ＳＡＡＮ　ＮＡＧＴＡＴＡＧＯ　ＡＮＧ　ＰＡＧ−ＩＢＩＧ？
（愛はどこに隠されているのか？）
　
87年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エディー・ガルシア
主演：ヴィルマ・サントス
　　　 トントン・グチェレス
　　　 チェリー・ヒル
　　　 グロリア・ロメロ
　　　 アリシア・ヴェルヘル
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 アリシア・アロンソ
　　　 ローズ・ロサド
　俳優であるエディー・ガルシアの監督作品。ヒルダ・オリヴィダッドのポギ・コミクスによる原作をアルマンド・ラオが脚色しているから、内容は大体において男女のくだらない愛憎劇と予想のつくところ。
　でもヴィルマ・サントスとトントン・グチェレスの好演もあって、けっこう退屈させない。
　ヴィルマ演じるのは、リッキー・ダヴァオ演じる学生の「結婚するから」の言葉を信じ、体を許したため、子どもを宿した女性。リッキーにはアリシア・ヴェルヘル演じる資産家の祖母との間に、スキャンダルを起こすと遺産をゆずってもらえない約束がある。それでトントン演じる脳障害をわずらうリッキーの弟がいて、グロリア・ロメロ演じる母がヴィルマとトントンを結婚させる設定。
　予想どおり、同じ家に住むことになったヴィルマへリッキーがちょっかいを入れ、ヴィルマが反発。最初はオシッコをもらすトントンを嫌ったものの、次第に純粋さに打たれて心を開く話になっている。
　まったく、ありきたり。
　これにリッキーがローズ・ロサド演じるカレッジの同級生に手をだすのと、チェリー・ヒル演じるリッキーの妹がジョーイ・ヒポリト演じるボーイ・フレンドの子を妊娠し、できちゃった婚になるエピソードがからむ。
　少年時代にエディー・アレナス演じる父の自殺をトントンが目撃した過去をもち、祖母がリッキーばかりでトントンを愛さず、グロリアが祖母の力に逆らえない。リッキーの言い訳を信じてカネを盗んだとトントンを折檻したとき、誤って階段を落ちたトントンが知恵遅れになったとの事実が明らかになってくる展開も、人物のキャラクターづけがストレートすぎて、あきれるばかり。自らはローズとイチャつくくせに、チェリーをはらませたとジョーイを殴るリッキーの身勝手ぶりや、チェリーの外出をかたくなに認めないグロリアなど、安手のドラマの典型じゃないか。
　祖母のアリシアがアイ・パッチをつけているあたりも、マンガっぽいのがマイナスに働いている。
　一方でアリシア・アロンソ演じるトントンの乳母やヴァンジー・ラバラン演じる家政婦が、ときに暴れたトントンを閉じこめ、ヴィルマが助けだす厳しい面を示すながら、トントンをよく世話し、ヴィルマが字と計算を教えると、トントンがアリシアへバースディー・カードを書くなどのホロリとしたエピソードを含む。
　ヴィルマが出産をはたすとリッキーが結婚を迫りだし、怒ったトントンと格闘になって、トントンが二階から転落死でクライマックスへ。ヴィルマが赤ん坊とでていく決心をかため、祖母のアリシアのわたす小切手を拒否。すべてを祖母に話すと、グロリアが真実だと認める。リッキーが泣いて頼むのをはねのけ、しっかりした意志で家を去るラストが盛りあがる。
　まさに子どもを生むという経験によって、自我をもたなかったヴィルマが精神的に自立する物語。母は強し、とたとえられるかもしれない。ヴィルマの変化にグロリアが共感を抱き、祖母の呪縛から解放される構成も説得力をおびる。
　広角レンズでのクロース・アップをつみかさね、原色の照明とスモークで幻想ふうなタッチを狙った裁判風景によるトントンの強迫観念の映像や、それをみるトントンの顔へズーム・レンズでインとアウトをくり返すショットの表現にやや甘さを残すものの、基本的にオーソドックスな手法で押したエディーの演出が好印象。しょうもないながら、一応はみせたようだ。
　もっともトントンが素っ裸で乳母のアリシアに体を洗ってもらうシーンがあるだけに、ヴィルマにもセクシーな要素を期待したが、冒頭のリッキーとの愛撫でスリップになるのみが残念。ヴィルマよりファンのチェリーがジョーイとカー・セックスにおよび、服のボタンをはずされるどまりなのがもっと不満に感じる。ローズはリッキーと車でのデートで脱ぐシチュエーションを欠き、色っぽさ不発だったとはいえ、演技的にはみんな、ある程度まで納得を呼ぶ。ヴィルマの友人役を演じるスザンヌ・ゴンザレスや、ヴィルマの勤務先の同僚を演じるヴィッキー・スバがかわいいこともプラスし、まあ、いいんじゃないか。
　チェリーが意外と美人じゃないのには驚いたが…
　やっぱり、大好き。
　なお、ヴィルマの両親役にジュニー・ガンボアとペルラ・バウティスタが、ジョーイの両親役にガミー・ヴィライとアルマ・レルマが出演している。