウウウ…
ウロ監督に感謝。
しばらくシャーメインとジョマリの擬似恋愛、アラとデーヴィッドの不倫に、ジョマリとＬＪの純愛が同時進行し、ふとした偶然がジョマリとアラを引き合わせて、歯車が狂いだすことになる。
先にここでＬＪに関して述べておけば、まあまあかわいいが、セクシー・スターではないから色っぽいシーンは含まない。ただ養豚場の描写といい、恋敵であるアラが傷ついてジョマリから助けを求められたときの対応といい、しっかりものの女性であるとの雰囲気をよくつくっていて、まずまずの演技である。
どしゃ降りの雨の中でアラの車が故障でとまり、ジョマリが直してあげるシーンで、文字通りアラは水もしたたるいい女。これは物語の中のジョマリならずとも強烈な印象を受ける。二人はモトクロス・ライダーとして参加したときに再会し、さらにジャッキー・カスティリエホ扮するアラの友人が女性ばかりのパーティーで男性ストリップを呼ぶのだが、このとききたストリッパーがジョマリだったことで三会する。この直後にアラとジョマリは結ばれ、立位で全裸のアラは、オマンコのあたりに白い布をはさんでいるのがみえる。これって前貼りなのかなあと思いながらも、もしこの布がなかったらアラのオマンコが一瞬みえたのでは、と余計な想像が巻き起こる。
ままままさか、アラのオマンコが…
もう発狂しそう。
このあと温室でのセックス・シーンでは、蝶が飛びかう中、葉っぱの奥に全裸のアラがいて、オッパイもお尻も惜しげもなくみせてくれる。うんうん、これでなくっちゃ。続くカー・セックスでも顔を埋めたくなる乳房がタプタプと揺れるから、もはや文句なし。
やっぱりアラは女王だ。
ほかにもビキニ姿やタイトなミニ・スカート姿も披露してくれて、アラにノック・アウト。もはや立ちあがれない。
シャーメインがジョマリとアラの関係をつかんで、いよいよ物語はクライマックスに達する。夫のデーヴィッドにジョマリとアラの関係を教えると、嫉妬に狂ったデーヴィッドはアラを絞め殺そうとし、とっさにアラが反対にデーヴィッドを撲殺してしまう。アラはジョマリに助けを求めるが、デーヴィッドの子分たちにジョマリはリンチを受けると、瀕死の状態に。アラはシャーメインの前に引きだされ、お互いが熱演でののしり合うも、ノー・ブラでスリップ姿のアラに水がかけられて乳首がスケスケなので、演技など上の空。目はそちらに釘づけバリバリを禁じえない。すぐあとデーヴィッドの子分二人に犯され、木にはりつけにされると川へ捨てられる。
湖を流れているところを助けられるのだが、浮いている状態のアラは乳首のみならず、ほんの少し陰毛もスケてみえて、１２０％まいりました。完全に脱帽。
映画は子供基金を設立してマスコミに挨拶するシャーメインの偽善ぶりを描きだしながらも、ＬＪとともに田舎へ帰ることになったジョマリ、自分を助けてくれた一家と暮らすアラの後日談が描かれる。デーヴィッドを本当に殺したのは誰かというエピローグと、ジョマリらを乗せたバスがアラのいる店の横を通っていくラストは、はたして成功しているのかどうか疑問ながら、閉めかたとしてはこんなものかもしれない。
結局カタルシスが解消せず、重苦しい人間ドラマのまま、皮肉のパンチもあまりきかずに映画は終ってしまうが、とにかく弱くて頼りない男と、強くて見栄っ張りの女というフィリピン社会のいったんが現れていて興味深い。それにフィリピン人がいかにカネと権威に弱いかも。
もっともフィリピン人のこうした傾向のような点は、ウロ監督など作者たちが意図したのではなく、外国人の観客が勝手に感じとるものだろうが…
