ＳＡＢＩＫ　ＳＡ　ＰＡＧ−ＩＢＩＧ
（愛を望んでやまず）
　
03年：エル・ニーニョ・フィルムズ／ヴィンセント・フィルムズ
監督：セザール・ＳＢ・アベーリア
主演：ラジャ・モンテロ
　　　 フランシス・エンリケス
　　　 アルベルト・デ・エステバン
　　　 マーク・ディオニショ
　　　 ライアン・ムーニョス
　　　 ティファニー・クレイグ
　　　 シャンハイ
　　　 テン・テン
　二転三転と男にもてあそばれる女性の遍歴を描くも、薄っぺらなフィクションなのは、いつものセザール・ＳＢ・アベーリアと変わらないところ。
　ラジャ・モンテロが主人公を演じ、自家用車を所有するシャハイ演じるボンボンに口説かれて身をまかせたものの、シャハイが単なる遊びだったと知って絶望。泥酔の勢いで、かねてから自分を好いていてくれたフランシス・エンリケス演じる貧乏青年に体を許す。トニー・マナロとテス・オリアス演じる両親の命でフランシスと結婚してみれば、ヘレン・アナン演じるフランシスの母が小うるさいうえに、まったくフランシスに生活力がない。スシン・サイソン演じる叔母に頼んで道路沿いにスイカの販売店をつくり、そこで売り子をしていると、自家用車で通りかかったアルベルト・デ・エステバン演じるお坊ちゃんふうに見初められ、浮気の情事へ。スシンにイチャつき現場を発見されて追いだしを受け、アルベルトの子をはらんだためにフランシスからも非難のうえに、アルベルトを訪ねてみれば妻帯者とわかり、行き場を失う。妊娠中のお腹をかかえて倒れそうなとき、エルニー・フォルテ演じる背中に瘤のある男に救われる。
　以上の筋立ては途中から回想で語られ、今にも生まれそうなラジャを病院へ連れていく道すがら、ガス欠でエルニーが助けを呼びに行き、残されたラジャがもうダメという瞬間に、たまたま通りかかったライアン・ムーニョス演じる青年が出産を手伝うのが冒頭。あとはラジャとライアンの間に愛が生まれる流れだから、まったく形だけというか、薄っぺら。
　でも、スイカなどを栽培する大きな農家であるライアンの家庭描写に面白さを伴い、興味深い要素を含む。マリルー・ヴェル演じる母が葉巻を吸う肝っ玉タイプで、ラジャに欲情して抱きついたり、町まで買春に行ったマーク・ディオニショ演じるライアンの兄にあたる息子と、ノノン・デ・アンドレス演じる自分を弟を折檻し、納屋に閉じこめるパワーが、いかにも女性社会のフィリピンらしい。種植えや耕作、鳥の餌づけといった作業風景も好奇心をそそる。
　ラジャの赤ん坊がテン・テン演じる少年に成長し、ライアンが正式に父となる許可をもらうと同時に、マークは買春の相手だったティファニー・クレイグ演じるバーの女と結婚し、二組のハッピー・エンド。とにかく欲望のままに、多少、自己中心的になる部分はあるものの、基本的に真の悪人を登場させない展開には、とりあえず共感。ラジャとティファニーが懐妊したとき、ちょうどスイカの収穫で、ふくらんだお腹をスイカに比べているのが、ほのぼのギャグ。日本にはスイカップなんて言葉があるようだが、さすがにスイカみたいな胸は論外だろう、なんて連想をしたくなる。
　ただし、教会でラジャがフランシスに再会してきっぱり別れを告げるシチュエーションがでてくるも、トニーとテスのその後や、出産直前にラジャが失踪のように消えて、警察で説明していたエルニーの後日談を欠き、人間関係に決着をつけていない適当な構成がいい加減といわざるをえない。
　やっぱり、薄っぺら。
　もっとも目的は初めての主演作にあたるラジャのセクシーさがどうかだから、こちらは次第点を与えたい。まずピッチリのジーンズとベージュのピパタンでプロポーションのよさをうかがわせたあと、フランシスとの酔ったセックスで紫ビキニ下着のブラをはずすのに始まり、セックス終わりの朝を迎えたベッドで、初夜のセックスで、蚊帳の中でピンクのスリップを脱いでのセックスで、ライアンと公認の仲になってスケスケのスリップを脱ぐベッドで、とオッパイをプラプラの丸だしがすごい。乳首のアップもド迫力ながら、いささか乳輪の大きいのが気になるかな。決して美乳とはいえないまでも、全身のアピールはアルベルトとセックスあとの着がえで下着姿がボディーにイマイチ、フィットしていないから不満を残したあと、ツワリで吐きに走るとき、白いパンティー一枚が下半身のラインを強調してキュート。もっともセザールの演出がフランシスとのセックスで騎乗位になったにもかかわらず、画面を二重映しにするといった余計な小細工を加えるのでムカムカ。アルベルトとのカー・セックスや、池でライアンとのセックスも二重映しで、オイオイせっかくのヌードをちゃんとみせい、と抗議の声をあげたくなる。ラクにするためにエルニーがラジャのスボンを脱がすときの紐パンティーがみえづらいのも同様。滝のある池へ洗濯に行ったラジャがボディーも一緒に洗うのはハイライトといえるシーンなのに、濡れて貼りついたスリップからのスケかたが足りないのと、池から部屋へ戻ってパンティーをはきかえる際、オッパイは正面をとらえるも、ライアンとノノンがのぞいているアングルだから大胆に全裸を披露しきっていないのには、思いっきりブーイングを呼ぶ。ホント、セザールはエロスの表現を誤解してるんじゃないか。ラスト近く、フランシスとでくわすシーンの白いピタパンがそそり、中身をおがんだあとに再びムズムズを誘発だから、ラジャのフェロモンは相当なレヴェルだが…
　もう一人、赤ん坊にお乳をあげるラジャをみて我慢がきかなくなり、マークが買う娼婦役のティファニーはいささかブスっぽいうえ、背中へ刺青をしていてげっそりなのものの、セックス描写が素晴らしい。光沢素材のボディコン・ミニからオッパイをポロリとむきだしにしたあと、Ｔバック一枚でびっくりなのに、長い回想シーンをはさんで続きがあり、全裸になって女性上位でセックスを繰り広げると、マークがティファニーのお尻に左右から割れた谷間へ四本の指を押しこむように愛撫する。セザールったら、この興奮が頂点に達するだけのエッチな展開を、もしラジャでやっていてくれたら、とイメージするだけで元気になってくる。
　一応、みたかいがあった作品といえよう。
　あと、シャンハイのガール・フレンドを演じたペルリタ・マチアスにも、きわどい設定がほしかった。
　なお、主題歌をカラ・クリステルが担当していて、歌手デビューしてたのね、とびっくり。