ＲＥＰＵＴＡＳＹＯＮ
（評判）
　
96年：ノラスコ・ヴィジュアル・アーツ
監督：エルウッド・ペレス
主演：ミヤ・ノラスコ
　　　 アマリア・フエンテス
　　　 ロメオ・ヴァスケス
　　　 グロリア・ディアス
　　　 ミゲル・サルヴェロン
　　　 リザ・ロレナ
　　　 リサ・マクハ
　　　 ロイ・アルヴァレス
　　　 リチャード・ボニン
　　　 ロマノ・ヴァスケス
　　　 ミッチ・ヴァルデス
　　　 ナネット・インヴェントル
　アイドル映画はフィリピンにも存在するが、これがアイドル映画かどうかは判断しかねる。まあ、どちらであるにしても、ヒロインを演じるミヤ・ノラスコに魅力を感じるかどうかが、映画を楽しめるキー・ポイントであることは間違いない。
　その視点からいうと、個人的には丸顔でちょっと凹凸が平板な容貌のミヤでは、残念ながら楽しめなかった。
　それでも風俗的な興味はいくつか散在する。
　冒頭、東京タワーや新幹線が映しだされ、ここが東京であることがわかる。日本語で『いとしのエリー』が聞こえてきて、中年の太ったオバサンが三人で歌っている。個人的には日本にあるフィリピン・パブのことをよく知らないのだが、本当にこんなショーをみせているのだろうかと疑ってしまう。情報通の人がいたら、是非とも教えてほしいものだ。
　このあと彼女らがフィリピンへ帰ってきて、その中の一人であるアマリア・フエンテスがミヤの母であることがわかる。ミヤは学校で母のことを「じゃぱゆき」といわれてからかわれ、ケンカになるのだが、ある階級の人からはじゃぱゆきが軽蔑されているのだろうと思ってしまう。
　画面に日本のカップ麺がいろいろ登場するのも興味深い。
　ミヤは母が同居するようになって、その下品さを嫌がり始め、ある日ボーイフレンドとの交際をジャマされたのをきっかけに家出してしまう。雨の中で倒れてしまうと、助けてくれた女医さんが、母が離婚した父の妻であったという偶然に遭遇する。しばらく父の家で暮らすことになるのだが、今度はそれまでのゴチャゴチャした下町の路地の生活とは打って変わって、上流階級のぜい沢な暮らしぶりがうかがえることになる。二つを対比させたことにより、その極端な違いに驚かされる。クラシック・バレエを習うシーンではリザ・マクハという本物のバレリーナが出演しているし、映画の中では歌わないものの、オベラ歌手のカルラ・グチェレスが顔をみせているのも好奇心を刺激される。
　でも上流社会はやたら世間体と評判ばかりを気にする嫌な世界で、そこも飛びでたミヤは、ついにセクシー・ダンサーとして生きることになる。いくらなんでもこのあたり展開は、ドラマティックにようとするあまり、無理がないかと思ってしまう。ディスコ・パブのひな壇に座るシーンでの、女の子同士のやりとりが面白い。ディスコ・パブをまわるシーンでは、ティモグの店や“エドサ・エンターテインメント・コンプレックス”の外観が映しだされる。
　ミヤの失踪を知った母や、パーティーで紹介されたミゲル・サルヴェロン演じる恋人が必死で彼女を助けだそうとするが、彼女の父に悪いイメージを与えるため、彼女のスキャンダル写真を撮ろうとしていた連中に撃たれてしまうことになる。母とミゲルが病院にずっとつきっきりで、本当に彼女のことを心配していてくれたのはだれか明らかになる。妻から世間の評判ばかり気にする態度を批判された父も反省し、病院にかけつけてくる。そして命が助かったミヤはミゲルと結ばれ、みんなから祝福されてのハッピー・エンドである。ミヤはアメリカ生活をすることになるのだが、それが決まる席でのアメリカや日本に関する会話から、両国に対するフィリピン人のイメージがうかがえて、つたないタガログ語の理解できる範囲内でだが、けっこう有意義である、
　今度はタガログ語でアマリアが『いとしのエリー』を歌って、ミヤをアメリカへと送りだしてあげる。この『いとしのエリー』だが、ちゃんと著作権をクリアしているのだろうか。それにフィリピンのカラオケで歌われているものと、タガログ語の歌詞が違うように思うのだが…
　女優としてのミヤについていえば、学校でのケンカのシーンで早々にシャツをはだけてブラをみせてくれるが、ほどよい大きさで美乳をイメージさせるものの、セックス・アピールに乏しいからときめきを感じさせてくれない。セクシー・スターじゃないから関係ないとも思えるが、そのわりにはきわどいシーンがいくつも登場する。処女を捧げようとして母にジャマされるシーンでは、ボーイフレンドが全裸になっているのに、下着を着たままなのはどんなものか。そのあとのバス・タブのシーンでも、上半身裸なのに背後から撮影されていて、正面を向くときはタオルを胸にあてて隠してしまう。海岸で水着で踊るシーンは、いかにもアイドルのイメージ風に軽やかに撮られているから、まったくエロティックに興奮させてくれる要素がない。むしろ義理の母役であるグロリア・ディアスが中年であるにもかかわらず水着になるのだが、前かがみになったときの胸のふくらみに熟女の色気を漂わせてくれる。ただ恋人となるミゲルと出会ったあとの二つの水着シーンは、黒のビキニでプールからあがるときに濡れた肌が光って挑発的に映ったり、海辺でたわむれるときにワンピースの水着がくっついてヒップラインを浮きあがらせたりで、一応視線を奪ってくれる。セクシー・ダンサーになってからは、エロティック・ダンサー役（ヴァネッサ・コファノかアドリアナ・アグカオイリ）がちゃんとトップレスとＴバック水着になっているのに、ミヤの露出はいかにも少ない。ビキニ・パンツの男に囲まれて踊るアヤシイ雰囲気のショーなのに、厚めの黒のワンピース下着のまま。その格好で外へ逃げるシーンもあるのだが、これじゃハッとする要素がない。むしろ父が選挙でミヤの父に破れたこともあり、ミヤに意地悪する上級階級の娘（演じるのはたぶんラクエル・ヴィラヴィセンシオ）の水着姿のほうが、男好きする容姿もあり、もっとみせてくれという感じになってしまう。
　ミヤにセクシーさを期待したことが、やはり無理だったのか。