ＲＯＸＸＸＡＮＮＥ
　
07年：オクトーバートレイン・フィルムズ／イグナイト・メディア／ピクセル・アート・メディア・プロダクション
監督：ジュン・ラナ
主演：シェリー
　　　 ジェー・アキタニア
　　　 ジャンヴィエール・デイリー
　カトリナ・ハリリやマリカル・レイエスのスキャンダル・ヴィデオが流出したとき、携帯電話で広がっていったのがフィリピンぽい。思えば最近の携帯電話は便利な機能をプラスしたようでいて、反対に日常生活を息苦しくしているだけ。友人のひとりは所在地を特定する機能を使って妻に浮気現場へ踏みこまれ、財産をとられたうえでの離婚となった。フィリピンには姦通罪があるので、完全に不利。ハイテク携帯は「百害あって一利なし。ホント百害だけで、一利なんてまったくない」といっている。なんて話はさておき、携帯電話の動画を撮影や再生の機能を題材にとるドラマ。
　大ファンのシェリーの主演に期待がかかる。
　全面モザイクのかかったセックスの映像がタイトル・バック。貧民街の風景が興味をそそりつつ、大家のマグダ（エリザベト・オロペサ）が新しい店子のロクサンヌ（シェリー）を部屋へ案内する冒頭につながる。ロクサンヌがコール・センターに勤務で、マグダが「一ヶ月九千」といっているのにふうんとうなずく。
　マグダの息子のマーロン（ジェー・アキタニア）は携帯電話にスキャンダル・ヴィデオを収集が趣味になり、それをみたがるトライシクル運転手のジョナス（ジャンヴィエール・デイリー）や、彼の仲間のエディー（セノ・アレハンドロ）たちとつき合っている。ジョナスはオカマのマドンナ（エヴァ・ドゥライ）とシャブをやるなど、ロクなヤツじゃなく、マグダが心配している。マーロンはホモなのを仲間に隠し、実は女性に童貞。美容院でオカマのヴァレリー（メル・マルティネス）にフェラチオさせて靴を買ったり…。でも二階を借りたロクサンヌの下着姿を窓からみたのにときめき、ロクサンヌのところへ恋人のポール（ジェーソン・デイリー）が訪ねてくるのに嫉妬をおぼえ、女性に無関心でないとうかがわせる。
　「ダイアナ・スビリのスキャンダル・ヴィデオはないのか」なんて話題で盛りあがった飲み会の翌朝、ついマーロンがパンツ一丁で寝るジョナスのチンポを携帯のカメラで撮ろうとしたのが発端。ダイアナ・スビリのスキャンダルを入手したとの連絡にマーロンがもちぬしのホモのアーノルド（ブディー・カラマット）にフェラチオさせて報酬にもらうと、ダイアナ・スビリはニセモノだったものの、中にロクサンヌの映像をみつける。ジョナスたちの紹介で太った女性（アポル・ヌエヴァス）の知り合いになるグレース（ハンニ・ミレル）がマーロンを気に入り、セックスで童貞を奪うと、たまたまマーロンの携帯をみたらパンツ一丁のジョナスの映像に驚き「オカマか」とからかったので、とっさにマーロンがグレースを殴る。ジョナスたちがグレースを傷つけたのを怒り、原因となった携帯の動画をチェックしようとしたため、ジョナスのパンツをまくろうとした映像がみつかるのをおそれ、自分だけの秘密にしようと思っていたのに、マーロンが「ロクサンヌのスキャンダルをみられたから」という。
　マグダが祖母の危篤で夫（ジェフリー・タン）と田舎へいき、姉のジュリエット（アン・ガルシア）も不在でマーロンだけとなった家では、仲間たちがロクサンヌのスキャンダル・ヴィデオをコピーでまわして全員がみたため、ロクサンヌの部屋をのぞこうと入り口にたむろする連中がでる。ついにはロクサンヌの部屋へ強引に侵入で…。
　と最後は殺人に発展の、フィリピン映画にはほとんど定番の展開。とくに意外性がなく、平凡なできとの評価におちつく。携帯電話のハイテク化によるプライヴァシーの侵害の安易化と促進に同性愛のアイデンティティーをかけ合わせるながら、社会性には浅く、人間ドラマにも説得性が弱い。あとでグレースのもとへ謝りにいったマーロンが「ホモじゃないよ」と念を押したり、パンツ一丁を撮ったとのマーロンの告白にジュナスが殴りたおすなど、案外と偏見の少ないフィリピンでもホモへの不理解がにじむ程度の内容。
　ジュン・ラナは画面の分割やコマ落としといったディジタル作品ふうの小細工にくわえ、アニメっぽい手法の導入でテクニックを駆使も、さほど効果をあげていない。マーロンがモナリザのジグソーをつくっている設定はおもしろいが、いったん回想でグレースにロクサンヌのスキャンダルをみられたように説明の再現シーンは、もっと本当はどちらなのかとのあいまいさがほしかった感じ。ロクサンヌのスキャンダル・ヴィデオに注目のマーロンにアーノルドが「韓国人と結婚したよ」といったり、みんながダイアナ・スビリのスキャンダル・ヴィデオを望んでいたりをはじめ、エアコンがないので住民たちが「暑い、暑い」とうちわであおぎ、野郎どもがレッド・ホースを飲み、ロクサンヌの部屋のドアからようすをうかがう連中がタバコの吸殻を投げ捨てまくってマーロンが掃除は、下層の生活臭がでたかもしれない。
　もっともシェリーの露出不足は最大の不満点になる。最初に白いピタパンで登場にムズムズと興奮を呼び、さすがと悩殺をうけたにもかかわらず、このムラムラを解消のシーンがない。マーロンが目撃の下着姿は黒いセパレーツが大きめで、花をもってきたポールとのセックスはブラまでに脱ぐどまり。水浴びにいくときはボディーにバス・タオルを巻き、忍びこんだ連中に暴行をうけるクライマックスでも赤いスリップまで。しかも肝心のスキャンダル・ヴィデオが携帯電話の中だけでなく、ラストで画面いっぱいに映されるも、赤いスリップをはぎとられたあと、手でずっとオッパイを隠している。なんとシェリーの乳首がおがめずに終わるとのダメさ加減。
　こりゃ、ひどい。
　ただしハンニ・ミレルが予想以上に素晴らしく、いつもブスとバカにしていたものの、二十六歳との設定で大人の魅力をかもし、セックスしたいなとの雰囲気をただよわせる。マーロンの童貞を奪うセックスで騎乗位の全裸を上から撮り、形のよいお尻が全開に迫ってくる。ハンニで初めてお世話になったしだい。
　いずれにしてもシェリーのヌードを欠き、トッピングがゼロのネギのみの立ち食いソバを食べたごときイメージだった。